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2.キョウカ

ゴブリン達も、目の前で起きた突然の変化に驚いているのか足を止めて近づいてこない。

なつきは鏡に映るキョウカな顔をまだ信じられない。髪も腰まで伸びて、色も薄緑色に。身長もなんなら少しだけ伸びている気がする。


「どういうこと、私、キョウカになっちゃったってこと?」


なつきは驚きのあまり、キョウカを演じることをやめてしまった。すると、再び光に包まれて元の姿に戻ってしまった。


「へっ?戻っちゃった」


再び丸腰のなつきに戻ったのを見るや、ゴブリンは余裕の笑みを浮かべ、ナタを振り上げながら距離を詰めてくる。

なつきはまた焦り、危機を感じる。


「やばい、どうしよう。さっきまでみたいにキョウカになってたら戦えるのに」


ーキョウカになってたら?


さっき一瞬だけキョウカの姿になっていたのは事実だ。その時と今、違うことがあるとすればキョウカを演じていたかどうかだ。

自分を奮い立たせるためにキョウカを演じていた。もしも、キョウカを演じるとその力が使えるとしたら?

なつきは恐怖を押し殺し、僅かな可能性にかけてキョウカを演じる。


「ゴブリンなんかに、私は負けない。全員纏めて薙ぎ払ってやる。この流麗の騎士キョウカが!」


キョウカを演じる。すると、再びなつきはキョウカの姿に変わった。


「やっぱり。キョウカを演じている間はキョウカになれるんだ」


キョウカを崩さないまま現状を整理し、独り言のように呟く。そして、腰からレイピアを抜きゴブリン達へと向ける。


「覚悟しなさい!」


体に力が溢れてる。それに、もう怖くもない。なぜなら、キョウカがこんなゴブリンごときに負けることはないと分かっているから。


「行くよ!」


さっきまでの情けない速さとは違う、まるで風が吹くような速度でゴブリン達へと迫る。


「私の剣技に沈め」


そのままの勢いでレイピアで鋭く何度も突く。その剣筋は目に捉えることはできないほど洗練されている。


(体が軽い。この姿なら私はキョウカと同じように戦えるんだ)


洗練された騎士の動きが、ゴブリンの手に負えるはずもなく次々に倒されていく。


「悪いけど、これで……止め」


レイピアを後ろに引き、全身に力を込めて一気に前へと重心をしながら、勢いよくレイピアで突く。


「"一閃突き"」


それは、何度もキョウカの危機を救った必殺技、レイピアから青白い光を放ちながら、ゴブリンを吹き飛ばす。


「ぶぎやあぁぁぁ」


ゴブリンは断末魔と共に吹き飛び、消え去っていった。


「肩慣らしにもらならない相手だったね」


なつきは、レイピアをくるりと回しながら腰へと戻しす。

短く息を吐くと、なつきの姿に戻ったのだった。


「はぁ、助かった」


なつきはなんとか危機を脱しようやく少し安心して、地面に腰を下ろした。


「本当に、キョウカはいつも私を助けてくれるんだな」


なつきはしみじみとそう呟いた。まだ手にはレイピアの感覚が少し残っている。確かにキョウカとして戦っていたのだ。


「でも、ゴブリンに不思議な力。ここってやっぱり異世界的なところだよね、多分」


冷静に考えられるようになったなつきは、辺りを見回しながら呟いた。普通に日本にはゴブリンなんていない、演じたからと言ってアニメのキャラになることなんてできやしない。

なつきは、自分が異世界に迷い込んだ現実にため息をついた。


「転生、じゃないよねきっと。うん、きっとそう。異世界に転移的なあれだよ」


なつきはそう言い聞かせて立ち上がった。


「そうとわかれば帰る方法探さないとね。またゴブリンに出くわしてもさっきみたいに……キョウカの……力を……使え……ば……」


なつきの視界はぐらりと揺れてそのままその場で力無く倒れ、意識を失ってしまった。



「ねぇ、お兄ちゃん。さっきの見た?」

「あぁ。危ないと思って助けに来てみたけど、驚いたな」


倒れたなつきの側に、少年と少女、二つの影が立っていた。


「どうするの、倒れちゃってるみたいだけど?」

「とりあえず……家に連れて帰るとするか」


少年はなつきを背中に背負い歩き出す。少女は横に置かれていたなつきの鞄を持ってその後ろをついて行くのだった。

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