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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
18:Chosen Family

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18-9

うちに泊まりに来るにあたり、夕飯だけ一緒に買いに行くことになった。


電車を降りて地元のスーパーに立ち寄ると店は程よく混んでいた。


「夕飯どうする?」


「あったかいもんがいい」


「まあ寒いとそうなるよな。めんどいし鍋で良いか」


木栖に籠を持たせると鍋用の野菜を探しに行く。


ちょうど安くなっていた四分の一カットの白菜ともやしを籠に入れておくと、木栖が謎の味噌を手にしていた。


「なんだそれ?」


「とり野菜みそっていう鍋用の味噌だな、富山にいた時に何度か食べてたんだが売ってたの見てつい」


「お前昼間も味噌ラーメン食ってたろ」


「……たぶん癖なんだろうな。意識しないと味噌味選ぶの」


とり野菜みそは溶かして使うものらしく休暇中に使いきれない気がするので別のにしてくれ、と頼むとしばらく悩んでから醤油ちゃんこ鍋のストレートタイプのつゆを手に取って籠に入れた。


「にしても、そんなに味噌味好きなのか?」


「特別味噌味が好きってつもりはないんだけどな、うちの親父が味噌味好きだったんだよ。だから自然と味噌味と、あとは親が両方長崎だからとんこつ味が多くなりがちだったから、何も考えないと味噌かとんこつに手が伸びるんだろうな」


家族由来の癖か。心当たりがない事も無い。


「うちは死んだ父親がレバー嫌いだったから、大学ぐらいまでレバー系の料理食べたこと無かったな」


「家族が嫌いなものが食卓に出てこないのはよくあるよな」


「まあその父親は俺が物心つく前に死んでるんだけど」


今にして思えば亡き夫が嫌いだからと言う理由でレバーを出さなかった母も大概どうかしてるなと思うが、当時はそういうものと言う感覚で受け入れていた。


あの頃から母の中ではまだ父が生きていたのかもしれないし、俺を忘れて父を忘れない母へ繋がる伏線だったのかもしれない。これは物語じゃないので伏線などと言うものではないかもしれないが。


「お前の母親を悪く言うみたいでアレだが、どうかしてるな」


「俺も今になってそう思うよ。あと鍋に肉と魚どっち入れる?」


「個人的な好みで言うなら鶏肉だな、でも予算合わなさそうなら安いので良いぞ」


結局魚売り場と精肉売り場を見て安くなっていた豚コマと鶏つくねを籠に放り込んだ。


酒類のコーナーに足を踏み込むと見覚えのある姿とバッチリ目が合った。


「春兄じゃん、今日から休みなの?」


「昨日からだよ」


俺の従兄弟である沢村絃子が酒を籠に突っ込みながらキャッキャと近寄ってくる。


お使いついでで酒買ってるんだろうけど籠の中の大瓶の酒がカラカラと揺れている。


(これひとりで飲む気か?おじさんや叶の分も込みだよな?)


俺の内心のツッコミが口から出る前にイトは「あ、土曜日の食事の約束忘れてないよね?」と聞いてきた。


「覚えてるよ、土曜日の7時だろ」


「ならいいや」


イトが俺の横にいた木栖に気が付いて「春兄。この人が噂の木栖さんでいいの?」と聞いてくる。


「噂のってなんだよ。こいつが木栖善泰なのはあってるけど」


木栖の方にも「こいつは俺の従兄弟の沢村絃子な」と軽く紹介しておく。


「そっか春兄知らないか、春兄と木栖さんがガチで付き合ってるのかを探ったり考察してる人がいるの」


サラッと知りたくないタイプの情報が出てきてちらりと木栖の方を見ると、当惑のまなざしを俺に向けていた。


というか俺らの関係性を漁ってる人たちって何だ、俺たちはただの国家公務員なんだが?


「実際探りを入れられたことあるのか?」


「ある」「嘘だろ?」


イトの返答に間髪を入れず木栖が突っ込む。しかしイトがここでふざけた嘘を突っ込んでくる理由がない。


身内だけの場ならまだしもこれはただの立ち話であるし、木栖と言うイトにとって身内と言い難い相手もいる。


「この場じゃ聞かないけどそういう人結構いるから気を付けてね、木栖さんも春兄と一緒にいるならそういう事もあると思うし」


「忠告ありがとうな。土曜日楽しみにしてるって叔母さんに言っといてくれ」


「はーい、じゃあまた今度ね」


そう言ってイトはセルフレジの方へ歩き出していく。


イトからの忠告めいた話にちょっとだけため息が漏れる。




「……俺らがどういう関係でもよその人にはどうでもいい事だろうになあ」




叔母さんたちや木栖家の人々には俺たちの関係性は重要な問題だろうが、顔も知らないような第三者にはどうだっていい事だろう。


そもそも俺ですらまだ答えが出せてないというのによそ様が答えを知ることが出来るんだろうか?


「みんな下世話な話が好きだからな」


「そういう事なんだろうな」


やれやれという気持ちになりつつ、俺たちは夕飯の買い物に戻るのであった。

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