17-12
首相官邸での歓談を終えると、再び車で今度は国会議事堂にある憲政記念館の見学となる。
これは民主主義的な国づくりを目指すハルトル宰相へのサービスであり、北の国の御一行様に日本の民主主義を知ってもらいこの先の付き合いの参考としてもらう事が主目的となる。
専門家(とそれについてる通訳)の案内で憲政記念館を見学してる間、俺たちは近くの公園で少しばかりの休憩を取ることにした。
「にしてもこの距離を車移動ってもったいないよな」
「しょうがないだろ、上野公園と違ってこの辺は狙撃や爆破があり得る」
「こんな官公庁街のど真ん中でどこから狙撃するんだよ……」
思わずマジなツッコミをしてしまったが、まあ専門家である木栖が可能だと言うなら可能なのかもしれない。もう考えるのはやめよう。
「この後ってどうなってるんだっけ」
「確かこのあと4時に迎賓館赤坂離宮に入って休憩と着替えを済ませて、7時から宮中晩餐会じゃなかったか?」
全く気が休まらなくてげんなりした分になる。
しかもこれがあと5日も続くのだと思うと本当に勘弁してほしい気持ちになる。
「割と現時点できついな」
「諦めろ、公務員の宿命みたいなもんだ」
木栖に宥められながらまだ少し暑さの残る秋の空を眺めていた。
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さて、見学を終えた北の国御一行は再び車を走らせて赤坂の迎賓館へ入る。
赤坂の迎賓館は国宝指定されているだけあり、煌びやかで華やかさに溢れていて貴族たちから中々ウケが良かった。
俺のようなド庶民は備品など下手に触って壊すのが恐ろしいので触れないが、生れながらの王侯貴族や完璧な教育を受けた従者たちは気にすることなくひょいひょい触ったりしているところに生まれという身分の違いを感じてしまう。
軽く建物内の案内をした後にそれぞれ振り分けられた部屋に各人とその従者が入っていく、のだが。
「何故ハルトルを違う建物に泊めることにした?」
いま、俺は北の国の王にめちゃくちゃ威圧的に睨まれていた。
どうやら北の国御一行を本館に、ハルトル宰相たち金羊国の人たちを和風別館に泊まることにしたのがこの王はお気に召さなかったようなのである。
「昔はどうであれ今は一国の宰相閣下です、同じ部屋にすることは失礼と判断しました」
「本人はなんと言ってる?」
「日本側の判断に従う、と」
当事者たちに言うつもりはないが、これは金羊国側からの依頼でもある。
一緒の部屋にしたら離れ難くなって行って連れて帰ろうとする気がするから別の部屋にしてくれとグウズルン情報管理官に口を酸っぱくして言われたのだ。
俺達は別の国の人間なのだし当然別の部屋だろ?と思ってたので不思議に感じつつ別の建物に振り分けていたが、まさかこんな不満が出るとは思わなかった。
「……あいつは俺と一緒に寝るのが嫌なのか」
「その辺りは存じ上げませんが、一緒の布団に寝ると愛玩動物扱いされてるようで抵抗感があるのかもしれませんね。あくまで現在のお二人は友人として対等な関係なわけですから」
そんなようなことを言って見ると、不満は残るものまあ一応納得はしてくれたようで「無理を言ってすまなかった」と答えてさっさと戻っていってしまった。
とりあえず今回はなんとかなるはずだ、次以降があるとすればその時は相談しておく必要があるだろうが。
(宮中晩餐会の前に怖ぇえもん見せられたな……)
この後行われる皇室主催の宮中晩餐会でもなんやかんや走り回る予定となっていた俺は、ぐったりした心を無理やり奮い立たせて晩餐会の準備に向かうのだった。




