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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
11:大使館の騒がしい夏

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11-8

挨拶を終えると留学生も関係者も皆食事やお喋りの時間へと突入した。


「クワス教育統括官、ご無沙汰してます」


軽い会釈と共に互いの近況の話などしていると「そういえば、」と手元にあった小皿を見せてきた。


「このご飯の詰まった鳥の丸焼き、とっても美味しかったです」


「うちの料理人が気合を入れて作ってくれましたから」


飯山さんが厳選して仕上げたローストチキンは他の人からも大好評だった。


日本から持ち込んだ鶏肉に大陸南部で生産されるコメと金羊国の野菜やハーブで作ったピラフを詰め込んで丸ごと焼いた一品は、いかにもパーティー料理だしお腹にも溜まる。


会場の外で新しいローストチキンを焼きあげた飯山さんが「焼きたてローストチキンでーす」と空になった大皿の上に焼きたてのローストチキンを出すと、腹を空かせた若者達が次から次へとローストチキンに手を伸ばすを楽しそうに見つめている。


他にも政経宮の人々が留学生へのお祝いとして用意したご馳走も薄味ながらなかなか美味しかったし、気合が入っているのが伝わった。


「それと木栖さんもお祝いの品をご用意頂いて本当にびっくりしましたよ」


会場で木栖が大使館名義で配ったお祝いの品のことをもう聞きつけていたのか。耳の早い事だ。


「いえ、お気に召していただけたなら良いのですが」


「万年筆と言うんでしたっけ?とても軽くて使いやすそうでみんなびっくりしてましたよ」


木栖が留学生への贈り物として選んだのは意外な事に万年筆であった。


俺は知らなかったのだが、いまどきは一本500円ほどの安価な万年筆が販売されておりそれをまとめ買いして学生達への贈り物としたのだ。


「かなり安価な物ではありますけどね」


実際木栖が渡した万年筆は半透明な黒いプラスチック製で、知らない人には100均のボールペンのようにも見えるどこかチープさのある代物だった。


「ですが万年筆はピンキリがあってかなり何万円とする高級品もゴロゴロありますからね、いずれはもっと高価な万年筆を使えるように頑張れという意味もありますから」


木栖は留学生に手渡す時、必ずその話をした。


高価な万年筆を持ち帰れるように頑張りなさいという意味を込めた万年筆を学生達はみな嬉しそうに受け取っていた。


それに万年筆はこちらの筆記用具よりも圧倒的に使いやすいし、地球で安価に買える物だから壊すのが怖いとか考えずに普段から使える。


「頑張ればもっと良い物を普段使い出来るってそれだけで希望ですからね。今度政経宮にも万年筆、導入してもらいたいですねー」


クワス教育統括官がそんなことを言い出したので「それはハルトル宰相に相談して下さい」と苦笑いするしかないのだった。

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