19-2
1月下旬、金羊国は50年に一度の大寒波に見舞われ街は白い粉雪に包まれた。
積雪の深さはよく分からないが少なくともいつもより降ってるのは確実だ。
室温は氷点下を下回り、室内だというのに息が白くなっており、寒すぎて布団の中から出る気が失せる。
しかし今日も仕事なので仕事には行かなければならない。
根性で布団を抜け出すと帰省中に買い足した洋服類の中からオレンジ色の着る毛布に体を押し込み、フードで頭まですっぽり覆いかぶせる。
「着る毛布があってよかった……」
金羊国の冬は厳しいくせに使える暖房が火鉢・毛布・こたつくらいしかないという条件に耐えかねて、今年安売りされていた着る毛布を購入したのだがまさかここまで役に立つとは思わなかった。
足元は厚手の靴下を履き、手元はハンドウォーマーで仕事の邪魔にならない程度に温める。全権大使の威厳などかけらもないがこんなクソ寒い空間で仕事なんぞしてられるか!俺は威厳より防寒を取るぞ!
「……全員生きてるか確認だな」
こんなに寒いとうっかり凍死者が出てもおかしくない。死人が出てないかを確認しようと寮の部屋をひとつづつ訪ねて回る事にした。
―30分後―
「とりあえず全員死んでないな」
「勝手に人の事殺さないで貰えます?」
妙に元気な納村からの本気のツッコミはともかく、全員元気であることが確認された。
この雪だとアントリとオーロフの2人は遅れるだろう。
「飯山さんはいつも通り朝ごはんの準備を。俺は積雪量の確認と記録、あとのメンバーで雪かきだな」
「わかりましたー、今日はあったかい物にしておきますねー?」
「シレっと外に出ない役割取りましたね」
さっそく台所へと向かう飯山さんと深大寺のツッコミはおいといて。
納村が「じゃあ雪捨てどこにします?」と俺に聞いてきた。
「雪捨て?」
「集めた雪をどこに捨てるかって話ですよ。中庭はトイレへの通行の邪魔になるから前庭ですかね?」
「……考えてなかった」
言われてみれば雪をどかすにも邪魔にならないところに集める必要がある。
事前に金羊国側から『大雪の際は私有地に溜まった雪を川へ捨ててもいい』と言う話はされていたが、一度どこかにまとめてからでないと川に捨てに行くのも難しい。
すると納村は「これだから雪に不慣れな関東人は」とつぶやいた。
「そう言えば納村の地元って……」
「福井の山ん中ですからね。こちとら積雪が50センチ以下で少ないっていう土地ですよ?雪かきの経験値で言えば私が1番でしょうね」
大使館メンバーで毎年ドカ雪が降るような豪雪地帯出身というと納村しかおらず、ちゃんとした雪かきの経験があるのは青森出身(ドカ雪の経験はない)の夏沢と雪国住居住経験のある柊木医師と木栖ぐらいということも判明する。
「となるとちゃんと雪かきしたことないのは俺と嘉神・深大寺・石薙さんの4人か」
「納村さんたちにお任せでいいのでは?」
「いちおう人数いた方が良いだろ、とりえず納村を筆頭に俺と飯山さんと石薙さん以外全員で雪かきってことにしよう」
俺は絶対外に出たくないので納村に丸投げである。こういうのは慣れてる奴が頑張るのが一番いい。
石薙さんは年齢的に腰とか膝やられたら大変なので俺の手伝いに回って貰おう。
「了解です。大使は寒さで設備とかやられてないか確認してくれます?井戸の凍結とか窓が凍って開かないとか、そうあったら困りますしね。あ、お湯かけはしないでくださいね?余計に凍って大変なんで」




