14-14
2月も下旬に差し掛かり寒さの底ももう終わりだろうと思っていた矢先のことであった。
「雪だ……」
金羊国に雪が降った。
去年も雪が降ったので雪自体は珍しくないが、雪解け水でドロドロになった道が俺は苦手だった。
路面が凍結してないだけマシなのかも知れないが革靴で泥道を歩くと汚れ落としが面倒なのだ。
しかもそういう日に限って外に出ないとならないのがついてない。
「ほんとに今日のって俺も行かないとダメか?」
「残念だがお前もいないと駄目だな」
こんな日に限って金羊国に寄贈された武器の管理教育の視察の予定が入っている。
今回の視察にはハルトル宰相も視察に参加する事や、5月ごろに予定されてる地球からの視察の事前演習も兼ねてるので俺が不在だと色々不便なんだそうだ。
「まあそうだよな」
「雪が降ると足元悪くて面倒だろうが、雨でも雪でも嵐でも訓練はあるからな」
「まあそうだけどな」
そうぼやきながら朝食を済ませるためいつもの食堂に向かう。
扉を開ければ醤油に似た魚醤の香りがふわりと漂う。
「おはよーございます大使、今日はすいとんですよー」
今朝のごはんは大きなお椀いっぱいに盛られたのは野菜たっぷりのすいとんだ。
(寒い日にはこういう暖かい汁物って嬉しいよな)
よく見るとごろっと大きめの鳥の肉も入っているのも嬉しい。保存用の塩漬け肉だろうが肉は肉だ。
一口飲めば野菜の甘みと肉の塩気と魚醤の旨みが広がってきてホッとする味だ。
今日も面倒だけど頑張ろう。
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冬用のコートを着込んで木栖とハルトル宰相とウルヴル魔術官の4人で赴いたのは、隊長達の暮らす家の側に設けられた銃火器類の練習場だった。
木製の小さな屋根のついた射撃スペースとその周辺は土塀に囲まれ、50メートルほど先には人間や動物の形に切り抜かれた1センチほどの木製の板をが建てられている。
今日はあの木製の板を目標に使った拳銃の射撃訓練である。
「まず先に俺たちの銃の代わりに仮想敵である人々が使う弾撃の見学も行う。この状態の人々に対抗するために銃を使う、という前提でよく見ていて欲しい。お願いします」
ファンナル隊長の話に答えるようにウルヴル魔術官が目標となる木製の板の前に立つ。
ポケットから取り出したのは菱形に削られた小粒の石が20ほど出てきた、大きさは1センチくらいだろうか?
これを右手に握って中指や薬指をもぞもぞと動かして1粒を人差し指の関節の上置く。
そして石を親指と人差し指の関節で挟み、ぎゅっと押し出すように弾き飛ばすとプチッという小さな音を立てて真っ直ぐに人型の板の急所を狙って飛んでいく。
人型に切り抜かれた板の頭部に1センチほどの穴が開く。
風切音や発射音もなく、1ミリ程の石粒で木の板を貫通させられるほどの威力ある。これが自分に向いて飛んで来たら避けられるか?と思うと背筋がゾッとする感じがする。
さらにウルヴル魔術官は左手も駆使して両手で石粒を連射し、さらにファンナル隊長がウルヴル魔術官に投げつけた木皿や丸太も正確に撃ち抜いてきた。
最後に両手が空になったことを全員に見せるとこのデモンストレーションは終わりというように黙礼をして、ハルトル宰相のそばへと下がっていった。
「この弾撃に当たる方法として拳銃を用いることを頭に入れて練習に向き合って欲しい」
その言葉に「はい!」という返事の合唱が響いた。




