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イシレリ少年の言うところの「血の呪い」の患者達が島にやって来たのはそれから3日ほどしてからの事だった。
診察を受けに来たのは5つの氏族から1人づつ、それも症状が重い人がほとんどのようでみな家族や友人におぶさって来ていた。
異世界の医師から診察を受けると言うのは彼・彼女らなりに覚悟のいる事だったようで、その表情は悲壮な覚悟と強い緊張が滲んでいた。
しかも患者達には親族と別に屈強な付き添い人もおり、必ず診察の場には同席させるようにと強い要請もあった。
この要請に国境なき医師団の人々は「今は信頼を育む場面だから」という意見の合致により手術などの一部場面を除き同席を認めた。
「で、俺達は何をしたら良いんだろうな?」
「とりあえず現地調査だろうなあ」
治療の成果がある程度出て薬の定期購入などの話が出るまで俺たちに出番はなく、正直に言ってしまえば暇になる。
と言うわけで、俺たちはこの玄関島の中を回って色々と採集する事になった。
この玄関島は島の中心に山があり、その周りにすこし平地がある形となる。三宅島の形をそのまま小さくしたような感じだろうか。
監視として付けられた青年(何度か話しかけたが彼は大陸標準語を解さないようなので名前もよくわからない)と共に島の散歩に出かける事にした。
今回は島を一周して島の大きさを推測したり、写真など撮っておく事にしよう。本当は森に入って土壌や植物を採取して日本に送りたいんだがまだ許可取ってないので今日はこうなる。
夏本番の青空から強烈な日差しが降り注ぐディープブルーの海はまさに南国という印象であり、地球なら人気のバカンス地になったろうなどと思ってしまう。
「海辺まで来たのにあんまり潮の匂いはしないな」
「潮の匂いってプランクトンの死骸の匂いらしいから、プランクトンの少ない海だと潮の匂いはあんまりしないらしいな」
「じゃあこの辺はプランクトンの少ない、栄養価の低い海なのかもな」
「でも双海公国の海もそこまで潮の匂い強くなかったしプランクトンが違う可能性もあるか」
そんな考察も程々にのんびりと岸辺を歩いていると、来る時に乗っていた船が止まっていた事に気づく。
船の船首が紐で近くの木と括り付けられており、その近くの掘立て小屋には屈強な見張りと共に船の乗組員達がぼうっとしている事に気づく。
声をかけようと近寄ると見張りの青年に服の襟元を引っ掴まれて止められたので、恐らく合流させないようにしてるのだろうと察して近寄るのを辞めた。まあ合流させない理由もよく分からんが。
時折この辺りの景色や植物を写真に収めながらぼんやり歩く事2時間半。
「戻って来たな……」
そう呟いて木栖がスマホで時間や歩く速度を確認する。
「ああ。今回はゆっくり歩いてたんで時速3.5キロ、島一周で2時間半なら6.5キロってとこか」
「円周が6.5キロなら3.14で割って……」
なんとなく地面に割り算の式を立て始めた俺に木栖が「2.07006369426752」と伝えてくる。
早いなと思ったらスマホの電卓を見せて来たので俺もスマホの電卓を出す。
「小数点2位以下切り捨てて2.07キロとして、2.07×2.07×3.14で、13.454586平方キロ……」
「まあ実際は山があるからもっと面積あるだろうがな」
「それを言うなよ」
「あとは海の中で泳がてら魚でも探すか」
「どうせ俺らの本番はまだ先だしな」
まだ診察中の柊木先生と国境なき医師団の人たちには遊んでるように見えそうだが、一応これも現地調査ということで。




