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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
17:大使館と王の来日

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232/325

17-20

首相官邸からパレード用に用意されたオープンカーに乗り込むと遠目にも色鮮やかな一団が誕生する。


(全員髪色が派手だから目立つんだよなあ)


金銀赤青緑と華やいだ髪色の人々と二足歩行の羊と鳥が乗っているオープンカーはどっからどう見ても目立っている。


パレードなので目立つ方自体を気にする必要はないのだろうが、これは実に目立ちすぎる。


外堀通りから第一京浜に入って銀座の中心部を走ると、異世界の王と獣人宰相をひと目見ようと押しかけた人々が歩道を埋め尽くしている。


それに軽いお手振りで応じながら上機嫌で異世界の街並みを眺めている。


銀座・日本橋エリアを抜けると神田川を超えて秋葉原に入った、ここからが正念場である。


『こちら警視庁、デモ隊が駅広場脱出しようと動いてます!』


「スピード少し上げてくれ」


「了解」


警察がデモ隊を抑えてる間に秋葉原を抜けて御徒町に入っておきたい。


これまでの努力を水泡に帰さないためにはこれが一番最善だと思ったのだ。


『こちら警視庁、デモ隊が駅広場脱出!そっちに向かってます!』


歩道側はデモ隊の乱入により混乱しており、車との接触リスクも出てきた。


観客の隙間からこっちへ突っ込んでこようとする馬鹿が警察ともみ合っている。


「真柴さん、誰か来ます!」


ハルトル宰相が俺に声をかけてくる。


歩道側の混乱した人混みをすり抜けたプラカードの人たちがこちらに寄ってきて、パレードの車に立ち塞がる。


手持ちのプラカードには大陸標準語で『異世界人は異世界で働け』『日本の税金は日本人のもの!』と言った攻撃的な言葉が並ぶ。


王の護衛騎士が「無礼者!王の御前であるぞ!」と声を張り上げ、警察官と北の国の騎士たちがプラカードの人々を車から引き剥がそうと動き回るのを見て、俺は咄嗟に車を降りて2人へのフォローに入る。


フォローに来た俺に対して北の国の国王は俺を小馬鹿にするように口を開く。


「日本はろくに国民の統率も取れんのか」


「申し訳ありません」


「あのような無礼者、我が国なら即刻首を刎ねるがこの国ではやらないのか?」


「この国ではそのように即刻人の首を刎ねる事は命の危機でもない限り認められておりません」


「面倒くさい国だな。ハルトル、何故お前はこの国を真似る?」


北の国の国王は隣にいたハルトル宰相に目を向ける。




「むしろ僕はこうした自由さがこの国、いやこの世界の強みだと思うんです。


気づかれることなく人に踏み潰された蟻がいるように、どんな辺境にも人が暮らすように、どんな国にも見えない場所で踏み潰されようとする人がいる。たとえどれだけ素晴らしい賢人であっても見えない場所はあって、賢人の見えない最底辺の場所に居ても声を上げる権利がある。それが僕の作りたい世界だったんです」




ハルトル宰相のその言葉は俺たちへのフォローでもあった。


「即刻首を刎ねるべきではないと?」


「彼らの言い分を聞いても良いじゃないですか。確かに今回のやり方には問題はありますが、命をかけずとも己の想いを自由に発する権利が攻撃的な方向に向かえば起き得ることなんでしょうね」


プラカードを手にした人々が警察によって連れ出されるとその場がようやく収まってきて、運転手が「車出します」と声がかかると車は再び上野方面へ走り出していく。


「最後の最後に国民に恥をかかされるような国がお前の理想なのか?」


「国民が自分の暮らす国への夢や理想を持てないで生きながらえるぐらいなら僕の恥など大したことじゃない」


「理想など持たずともただ生きて行ければ十分だろう」


「無辜の民が良い生活を求めることの何がいけないのでしょうか」


2人の話が段々と熱を帯びてゆき、民衆は統制されるべきか自由であるべきか?と言う話になっていく。


俺自身は国の保証する自由のもとで生きてきたのでハルトル宰相が正しいと思うが、あの世界では王侯貴族の顔に泥を塗るくらいなら民の自由を抑制して国家統制に注力すべきと考えるのも理解できた。


熱を帯びた会話は御徒町を抜けて上野に差し掛かるとお互い話し疲れたようで沈黙の時間となった。


日本中から注目される異世界の国王と羊の宰相を見送りに来た異世界の民を見て、北の国の国王はつぶやく。


「ハルトル、お前にとってここが目指すべき世界なのか」


「ええ。国王殿下には理解し難いでしょうが、これが僕の目指す世界なんです」


そんな話をして御一行は日本から異世界へ向かうトンネルへと歩き出した。



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