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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
19:大寒波と大使館

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19-1

冬の長期休暇が終わって1番に目がいったのは、積み上がった仕事の山であった。


「……毎年のことだが悲しくなるな」


「諦めろ」


届いた仕事を全員に振り分けていると伝書鳩が飛んできた。


いつも通り飛んできた鳩に水と餌をやりつつ、手紙を広げると新年の挨拶もそこそこにある打診が掲載されていた。


「王家主催パーティー招待、ねえ?」


北の国と日本は正式な外交まで至っていないが内々に原油取引を行っており、この原油取引の規模拡大などのためにも将来的な外交関係の樹立はほぼ決まっている。


訪日の際に正式な外交樹立の条件も提示しているのだが、日本側の言うことを全部聞くのが癪に障る連中がいて大いに揉めてるんだそうだ。しかも労働条件規制には賛成だが外交樹立は反対という勢力もいる。


それで日本との外交樹立反対派を転向させるのに日本側との秘密会談を検討してるらしく、4月ごろに国王第一令息誕生記念パーティーをやるので招待状を準備しようか考えてるので聞かせて欲しいという問い合わせだった。


(……昨年秋の訪日に王妃が同行しなかったのって、妊娠中だったからなんだな?)


そう言えば、と言う事実を思い出すと同時に内容的にどうしようかしばし考えてから結論を出す。


「これは一応上にぶん投げ案件だな」


正直俺は面倒なので行きたくない。子どもの誕生祝ならお祝いの手紙でも出せば済む話である。


しかし同時に打ち明けられた話の内容が内容なので、外交樹立の下準備のために行ってこいと言われる気もする。


その辺が正直読めないので全部上に丸投げすることにした。


伝書鳩を捕まえると専用の籠に入れ、手紙を本省行きの書類の中に放り込んだ。


「これ行けって言われたらめんどくさいな」


宰相誘拐事件の時の北の国への道行きを思い出してげんなりした気持ちでため息を吐く。


するとドアがコンコンとノックされた。


「大使、ちょっと今大丈夫ですか?」


「嘉神か。何かあったか?」


珍しく書類の類を持たずに現れた嘉神はちょっと悩みつつ口を開いた。


「大した事でもないんですが……大使館って雪かきの道具ないですよね?」


「雪かき?確かにないがこの辺の雪はそこまで多くないだろ」


金羊国の冬は雪こそ降るが積雪量は多くない。この辺りであれば10センチくらい、現在開拓されている金羊国中部辺りでも30センチ程度らしい。


なのでこれまで雪かきの必要性を感じたことは一度も無かったので雪かきの道具など当然用意していない。


「今年は大雪の兆候があるらしいので雪対策をした方が良いんじゃないか?とオーロフくんに言われまして。色々聞いてみたら北の国は既に大寒波で例年の2割増しの積雪量と聞いたので備えた方が良いと思いまして」


「なるほどな。でも大使館の予算はカツカツだから暖房費増やすので精いっぱいだと思うぞ?」


「ですから追加の予算申請を、と思いましてご相談に参りました」


「そういうことか……まあ沢山雪が降る年もあるだろうしあっても困らないし金額少なければ通ると思うぞ。予算申請書は?」


「書名捺印を済ませれば提出できるとこまで準備してあります」


出来上がった予算の追加申請書類に俺の署名と印鑑を入れると「本省に行ってきますのでついでに書類持ってきますね」と籠を手に取ってくれる。


「ああそうだ、ついでにその籠のいちばん上の手紙読んどいてくれ」


「承知しました。夕方には戻りますね」


そんな話をした翌週、金羊国は北からの大寒波に包まれた。

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