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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
10:大使館のあとしまつ

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10-7

テレビで何度となく見ていた国会議事堂に自分が立つ日が来るとは思わなかった。


妙に肌触りのいい椅子に腰を下ろしながらも妙な座りの悪さにもぞもぞさせながら議長の言葉に耳を傾ける。


「木栖善泰君、代表して宣誓書を朗読してください」


静かに木栖が立ち上がるとピンと伸びた背筋や身のこなしが妙にこの場の雰囲気になじんでいる。


「宣誓書 良心に従って、真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。令和5年6月、木栖善泰」


「それでは、証人は宣誓書に署名捺印を願います」


もちろん俺も誓願書へ署名捺印を済ませるとふいに自分が悪人であったような気分になる。


……いや、あれは日本と金羊国双方のためだった。2つのカギをまとめて手渡したのは俺たちのうっかりミス、貸してしまった武器の即時返却を求めなかったのは双方のため。


ちょっと慣れない状況に気が弱ってるのかもしれない。


「これより証言を求めることになっておりますが、証人は証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度議長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときは着席のままで結構でございますが、お答えの際は起立して発言をしてください。


本日は申し合わせの時間内で国政に係る重要な問題について証人より証言を求めるのでありますから、不規則発言等、議事の進行を妨げる言動のないよう御協力をお願いいたします。


証言を求める順序はまず木栖善泰君、次に真柴春彦君とします。真柴春彦君は控室にてお待ちを願います」


議長の指示に従い一度控室に戻ることになり、ちらりと木栖のほうを見ると問題ないと微かに表情を緩めた。




****




議会の様子は控室からテレビで伺い知ることができた。


議員からの質問に淡々と答える様子を見ているとまるでプロのように見える。いや何のプロなのかは分からんが。


記憶にございませんととぼけたり衒学的言い訳を並べ立てる事なく、あくまでちょっとしたミスと過酷な状況が生み出した必然であると言い連ねていた。


そんな時、ある議員が発言台に立った。午前中に防衛省で会ったあの大臣政務官だ。


「カギの貸し出しについて外務省官僚である真柴春彦氏の指示はありましたか?」


なるほど、カギの貸し出しのミスが作為的なものである可能性に目をつけたのか……まあ実際そうなんだけどな。


「ありません。真柴氏は原則職域を守る良心的な人物であると認識しています」


「そうでしょうか。真柴氏が独断で即時返却要請を差し止めたとするならば問題のある人物のように思います、その真柴氏を任命した外務大臣は「中村君、質問に戻ってください」


外務大臣が苦虫を噛み潰す顔をしていて分かった。


今回の件を引き金に外務大臣を引きずり降ろそうとしてるのは分かるが、比較的若手の彼女がそんなことをする理由がわからない。


控室で同じくテレビを見ていた飯島のほうを見ると「彼女、現総理のお気に入りなんだよ」と告げる。


「総理と外務大臣の派閥争いか」


「そう、党内バランスで一度は大臣職に据え置いたがよっぽど馬が合わないようだから大臣を退任させるいい機会だと思ったんじゃないのか?」


現外務大臣の派閥は党内でも大きい派閥で、総理が率いる最大派閥とは対立関係にある。相手のボスを弱らせて自分の派閥をデカくすればいろいろやりやすくなる。


要するに古狸どものしょうもない縄張り争いの道具にされたわけだ。


(これだから永田町は好きになれないんだよな)


職業柄この街の人間とは色々関わってきたが、ふたを開ければ古狸の化かしあい・蹴落としあいで好きになれない。


真面目に政治やってんのかと言いたくなる事もあるので投票権をフルに生かしてしょうもない古狸が落ちるようにはしてるが、これがなかなかうまくいかない。


「大臣の任命責任云々ってなると俺も巻き込まれそうでやだなあ」


「その時はお前も部下引き連れて逃げとけ」


まったく、俺は自分の罪軽くするだけでなく永田町の足の引っ張り合いからも逃げなきゃならんのか。

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