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夕食は2階の会議室、全員が補助的な明かり(ランタンやろうそく)を傍らに置いて長机を四角く囲んでの食事となった。
「私たちはここで失礼させていただきます」
アントリとオーロフがそう告げると、飯山さんが「スープ持ってかないのー?」と尋ねた。
「スープですか、多めに作られたのは明日の朝の分などではないのですか?」
「せっかくだからこっちの人の感想も聞かせて欲しくてねー」
「……家族の分も分けていただけるとありがたいのですが」
オーロフがそう告げるとアントリも「私も」と控えめに答えた。
というかこの二人は妻子持ちだったのか。
「鍋ごと渡して2家族で分ける形でいいなら持ってっていいよー」
「ではありがたく頂戴いたします。確かスープは台所にあるあかがねの鍋でしたよね」
「そーそー、洗わなくていいから感想細かく聞いておいてくれると助かるかなあ」
「了解しました。ではここで失礼いたします」
丁重に頭を下げて会議室を出た2人に「また明日も頼みます」と俺が声をかけて二人を見送る。
「さー、冷めないうちにどーぞ」
飯山さんがこちらを向いてきたので「では、いただきます」と全員が軽く手を合わせた。
本日の夕飯は大きめの丸パンにステーキとナッツと黄色いドレッシングのかかったサラダ、そして先ほど話に出ていたスープはポタージュのようなとろみを持った赤っぽいものだ。
「肉は大森林で捕まえられた鹿肉、ドレッシングははちみつ漬けのかんきつ……味見したら柚子に近い感じだったから柚子みつドレッシングって感じかな、ポタージュは地球で言うボルシチに寄せてみたんだけどどうかなー?」
「ボルシチってこんな味でしたっけ」
柊木医師の疑問は分からないでもないが、このスープはトマトではなくビーツの入ったボルシチに近い味がするので確かにボルシチに寄せたというのも納得だ。
入っている野菜は新鮮だがまだどこか野生の味があって、この世界ではまだ品種改良が進んでいない可能性を窺わせる。
鹿肉は普通に美味しい。塩とハーブを刷り込んだ柔らかい部分を炭火で仕上げただけのシンプルな味付けだが、鹿肉自体が美味しいのでこれはこれでいける。
パンは全粒粉に近い風味のもので、それなりに柔らかくて食べやすい。
「あ、あとねー市場を見た感じだけど物価はそんなに高くないし新鮮でよかったよー。一昔前の東南アジアぐらいの感覚かなー」
確か柊木医師が購入物の記録を取っているはずなので後で確認しよう。
食材の物価感覚については、俺よりも飲食店経営をしていた飯山さんのほうが強いのでもう少し聞いてみよう。
「ほかに気づいたことは?」
「調味料が塩・ハーブ・お酢ぐらいしかないのと、農業はそこそこだけどまだあんまり畜産は進んでないって事ぐらいかなー。柊木せんせーはどーだった?」
「確かに牛や豚はあまり見なかったですね、野生の鳥や動物を目の前で絞めて販売しているのには驚きましたが」
「中国とか東南アジアの市場だとちょくちょく見るけど日本じゃあんまりないよねー」
そういえば外務省に入って最初に語学研修で飛ばされたホーチミンの市場で見た記憶がある、こちらではその方式なのか。
「なるほど、せっかくだし嘉神たちも見たものについて聞かせてくれ」




