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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
10:大使館のあとしまつ

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120/323

10-13

議員の辞職が大きく報道されると、最後の大問題がわざわざ俺たちを呼び出してきた。


場所は青山の高価な鉄板焼き屋の個室、ご丁寧に俺たちセットだ。


「真柴君と木栖君、だね?」


温和そうな白髪の好々爺のどこか冷めた瞳が俺たちを迎え入れる。


(この人が現総理大臣か……)


妙に冷静な俺に対して緊張気味の木栖が「はい」と応える。


「君たちには随分と迷惑をかけた、この場は私の奢りだ。思う存分食べてくれたまえ」


本心から詫びる気持ちがあるように思えないのは目が笑っていないせいだろうか。


とはいえ一番安いディナーコースで5000円の店など庶民には滅多に入れるものではないし、少なくとも赤坂や築地の高級料亭に呼び出されるよりは精神的ハードルが低い。


「馳走になります」


木栖が頭を下げると同様に俺も頭を軽く下げる。


前菜のポテトサラダや浅漬けをつまみながらビール片手に異世界についての話を引き出すと、総理は興味深げに頷きながら聞いている。


その聞き上手ぶりは総理の目前で緊張気味だった木栖を酒と異世界トークでほぐしているほどだ。


とん平焼きと2杯目のハイボールが届くと、総理は俺に話を向けた。


「真柴君は木栖君とどのような仲なのかね?」


「……見た通りの仲ですよ」


「見た通りと言うのは恋仲に見せかける程度の仲、ということだね」


老獪クソ狸らしい笑みと言葉で俺たちの仲を言い当てる。


木栖の酒を飲んでいた手がぴたりと一瞬止まっており、それが正解であることを暗に伝えている。


「君たちが追い出した彼は私のお気に入りの子でね、辞任は実に残念だったよ」


お気に入りの子と言う言い回しには裏を感じるがそこは追及しまい。


「そうですか」


「国家賠償法についての入れ知恵をしたのは誰かな?」


素直にある議員の名を伝えると「そうか」と納得したように頷いた。


トイレに行ったときにでもご当人にメールしておこう。


「それにしても君たちは金羊国側からずいぶんと気に入られているようだな」


「ええ、大変良くしていただいております」


「好い人もいないのにか」


おいおい、総理もハニートラップを疑ってたのか。


「俺たちはあの国の善い人たちを好ましく思っておりますので」


砂を噛むような気持でとん平焼きをかみ砕き、ハイボールで流し込む。


木栖も同じ心地のようで困ったような眼をしていた。俺も同意見なので許してくれ。


「善良な国民に善良な首長、そんな夢のような国か?」


「この目で見た限りはおおむねそうですね」


「……体ではなく国の内面にたぶらかされたと言う訳か」


総理は面白そうに笑う。


「いつか金羊国にお越しいただければ分かりますよ、苦境に生き善良なるかの国の人に対して偽善であっても善なる人でありたいと思う気持ちも」

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