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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
20:全権大使は名探偵じゃない

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20-4

「しばらく無沙汰をしておりました、日本大使館の真柴です」


昨年秋の訪日以来の再会となるアネッテ・ディ・シェーベイル宰相補佐官は「いや、こちらこそ」と軽く応じる。


「大したものではございませんが、前回お気に召されていたお菓子をお持ちしました」


手土産に用意したのはハッピーターンである。


ジェーベイル宰相補佐官は元々食べることが好きなようなのだが、訪日中に海ほたるに立ち寄った時に色々とお菓子を買い漁っていて特に気に入っていたのがこれだった。


今回はノーマルなものと粉が多めについているものの2種類を紙袋いっぱいに用意してきた。


「ありがとうございます。帰ってきてから再現出来ないかと思ったんですが、どうしても塩気とほんのりした甘さの粉が分析出来なくて」


ハッピーターンに魅了された外国人サッカー選手の話は聞いたことがあったが、異世界人まであの粉に魅了されたようだ。合法の癖してすごい粉である。


「手荷物の都合で少量しか用意出来ず申し訳ありません」


「お気になさらず。とりあえず仕事の話をしましょうか」


ハッピーターンの詰まった紙袋を丁寧に脇に置くと、一冊の辞書が手渡される。


「まずこちらは一般に公表されている国内貴族の紳士録です、当主の似顔絵もついてますので顔・名前・位置関係の把握にお使いください」


「助かります。買い上げはできますか?」


「それなりの値段になりますけどね。それと労働時間制限制度導入反対派と日本との国交樹立関係反対派の一覧です」


コピー用紙サイズの紙2枚に渡る一覧表を手渡され、名前をざっと確認した後紳士録の領地別目次を開いて確認する。


「労働時間制限反対派は北部、日本との国交樹立反対派は北西部が多いんですね」


「そうなりますね。北部は国内でもかなり厳しい寒冷地なので労働時間の削減はそのまま労働力減少に繋がるし長期に渡って狩りや漁に出られなくなる、という主張です。


最北の辺境伯閣下とその寄子達から同意が取れれば人間の労働時間制限はスムーズに決まるでしょうね」


労働時間が長ければ長いほどいいと言うのは誤解であるが、そのあたりの誤解を解く必要はありそうだ。


最北の辺境伯というのは確か王妃の実家だったはずだし、こことの直接対話が出来るとまた違うかもしれない。


「獣人の労働時間制限はまだ難しいですかね」


「まあ獣人奴隷にも最低限寝食をちゃんと与えなさいよ、と定義するくらいですかね。むしろ日本側としては自国との国交樹立反対派の方が厄介では?」


「そうですね。日本との国交樹立反対派について聞いても?」


「北西部は黒油の異常湧出が無かったので食料不足にならなかったことと、国内でも特に教会の影響力の強い地域なので金羊国を支援する日本という国を受け入れたくないって言うのが主な理由ですね」


要するに金羊国が一部の貴族から嫌われてしまってる、ということだ。


それに日本との国交反対派は労働時間制限反対派より多く、労働時間制限自体は賛成だが日本と関わりたくはない人が相当数いる。


「……少し対策を練る時間をください」


「まあそれもそうですよね。渡りをつけたいのであれば私に声をかけて下さい、1人につきハッピーターン1袋でつけますので」


冗談半分にそう笑いながらハッピーターン入りの紙袋を手に「次の仕事がありますので、失礼します」と行って去っていく。


「帰ったらハッピーターン箱で送るくらいの覚悟で根回しかなぁ……」

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