16-23
「大陸まで伝書鳩ならぬ伝書ドラゴンとはねぇ」
伝言の仕事を引き受けたイーファは半笑いで女公爵宛の書類を受け取るとあの美しい緑のドラゴンの背中に跨り、「ちょっくら行ってきますよ、行くよスフェーン」と行って飛び立って行った。
やはり何度見てもドラゴンが空へと飛び立つ姿はファンタジーな印象が強く、その姿を写真に残しておきたくなる。
「ところで、輸送費ってどうするんだ?」
「エルダールの民の産品を売って得た資金から払うことになるだろうな、何割かを双海公国で売り捌いて輸送費に回してもらうか……でもあんまりエルダールの物品が双海公国で出回ると価値が下がって薬価の足しにならなくなるから悩ましいところではあるけどな」
「だな。でも工芸品だけだとすぐ需要が落ちないか?」
「その場合の候補として一応あのコーヒー豆を調べてもらってる」
「前に島を調べてた時に見つけたアレか」
アレが本当にコーヒー豆で飲用に適しているとなれば金羊国でコーヒーが飲めるようになるかもしれないし、コーヒー豆自体が地球における需要の割に生産地が限られているので売り物になる可能性は高いので候補として送ってあるのだ。
「あとは日本と双海公国、両方からの返事を待つだけか」
****
双海公国からの返事は3日ほど後に到着した。
今回俺たちを島まで送ってくれた奴らを専任とするので商材になりそうなものがあればどんどん教えて欲しいし、出来ればエルダール側から直接商材の購入して良いのであれば定期的に人を送りたいので船員同席の上で俺たちの方で聞いておいて欲しいという。
「俺らはともかくエルダール側が嫌がる気がするんだけどな?」
「向こうもダメ元で聞いてるんじゃないか?聞くだけ聞いて断られる分には問題ないだろ」
「まあな。双海公国に着いた時に報告すれば良いか」
「……そういえばもう8月も半ばだし、来週末には出船か」
「ああ。その辺の話もちゃんと書いてあるぞ、俺らが双海公国に着いた時点で深大寺を解放するが金羊国行きの商船に便乗させてくれるらしい」
「ありがたいな」
とりあえず手紙を一度ポケットに仕舞ってから、イシレリ少年の元へ話をしに行くことにした。
イシレリ少年は数日置きに甥っ子であるアナマキ氏とその兄であるフィフィタ氏の元を訪ねているので、タイミングさえ合えば話をする事が出来る。ダメならフィフィタ氏を通じて話を持っていくこともできる。
「こんにちは」
「何かありましたか?」
病室には専門家と共にリハビリ中のアナマキ氏とそれを見守る兄のフィフィタ氏のみで、フィフィタ氏にちょっと話があると伝えると「分かりました、場所を移ったほうがいいですか?」と聞いてきた。
「ここでも構いませんよ、どちらかといえばあなたの大叔父様への伝言なので」
「そうですか。ご用件は?」
「薬の輸送を担う双海公国のヤマンラール公爵が薬の輸送ついでに直接ここで商売は出来ないか聞いて欲しいと」
「普通に無理ですよ」
「でしょうね、まあ向こうも輸送の仕事ついでに多少でも利益を出せればというダメ元の質問でしょうから」
げんなりとしたように「人間って本当に欲深いですよね」とつぶやく。
「大叔父様にそれを聞いていたら全部破綻するところでしたよ」
そのひと言にちょっとの恐怖を覚える。
(このタイミングで話が全部おじゃんになってたら泣くに泣けないし、本人不在で良かった……)
「それともうひとつ。俺たち日本大使館のメンバーと研究者一同は来週末に帰還します、他の医師たちは冬まで残りますのでよろしくお願いします」




