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柊木医師と初めて会った時もそうだったが、防衛省の一番大きな会議室に居並ぶお歴々を前にするとどうにも自分だけが場違いな気がしてしまう。
目前に居並ぶのは防衛省官僚、いわゆる背広組なので官僚という意味では同じようなものではあるがやはり場違いの感は否めない。
唯一の救いは離れた場所で同席する飯島も同じように居心地の悪さを感じてくれているという事ぐらいか。
最後に現れた大臣の後ろにいる女性は大臣政務官だ、と木栖が耳打ちで告げてくれる。
「それでははじめます。木栖善泰一佐」
「はい」
「あなたには防衛省が配備した武器を無断で金羊国へ貸し出し、戦闘に関与した疑いがあります。これは越権行為であり、私戦予備罪・私戦陰謀罪や中立命令違反罪に成りえます」
中立命令違反は昔やった気がするが、私戦予備罪・私戦陰謀罪のほうは聞いたことがあるような?という程度だ。
それは全員同じなようで追加である官僚のひとりがスライドを映し出してくれる。
「私戦予備罪・私戦陰謀罪は、外国に対して私的に戦闘行為をする目的で予備または陰謀をした者を処罰する規定です。2014年にこの罪に問われた学生グループがいますのでそれで小耳にはさんだことがある方もいるかと思います。
中立命令違反罪は、外国が交戦している際に局外中立に関する命令に違反した者を処罰する規定になります」
話を聞いてそういえばそんなだったなと思い出す。
しかしふと思い出すことがあって「ひとつ確認したいのですが、」と手を挙げる。
「今回の件において日本政府は大使館に局外中立命令を出していないはずです、ですので中立命令違反罪は違うのでは?」
少なくとも俺と木栖にそうした指示が出た覚えはない。
そもそも政府首脳陣が異世界の戦いに日本人が関与するなど想定していなかったのか、それとも職務怠慢なのか。どうであれ使えるものは使わせてもらおう。
(罪をひっ被るにしても被るもんは軽いに越したことはないしな)
俺の指摘で大臣の機嫌が悪くなる。
木栖が小声で「よく言い返せるな」と言うので「被るなら軽い方がいい」と返す。
性格の悪い考えではあるがその後の人生で前科者にされるとしてもせめてそこの罪を軽くしたいと足掻くぐらいは許されたい。
飯島も挙手をすると「外務省のほうでも局外中立命令について把握しておりません」と付け足す。
「それと木栖一佐は直接戦闘に加わった訳でもないので私戦予備罪・私戦陰謀罪は違うように思うのですが」
ナイスすぎる助け舟が飛んできた。
あくまで今回の件は木栖の越権行為を処罰するものだから、侵攻に関わった事にされるのは筋違いのように思える。
その一言でああだこうだという話し合いが始まる。
正式に出ていない命令に服従する義務はないし、あくまで俺たちはうっかり配備品の武器を貸してしまっただけなのだ。
結局その言い分は不服ながらも通ったようで、大広間にため息が響くと「今回の件は犯罪行為に当たらないとします」という一言が響いた。




