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7.転移の謎解明?

昼下がり、鳥の囀りを聞きながら、3人は村へと向かっていた。なつきはため息をつきながら緊張の面持ちだ。


「大丈夫だよ、なつき。ゴブリンなんてそんなにしょっちゅうは現れないから」

「そ、そうだといいな」


なつきは引き攣った笑顔を浮かべる。


「今日は挨拶だけだが、普段は野菜も持ってくから荷車も押していくんだ」

「そうそう、その時にゴブリンに襲われると戦いづらいんだよね」


フィーもうんうんと頷きながら、悪戯っぽくウインクしながらなつきを見る。


「もしかしてですけど、私が家に置いてもらってるのって……」

「まぁ、そういうところもあるかな。あの腕っぷしだし」

「あはは」


カズが快く、引き受けてくれている理由をようやくわかったなつきは苦笑いをするしかない。


「今日は私も身軽だから、安心してね」


フィーは相変わらず優しい。フィーはおそらく思惑などなしに付き合ってくれてるとなつきは直感した。




その時、草むらがガサガサと揺れる音が。

カズは腰から剣を抜き、フィーも背負った弓を構え、目つきも真剣なものへと変わり戦闘態勢に入った。二人の慣れた手つきの流れるような構えに、なつきはあたふたするだけだった。


「ぶぎゃゃーー」


揺れた草の陰から、恐ろしい顔をしたゴブリン2体現れた。


「俺とフィーで右のやつを抑える。なつきは左を頼む」

「わ、わかった」


短くそう言うと、なつきも急いで戦闘の準備をする。

ふうっと息を吐き、目を閉じ、気持ちを作る。


(フィーやカズと違って、私には戦う力はない。だから……)


目を開き、少し変えた声色でキョウカになりきり、なつきは高らかに叫んだ。


「この剣の前に、沈みなさい」


すると、なつきの姿はキョウカの姿へと変わり手にはレイピアが握られている。


「私なら、戦える」


なつきはレイピアを構え、目にも止まらぬ速さで接近し、超高速ので突き刺す。その姿はひどく洗練されていて、無駄のない動きだった。


「ぶぎゃぁぁぁ」


ゴブリンはあっという間に情けない断末魔をあげて、霧散して消えていった。


「そっちは?」


なつきはキョウカの役を抜く前に、フィーとカズの方を確認する。まだゴブリンがいればすぐにでも加勢に行くつもりだった。


「大丈夫、もう倒したよ」


フィーが笑顔で親指をたてる。二人は息のあった連携でゴブリンを倒していたようだ。


「そうか、なら……」


なつきはキョウカの役を抜く。ふうっと息を吐くと、元の姿に戻った。


「二人とも、すごく強いんだね……」

「やるもんでしょ。でもでも、なつきも流石だったね」

「こんだけ強いなら、用心棒としては申し分ないな」

「あはは……。二人の方こそ強いから私なんかいなくても」


なつきは頬を掻きながら、苦笑いをする。フィー達と違って自分の力ではゴブリンとなんて戦えない。今頼れるのは、どういう原理かは分からないがキョウカを演じることで得られる力だけだ。


「次ゴブリンが出たら、なつきに任せちゃおう」

「や、やめてフィー」


フィーに揶揄われて、なつきは慌てる。カズとフィーは大きな声をあげて笑った。



その後はゴブリンに会うこともなく、談笑そこそこに村へと向かっていく。


「けど、ほんと最近ゴブリン増えたよね」

「あぁ、そうだな」

「前はいなかったんですか?」

「そうだよ、この辺りにはあんまり」


フィーが頭の後ろに腕を回しながら歩いている。その表情は曇っている。


「魔王とか言うが現れ始めた頃くらいだよね、お兄ちゃん」

「そうだな……。あいつが現れてから、魔物がどこにでも現れるようになった」

「魔王?」


そんなそれこそアニメの設定のような話に、なつきは素直に素っ頓狂な疑問の声が漏れた。


「そっ、魔王。摩訶不思議な魔法で世界を自分のものにしようとしているんだって」

「王国の兵士たちもなす術なく負けちゃったんだ。魔

「そんなに強いの……?」

「そりゃあね、魔法使いなんて王国にもほとんどいないだろうし」

「じゃ、じゃあなんで世界は無事なの?」

「さぁな。王国の連中もその辺りは隠してるから、誰も知らない」


カズが険しい顔をする。理由は分からないが、なんだかカズに睨まれているような気がした。


「まぁ、だから村ではその力はあんまり見せるんじゃねぇぞ?」

「どうして?」

「村には魔法を見たことない人も多い。魔法なんか見せたら、魔王だって騒ぐやつもいるかもしれないからな」

「成る程」


なつきは納得して頷いた。世界の危機を招いている魔法使いがいるなら、魔法を見たことのない人がそんな風に考えるのは仕方がない。なつきは無闇にキョウカの力を使うのはやめようと決意した。


「フィーも、勝手になつきのこと、ベラベラ喋るなよ」

「わかってまーす」

「ほんと、わかってんだか」


カズは呆れたように首を横に振った。本当になかの良い兄妹だとなつきは感じて自然と口が弧を描いた。


「あ、見えてきた」

「あそこが?」


数メートル先に、木の柵に囲まれた小さな集落のような場所が見えてきた。


「そ、あそこが"モヨリの村"」


フィーが村の方を指差した。



(ん?)



「ねぇ、今なんて言った?」

「えっ、あそこが"モヨリの村"だよって……」


なつきは顎に手を当ててここに連れて来られた日のことを思い出す。


♢♢♢


「駅までお願いします」

「駅、どちらの?」

「最寄りのところで大丈夫です」


♢♢♢


「まさか……」


なつきは青ざめた。ギャグ漫画のようなそんな間違い(?)。信じられないが、実際に起きている現実がありえない妄想を正解とせざるを得ない。

そんななつきのことを見て、カズとフィーは、不思議そうな表情で顔を見合わせるのだった。

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