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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
10:大使館のあとしまつ

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10-9

「ガンジーでも助走つけて殴るレベルってああいうこと言うんだな」


証人喚問の後、飯島がそう呟く。


知らない言い回しだが言いたいことは分かるので「そうだな」とだけ答える。


俺はもう身も心もぼろ雑巾のような気分だし、木栖は何も喋らずに窓の外ばかり見ている。


運転してくれている折笠3尉は「疑いたくなる気持ちもわかりますけどね」とつぶやいた。


「……折笠3尉」


疲れ切った木栖が目も合わせずに名前を呼ぶと、「はい」と短い返事が運転席から飛ぶ。


「沖縄地本でのことを教えたのはお前か?」


「監査本部からの聴取で求められた情報のひとつとして答えただけです」


その答えを聞くと怒る気力もないという顔で「そうか」と答える。


事実として沖縄地本時代のことを明かしたとしてもその情報の使い方には正直いらだちがある。


「ホテルに入る前にコンビニかスーパーに寄って行こう、夕飯も欲しいしな」


「出前でいいんじゃ?」


「自分の目で選びたいんだ」




****




コンビニで購入したものを手にビジネスホテルに入り、狭い机に便箋とボールペンを置いた。


夕飯はいったん冷蔵庫に入れて後で食べよう。


便箋を1枚めくって今回書くべきことを脳内で組み立てる。


まず書くべきは今回世間を騒がせたことへの謝罪、釈明は国会で散々したので書かずに置こう。


そして1番書くべきはあの与党議員から俺に向けられたハニートラップ疑惑だ。


あのような時代錯誤も甚だしい人物は出来るだけ冷静かつ論理的に糾弾せねばならない、感情的になり過ぎないように理論を組み立てて殴り掛からねばならぬ。


気づくとメモ書きは便箋両面を10枚以上になり、大体書きたいことはまとまった。


新しい便箋に冷静かつ限りなく殺意に近い義憤を込めた文章は便箋で4枚になり、スマホで国内大手メディアのファックス番号を調べながらホテルのフロントからファックスで手紙を送りつけた。


これで少しは自分の身の内にある気持ちも落ち着いたかと思えばそうでもない。


とりあえず部屋に戻ろうとすると、部屋の前には木栖がいた。


「……お前までゲイだと疑われるような真似をして悪かった」


木栖が俺の部屋に入っての第一声は謝罪だった。


「悪いのは下種な邪推を国会のど真ん中で開けっぴろげに言い出した連中だ」


「こんな事なら指輪を外しておくべきだった」


木栖が左手の指輪に目を向ける。


異世界で偽装夫婦として動くために購入したそれを外しがたく思っていたのは、お前だけじゃない。


「なら俺も外しておくべきだったか?俺が指輪なしで出てたらそれはそれで寂しいだろ」


木栖は返答に困ったように言葉を詰まらせた。


「俺だって外すのが嫌でつけてたんだ」


「……惚れるぞ、俺が」


そんな可愛げのあるコメントを頭抱えながら言うので、俺は小さくため息をつきながら答える。


「お前もうとっくの昔から俺に惚れてるだろ」

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