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※作者注:アルファポリス版では説明用の画像を添付していますが、なろうでは省略しております。作中の説明が分かりにくかったら申しわけありません。
工事関係者向け魔術講習会は主に地球から派遣された技術者を対象にこの世界における魔術の基礎理論を一通り理解してもらうことを目的として不定期に行われる。
相模さん以外は魔術を使うための適正がないとされているので、あくまでも工事を円滑にするために基本的な理屈を知ることに主眼が置かれており、過去には大使館の柊木医師や政経宮のウルヴル魔術官を講師に招くこともあった。
ヴィクトワール上級魔術官は今回講師として招かれているらしい。
会場は工事事務所の一番大きな会議室、そこに長机を並べて一番前にはホワイトボードと机、あと謎の模型が数点準備されている。
そして講師役のヴィクトワール上級魔術官の横には納村もいる。
「なんでいるんだあいつ……」
そう呟くと相模さんが「通訳ですね」と補足してくれる。
ヴィクトワール上級魔術官は日本語の勉強はしているもののまだ幼稚園児レベルと聞いている、専門性の高い話をするなら母語である大陸標準語でせざる得ないから通訳は必須か。
「今回の講習会のテーマはずばり【地球と金羊国のつなぎ方】だ」
大陸標準語でそう書きこんでくる。
「これはこっちの最新理論でちょっと難しい内容になる。できる限りかみ砕いて説明するつもりだが理解できなくても恥ずかしくない、実際理解できない奴は沢山いるしな。
明確に分からなくても気にしないでほしい」
そう前置きすると最初に出してきたのは糸を縦横無尽に張り巡らせた箱だった。
ティッシュ箱のなかに白い糸が縦横無尽に張り巡らされており、その中に一本だけ赤い糸と青い糸が張られている。
「これは基礎理論における世界と世界の関係を表した模型だ、赤い糸が金羊国を含むこの世界で青い糸が日本を含む世界、白い糸はそれ以外に存在する無数の世界だと考えてほしい」
それを見た時、俺は昔新聞で見た現代アート作家のインスタレーション作品を連想した。
確かそれは一つの大きな部屋に赤い糸を縦横無尽に張り巡らせたものだ。
「私達赤い糸の住人はこの赤い糸と接点を持つ世界を観察・つなぐことが出来る、それによって私たちはつながることのできる世界があらかじめ限定されているんだ。基本的に世界と世界を示す糸の接点は1つ、つまり地球と金羊国をつなぐ点は1か所だけになる。この考え方を箱糸理論と呼ぶ。
この糸と糸の接点を実際の地球と金羊国の地図に落とし込むと、点の中心はあの上野の廃駅跡と第一都市の教会地下になり、その点を中心とした半径62ミルの円の内部にのみ通路を新たに作り直せる」
納村が事前に準備しておいた地図をホワイトボードに張り出すと、上野を中心に半径62ミル(約100キロ)の円が引かれている。地図上では北限は宇都宮・南限は沼津辺りになる。
理屈上はこの円の中であれば金羊国に繋がる通路は作れる訳だが、実際作るとなると地理的条件や地域住民の理解などを勘案して決めることになる。
「そうして選ばれたのが成田であり、この工事現場一帯だ。次はこの工事の前に行う魔術的処置だ」
取り出したのは2枚の紙で、2枚の紙の表面には棒人形が立っている。
「この2枚の紙はぺたりと隣り合う状態にあり、前後左右にずれることがある。これはさっきの糸が風になびいたり揺れたりすると接点がほんのわずかにずれるようなイメージを持つとわかりやすいと思う。
で異世界に向かうトンネルを作ろうと考えたエイン魔術官は、とりあえず2つの世界を貫通させる穴を作ろうと考え、自分が生み出せる限界まで作り出した質量を極小の点に向かって勢いよくぶつけた」
すると先の尖ったペンで紙を突き刺した。
ペンを引き抜くと紙の中心には歪な丸が生まれる。
「この歪な穴が今使われてる通路だ、今使ってる通路って道が悪いし歩いてるだけで酔うだろ?それはこの開け方に原因があると思ってる」
通るだけで酔う道に覚えがあるスタッフも多いようでなるほどとか思い出してげんなりする者もいた。
「じゃあここから新しく綺麗な道を作ろう」




