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この土地には問題という概念が服を着て歩いているような女がいる。
で、その問題という概念そのものみたいな女がまーたやらかしたらしい。
「で、これが問題のラピスラズリの原石の破片です」
机の上に置かれたのはスーパーに置いてある5キロの米袋サイズの袋が二つも積まれてきた。
「これ全部クライフ上級魔術官から貰ったんですか?」
そう、問題という概念が服を着て歩いているような女……もとい、ヴィクトワール・クライフ上級魔術官がこの大量のラピスラズリの原石を相模さんにプレゼントしてきたのだ。
しかもこの大量の原石が発生した理由もおかしい。
「はい、彫像の破片のうち売れそうな大きさのものだけでこれらしいです」
相模さんの帰省で暇を持て余したクライフ上級魔術官が、瑠璃という名前がラピスラズリを示すと聞きつけてどこからか巨大なラピスラズリ原石を手に入れて相模さんの彫像を作ったことで発生したものなのである。
もう一度言う。このラピスラズリは好きな女の彫像を作った残りものである。
(元の石はどんだけ大きかったんだ?)
破片でこの量なら元はどれぐらい大きいのか、そしてなぜ彫像などと言う方向に行ってしまったのか。ツッコミどころが多すぎるが本題から逸れるので話を戻そう。
「で、この石を紅忠側で使いたいと」
「絵具に加工して本物のウルトラマリンブルーとして売り出したいんだけど、それに伴う税とかの話をと思ってね。石薙さんが少し忙しいっていうからその暇つぶしがてら雑談しにね」
暇つぶしに俺を使うな。
ツッコミどころしかない話にため息が漏れるが、幸い急ぎの仕事もないので雑談ぐらいつきあってもいい。
「ウルトラマリンブルーというと、フェルメールの真珠の耳飾りの少女か」
「そう、あの絵のターバンと同じ本物のウルトラマリンブルーの絵の具をね」
「本物?」
「現在流通する絵の具のウルトラマリンブルーは全て人工合成だからね。大手の絵の具メーカーと協同して数量限定でフェルメールの時代の本物のウルトラマリンブルーを売り出そうと思ってる」
よくもまあそんなことが思いつくものである。
相模さんも河内さんの計画の詳細まで聞いてなかったようで「そうだったんですねえ」と呟いている。
「ちなみにこのラピスラズリは全部絵の具に?」
「いえ、流石に貰ったもの全部売るのも気が引けるのでひとつだけ手元に残しておこうかと」
特に気に入っているという原石の破片をひとつ取り出して見せてくれる。
ちょっと歪んだ楕円形の深い青の輝きの美しい手のひらサイズの石だった。
「これなら紙の重しにいいかなって」
「確かに。綺麗ですし丸いですもんね」
「ホント、めちゃくちゃな癖に時々こういう綺麗なものを差し出されると少し許しそうになるんですよね」
相模さんが困り気味に笑いながらそうつぶやく。
困らされること自体を楽しんでいるというのなら俺がどうこういう権利はないので「そうですか」と生ぬるく笑って答えた。




