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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
19:大寒波と大使館

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19-6

午前中に緊急性の高い仕事を片付けた後、息抜きも兼ねて散歩に出ることにした。


正午過ぎになると日差しも出てきて朝方よりはまだマシな寒さになってきたので、様子見も兼ねた散歩にはちょうどいいと思えたのだ。


「せっかくですのでお供させてください」と言ってついてきた石薙さんと2人俺たちは雪の金羊国へと飛び出した。


雪解け水が染み込んでドロドロになった道を長靴で闊歩してみると、寒い寒いと言いながらもちゃんと皆仕事をしているのがわかる。


雪溜めに誰かが黒い粉を撒いているのがふと目に留まり、しばらくじっと観察してみると撒いてるのは木炭の粉や破片のようだ。


「あのー、なんで木炭の粉を撒いてらっしゃるんですかー?」


石薙さんがそう声をかけると、雪溜めで木炭粉を撒いていた人が「こうすると雪解けが早くなるんだって聞いたんでなー」とケロッと答えてきた。


「なるほど。黒は蓄熱性が高いから黒い炭で蓄熱して雪解けを早めるのか」


「塩も融雪剤に使われるそうですけど流石に勿体無いですからね」


岩塩の産出があるとは言えど金羊国では塩は重要な調味料であり保存料である、融雪剤として撒いたら再利用も出来なのでもったいないという心理が働くのだろう(そもそも塩が融雪剤に使われることが知られていないという可能性もあるが……)


そんな話をしつつ最初に到着したのは紅忠金羊国支社だ。


ここもしっかり除雪されており、少なくとも建物が雪で潰れているといったことはなさそうだ。


「おっ、大使お疲れ様です」


支社長である河内さんは何故か雪だるまを並べて遊んでおり、副支社長であるはずの佐々さんや従業員の人たちも雪うさぎなどを作っている。


「何してるんです?」


「息抜きですよ。午前中で仕事が片付いたし、ナリくんもさっき本社に向かったばかりだから本社連絡来るまで適当に遊んでようかと思いまして」


仕事が終わったからと言って全力で遊び始めるのはどうなんだ?と言う気もするが、この様子なら全員怪我などはしてなさそうだ。


「そうですか。今夜も冷えそうですし道もぬかるんでるのでケガと風邪には気をつけてくださいね」


「大使も風邪にはお気をつけて」


紅忠側のトラブルはなし、と判断した俺と石薙さんが次に足を向けたのはトンネル工事の現場だ。


特にこの雪で工期に影響が出ないかは把握しておきたい。


そんな訳で更に雪解けでぬかるんだ道を歩いていると、トンネル工事の現場からキャッキャした声が響いてきた。


「これは……」


トンネル工事現場では雪玉が飛び交い、楽しそうな声が四方八方から響く。


「「なんで雪合戦してるんですか?!」」


俺と石薙さんの声がシンクロすると、パタパタと足跡が近づいてきた。あの小さな影は相模さんのものである。


「お久しぶりです、真柴大使」


「こちらこそお久しぶりです。ところでなんで雪合戦してるんですか?」


「あー、うちの職員の中の何人かが雪を見るとテンション上がるタイプの人たちでして『どうせ仕事にならないから交流レクリエーションとして雪合戦しよう!』と強固に主張されまして……」


相模さんが諦めの滲んだ顔つきでそう説明してくる。多分この感じだと周りに押し切られて仕方なく受け入れたのだろう。


「正直私はあんまり雪でテンション上がるタイプでないのでそこまでしなくてもいいと思うんですけどね」


「雪が降らない地域の人だとああなるものなんですよ」


石薙さんがフォローするように声をかけてくるが、相模さんは全てを諦めたような顔をして「そうですね」と返した。


「ところで怪我人とか出てませんか?」


「あー、雪ですっ転んだ人とかは何人かいますけど入院レベルの怪我人はいません」


「分かりました。怪我人や病人が出ないようにだけお気をつけ頂ければ」


「一応言ってあるので大丈夫だと思います、たぶん」


大の大人たちによる本気の雪合戦のかたわらで怪我の心配をする俺たちは大概仕事人間なのかもしれなかった。

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