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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
10:大使館のあとしまつ

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10-6

永田町に近づくと国会議事堂の前を埋め尽くす報道陣がシャレにならないほどに多いことを再認識して、自分の行いをこのカメラにも申し開きしなければならないのだと思い知る。


ふと左手薬指に揃いでつけていた指輪に目が行き、これを外すか否か逡巡してからそのままにしておくことにした。


木栖のほうも指輪に触れていてやはり外す意思がないことを知る。


やがて車は国会正門に止められ、マスコミの視線を浴びながら車を降りる。


「この度はお騒がせをして申し訳ありません。真実・真意はすべて国会の衆人環視の中で正々堂々と申し開きさせていただきます」


質問が飛んでくる前にきっぱりとそう言い放つと報道陣は虚を突かれたようになる。


そのまま足早に国会議事堂に入り、お偉方へ軽く会釈しながら衆議院の証人控室へと滑り込む。


「予想外と言う顔だったな」


「そうだな。マスコミ対応よりもこの後しっかり申し開きをして納得して貰う準備のほうがいまは重要だ、国民の意見は政治家やお偉方の考えを変える力はあるが最終決定権はないしな」


「聞く人が聞いたら怒られそうなセリフだな」


「実際そうだろう?世論は俺の今後をよくしてくれるだろうが処遇を決めるわけじゃない」


俺の行いを正しいと思ってくれる人が多ければ後々の苦労は減るだろうが、俺を無罪にしてくれるわけではない。


自分の今後を良くするためと考えるなら俺の処遇に決定権のあるお偉方を先に納得させた方がいい。


「……割と最低なセリフだな」


呆れと軽蔑の入りじまった一言に「お前が思ってるほど俺は善良で潔癖じゃないってだけだ」と言い返す。


人間誰だって善良で倫理的な存在でありたいが、それ故に背負う苦労は出来る限り少なく・軽くありたい。俺もしょせんその程度の倫理観でしかないのだ。


「お前は職業上国民に罵倒されてもなお献身的であらねばならないんだろうが、俺は死ぬまでそんな風になれない」


「とりあえずお前が省労力で善人ぶりたい癖に善人ぶった結果背負う罪を軽くしたいのは分かったよ」


「軽蔑してくれていいぞ、俺はしょせんその程度の人間だ」


木栖はしばらく宙を見上げて考えると「やらない善よりやる偽善、じゃないのか?」と口を開く。




「俺はお前がいたからあの決断が出来た、そしてその決断が善なればいい結果が来てくれる」




武器庫のカギをわざと2つ渡すという選択の後ろには俺がいて、それが結果的に侵攻の被害者低減・早期終結に導けたのならばそれは善だった。そして足掻かずともいい行いをすればいい結果が返ってくる。


木栖は暗にそう言いたいのだろう。


些か楽天的とも言えるが今は素直に受け取ろう。


「そのいい結果が苦労ゼロ失う物ゼロとは限らないんだがな……、とりあえずいい結果を引き寄せるための俺の悪あがきを否定はしないと受け取るぞ」


「ああ」


そうこうしているうちに証人喚問の時間が来る。

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