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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
19:大寒波と大使館

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19-7

金羊国側の関係者回りを終えた頃には日も沈み、空から小雪までちらつき始めた。


「こりゃ今夜も雪ですね」


「ですね、早く帰りましょう」


さくさくと薄く積もった雪を踏みしだきながら大使館への帰り道を急ぐ。


そうして大使館の門を開けると。


「大使おかえりなさーい」


「こっちですよー」


「……かまくら?」「ですねえ」


大使館の前庭にはランタンで内外を照らされた大型のかまくらが出来ていた。


聞いてみると深大寺が『こんだけ雪があれば立派なかまくら作れそうですよねえ』と言い、暇を持て余していた夏沢が木栖や飯山さん・柊木先生と共に雪を積み上げて作ったんだそうである。


「今日の夕飯会場はここだぞ」


木栖の声掛けに応じ風除けのビニールをめくりあげてかまくらの中に入ると、地面はブルーシートや銀マットを何枚も敷いており俺と石薙さんの席には座布団も敷いてある。


円になって座る面々の前には大きな鍋がどんと鎮座している。


「今日は味噌煮込みうどんにしましたー、八丁味噌粉末をたっぷり入れたので嘉神さんも納得の味になったと思いますよ~?」


嘉神は岐阜生まれで、大学生活を名古屋で過ごしている。


恐らくここに居る誰よりも本場の味噌煮込みうどんを食っているだろう人物の名前を名指しするので、地元民の血が騒ぐのかキラリと目が光った。


「言いましたね?後悔しても知りませんよ?」


「この土地で可能な限りはやってますよー」


突然料理バトル的なノリになったことによる湧き上がった謎の緊張感のせいで言いたいことはあるのに誰も口を挟めない状態になるが、飯山さんは「とりあえず食べてみてくださいなー」と味噌煮込みうどんを取り分けた小皿を渡してくれる。


嘉神は真剣な面持ちで味噌煮込みうどんをつるりとすすると、しばらく黙り込んだ後にゆっくり口を開く。


「八丁味噌のスープに溶け込むかしわや野菜のうまみ、その旨味を吸ったお豆腐や根菜類もいいですね。


ただ、この麵は柔らかすぎません?」


「名古屋の流儀に合わせると麺が固すぎて生煮えみたいですからねぇ。名古屋の味噌煮込みに慣れてる嘉神さんはともかく、他の皆さんにはこれぐらいがちょうどいいかと思いましてー」


こういう事も知ってそうな木栖にそうなのか?という確認の視線を向けるが、知らんと表情で答えられた。


そう言えば木栖は愛知に赴任経験なかったな。


「ちなみにご飯はあります?」


「お昼の残りの冷ご飯ですが、ちゃんとありますよ~」


ごはんの入ったおひつをお鍋のかたわらに置いておくと嘉神は満足したようで「100点満点中70点ですかね」と告げた。


その判定が出ると空気が緩み、飯山さんも「他の人たちも冷める前に食べましょー?」と声をかけてくれる。


(いやこの微妙に手を伸ばしにくい空気作ったのそちらですけどね)


野暮なツッコミは置いといて、小皿に取った味噌煮込みをすすってみるとコシのある麺に野菜や鶏肉の旨みと濃厚な味噌の風味が染み込んでいてて個人的にはわりと美味しいと思う。


ちょっと味は濃いめだがそばめしみたいにごはんとか合わせても美味しいかもしれない。


「ちなみに麺の方さによる変更は?」「20点減点ですね」「思ったより減点大きいなあ」


ふたりの味噌煮込みうどんトークは置いといて。


他の面々も「寒い日の味噌煮込みうどんは染みますね」「この麺十分固いと思うけどなあ」「そもそも粉末の八丁味噌ってどこで見つけて来たんだろうね」と喋りつつ満足げにうどんをすすっている


木栖は味噌煮込みうどんの月見卵とスープを冷ご飯にかけて食べており、それもうまそうだ。


「どうした?」


「寒い日でもこうしてみんなでワイワイ飯が食えると多少寒さがマシになるなと思って」


「そうだな」

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