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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
19:大寒波と大使館

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19-5

朝食の後はいつも通りの仕事が始まる。


着る毛布を着たまま執務用の机に腰を下ろし、仕事用のペンを執る。


「今日のうちに済ませとくやつはこれだな」


一つ一つの書類に目を通しているとエルダールの島との交易に関して気になるものが見たかった。


あの島で見つかったコーヒーっぽいやつが本当に地球のコーヒーと同じ種類であることが確定し、輸入に向けて本格的な話を進める方針が固まったのだ。


コーヒー豆の種類としてはロブスタ種に近く苦み渋みが強いので人気は出づらいと思われるが、飲み方を工夫すれば美味しく飲めるという。


地球では現在温暖化で栽培が難しくなっているコーヒーを異世界からも輸入出来ないか?といコーヒーの一大消費地であるEU諸国からの強い要望を汲んで、この春から交渉を進めることで決定したそうだ。


(金羊国でもコーヒーが飲めるようになりそうだな)


個人的に紅茶よりコーヒー派なのでこちらでもコーヒーが飲めるようになってくれれば本当に嬉しい。


「これはとりあえず双海公国とエルダールの島人に渡すとして、これは日本側のトンネル工事進捗……そうだ、あっちも無事か見といたほうがいいか?」


しばらく考えてから外の雪を見る。増えはしていないが減りもしない大雪の中を歩くのは少々しんどいし、何かあれば向こうからこっちに連絡が来るだろう。


(確認は時間がある時でいいか)


明日以降また雪が降らないければ問題はなかろう、と判断して次の書類に目を通す。


「うげ」


そこに書かれていたのは先日報告した北の国からのパーティのお誘いについての内容だった。


「また北の国行くのかよ」


内容としては『北の国の王家の嫡男誕生を祝い内閣府と皇室から祝電を送る。皇室からも代理人を派遣するので真柴春彦は内閣府の代理人兼皇室からの代理人の案内役として、木栖善泰は警護担当として出席するように』という指示書きであった。


「行きたくねぇー……」


しかし上からの指示であるし、皇室側の代理人がどこの誰かは知らないがさすがに初めての異世界に案内人無しで放り込まれて野垂れ死になんてなったら寝覚めが悪すぎる。


仕方ないと呟きながら木栖へ新しい仕事の話をするため俺は自分の執務室を出た。




****




「今度はお前と北の国か」


新しい仕事の指示書を見た木栖は困り気味に眉尻を下げてそうつぶやいた。


「ところで3月頭に出て間に合うのか?」


「内閣府が気を遣って太陽光パネル付き電動トゥクトゥクを貸し出してくれるとよ。歩きよりはスピード出るから少しはマシだろ」


貸し出し予定のトゥクトゥクはある国内企業が太陽光電池の研究者と共同で制作して実証実験中のものらしい。


国内の道路であれば大人3人まで乗れて最高時速は50キロ、太陽が出ている間はずっと走れてバッテリーと回生ブレーキも積んでいるので夜間でも前照灯をつけた状態で3時間程度は走行可能、とのことである。


車幅も1メートル以下なので上野と金羊国をつなぐトンネルもギリギリ通すことが出来る。


「……でもこれ、まだ実験用のデモ機だよな?壊れた場合の修理はどうするんだ?」


「それ用に人と機材持ってきてもらうよう頼むしかないだろうな。まあ延々と歩いて山越えとか、爆速で着く代わりに3日間乗り降り不可よりはマシだろ」


前回の北の国行きの時の事を思い出して何とも憂鬱な顔になった俺を木栖は「余計な事思い出させて悪かった」となだめるのであった。

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