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同封されていた真柴幸輔氏の名刺に書かれた電話番号に恐る恐る発信ボタンを押すと、少し時間が経ってから電話がつながった。
『はい、真柴です』
電話越しに聞こえたのは自分と同じくらいの年の男性の声だった。
「以前お手紙をいただいた真柴春彦と申します」
『真柴さん!お電話ありがとうございます!』
「いえいえ、こちらこそ多忙な時期に申し訳なく」
金羊国との暦のずれの関係で、金羊国の11月中旬は日本の12月下旬になる。
名刺に書いてあった連絡先が携帯のみだったので仕方ないとはいえこの時期に電話を寄こすのは申し訳ない気もする。
(まあ俺も来週以降バタバタしそうだからこのタイミングになったんだが)
たぶん来週の俺よりも忙殺されてるだろう相手に電話をかけてることに申し訳ない気もするが、嫌なら断ってほしいと願うのみである。
『いえお気になさらず!』
「あの、お手紙拝読しました。金羊国の冬至……日本だと1月の31日から長期休暇になるので、その辺りのタイミングでよろしければそちらを訪ねてみたいんです」
『来られるんですか?!』
電話越しの声には喜びと驚きが入り混じっている。
普段日本どころか地球にいない人間がわざわざ訪ねて来るのだ、驚くのも当たり前か。
「ええ、神戸はまだ訪ねた事がありませんし何より父の事を知りたいので」
『はい。あ、出来たらで良いんですが来られる日付は土日でお願いできますか?娘もお会いしてみたいと言ってたので』
「じゃあ2月3日か4日辺りで構いませんか、具体的な時間はまた追ってお電話しますので」
『分かりました。携帯の番号はいま来てる番号で大丈夫ですか?』
「ええ、この番号で登録しといてもらえば大丈夫です。詳しい話は会った時にでも」
『娘やうちの親族にも伝えておきますので』
失礼します、と言う一言で電話が切れた。
(……神戸か)
関西自体数えるほどしか行った事がないが、神戸は初めてだ。
なんとなくウェブ上の地図を開いて神戸の辺りを眺めてみる。
(手紙の住所は長田区と書いてあったからこの辺りか)
住所の辺りを指さしてぼんやりと地図を眺めてみる。
俺の知らない祖父も長田周辺で暮らしていたのだろうか?ならばなぜ父は遠く離れた群馬・太田で育つことになったのか?
その答えがそこにあるのだ。
「……ついでに有馬温泉に浸かるぐらいは大目に見てくれるだろ」
物心つく前に死に別れた父と出会うことの無かった祖父母に謎の言い訳をしながら、俺は有馬温泉のホームページを開くのであった。




