12.5-3
「今日は双海公国のお米と金羊国のお魚を日本の炊き込みご飯風にしてみました」
「米と一緒に肉や野菜を炊くことはあるが川魚を炊くのは初めてだな」
興味深そうにお茶碗に盛られた炊き込みご飯を眺め、挨拶もそこそこに口をつけると突然ヤマンラール女公爵の目が見開かれる。
「これは本当に我が国のお米なのか?!」
そう驚くのも無理はない。
このご飯は見た目は粒の長いインディカ米でありながら、ジャポニカ米に似たもちもち感や粘り気があって日本米の代用品としての役割を果たしているのだ。
俺が飯山さんのほうに視線を向けるとにこりと笑って口を開いた。
「ヤマンラール公爵、双海公国ではお米はどのように調理されますかぁ?」
「軽く洗ってからお湯で湯がいてスープをかけて食べるが……違う調理法があるのか」
「はい。正確に言うなら日本のお米と双海公国のお米は種類が異なるんですよぉ、ですのでこれは双海公国のお米を日本風に食べるために調理方法を変えて炊いたお米なんです~」
「具体的には?」
「軽く洗った後米に水をしっかり吸わせて少量のゼラチンを混ぜてます、水を吸って柔らかくなった米にゼラチンを足すことで粘着性や保水性を出してしっとりもちもちするんですよ~」
そう聞くと「ふむ」とつぶやきながら再び米を食べる。
たぶんこの米の炊き方を研究しようとか品種改良の件について考えているのだろう。
「この炊き方は地球の在外日本人がタイ米を日本米風に食べる方法を参考にしたんですよ~、調べるまでは出来てもこちらの米に合わせた調節が大変でしたねぇ」
しみじみとそう呟きながら飯山さんが炊き込みご飯に箸を伸ばす。
最初双海公国式の食べ方で食べたこともあったが普通に食べられる俺と飯山さんと全く口に合わない他メンバーで反応が分かれてしまい、全員が現地の米をそこそこ食える炊き方を目指して辿り着いたのがこの方法らしい。
「タイ米?日本のお米とタイ米と言うのは違うのか?」
「そうですねえ。双海公国のお米は粒の大きさも炊き方も炊きあがりも、日本のお米よりタイやベトナムで食べられているお米のほうが似てるでしょうね~」
「そうなると品種改良協力はその2か国に頼るべきか?いやいっそ輸出先にすると言う手も……」
ぶつぶつと思考の海におぼれていくヤマンラール女公爵に対して、とりあえず口を挟まないことにした俺は黙々と炊き込みご飯を食べ進める。
ゼラチン入り双海公国産米は代用としては充分に役割を果たしてくれている。
もぐもぐと飯を食っているとふいにある人物が口を開いた。
「ヤマンラール女公爵、食べるときは食事に集中するべきでは?」
深大寺が控えめにそう指摘すると空気が一瞬固まった。
そういうこと言っていいのか?という困惑と混乱で硬直した空気の中で、ヤマンラール女公爵が「ふはっ」と笑う。
「料理人にとっては自分の作ったものを美味しく食べてもらう事こそが仕事だものなあ、考え事しながら食べるべきではないな」




