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9.いざ、ゴブリン退治

夕飯を終えて、なつきは食器を洗っていた。だが、水は出しっぱなしで一つの皿に視点を固定したまま止まっている。


「どうしたの、なつき?」


フィーが心配そうに顔を横から覗かせる。


「帰ってきてから、ずっと顔が暗いよ」

「あはは……。いや、気になっちゃって……食事処を閉まるかもって話」

「私もびっくりした。そんなにゴブリンが増えてたなんて。おばちゃん、大丈夫かな」


フィーも表情を曇らせた。


「なつきも心配なんだね。私もだよ」

「うん。初めて行ったけどすっごくいい場所だったし、人も良さそうで何より……」


食器を洗っていた手を止め、昼間のことを思い出していた。


「みんな楽しそうに笑っていた」


食事処に集まっていた村の人たちは全員が楽しそうに笑っていた。まるで家族のように。魔物が増えていて大変なはずなのに、あそこにいるだ間は村の人たちはそんなことも忘れているようだった。


「だよね……。だから私も好きなんだ」


フィーも柔らかく笑う。フィーも野菜を持っていく時にたくさんあの食事処にはお世話になっていた。あそこが店を閉めると言っていた時のおばちゃんの表情に、胸を痛めていた。


「ねぇ、ゴブリンってたくさんいるのかな」

「そりゃ、魚が取れなくなるくらいだから多分」

「そっか……」


ポツリと呟くなつきの表情は決意に満ちていた。フィーはその決意を即座に感じ取った。


「ねぇ、まさかゴブリンの退治に行こうなんて考えてないよね」

「………」

「ダメダメ、絶対ダメ。いくら、なつきが強いからって危険すぎるよ」


フィーは必死に止める。ゴブリンは恐ろしい魔物だ。なつきが強いことは理解していても、たくさんいるゴブリン相手では流石に部が悪い。


「ゴブリンにはそれなりに賢いやつもいて、連携したりするんだよ」

「そうかもしれないけど、誰かがやらないと」

「それは、なつきの役目じゃないよ!」


なつきは、フィーの言っていることは最もだと思っていた。騎士団でもなんでもない自分がやることじゃない。むしろ、帰る方法を見つけるまで大人しくしているべきなのかもしれない。


「キョウカならきっとそう言うから……」


キョウカの言葉がずっと頭から離れない。キョウカを演じることで力を得られる。そのせいか、自分自身がキョウカになったようにキョウカならどう考えるかを真っ先に考えてしまう。


「……なつきが行くんだったら私も行く」

「へっ?」


フィーからの予想外の言葉になつきは驚いた。


「私だって戦えるし、足は引っ張らないよ」

「いや、でも……」

「私だって、村のみんなを助けたいもん」


フィーは力強く言い放った。村の人たちに対する思いでいえばなつきよりも強い。ぎゅっと手に持ったタオルを握る強さから、フィーの覚悟はひしひしと伝わった。


「おい、二人で勝手に盛り上がってんだよ」


後ろから腕を組み、睨みつけるカズが立っていた。


「聞いた話だと、ゴブリンの数はざっと30体くらいいるらしいぞ。二人でどうこうできる相手じゃない」

「でも、なつきはめちゃくちゃ強いんだよ。私がサポートしたら」

「向こうはおそらく根城にしてる。あっちの方が地形の理解でも有利を取ってる。フィー一人のサポートじゃどうしようもない」


カズの言う正論に二人は何も言い返せなかった。勢いと感情だけでは解決できない。なつきもといキョウカが強かろうと、数の暴力に押されかねない。


「……それでも行きたい」


なつきに2人の視線が集まる。なつきは理屈ではわかっていても、助けたいという気持ちの方が上回っていた。フィーはなつきの言葉ににっと笑った。


「私も、気持ちは変わらない」


二人の変わらない姿勢に、カズも呆れたように、大きな溜め息をついた。


「止めても意味なさそうだな」


カズもついに止めることを諦める。止めても無駄ならば、せめて成功率をあげることに頭を切り替えた。

カズはテーブルの上に丸まった紙を伸ばして広げた。


「あそこらへんの地図だ。さっき村でもらってきた」

「えっ?」


ゴブリンが棲みついている辺りにばつ印がついた地図。高低差や水辺の位置などの情報が見てとることができる。用意周到なカズに感心した。が、同時に別の考えも浮かび2人はニヤニヤと笑った。


「こんなのわざわざ用意してきてくれたってことは、お兄ちゃんも助けに行こうとしてたってことでしょ」

「まぁ、せっかく強い用心棒がいるんだ。助けたら、うちの野菜の評判も上がると思ったからな」

「素直じゃないんだから」


フィーは肩をすくめてウインクする。


「ほら、さっさと作戦を考えるぞ」

「なつきも一緒に」

「うん」


なつきは頷き、地図を見ながら作戦を考える。

3人の動きを最大限に活かせるフォーメーションをあぁでもないこうでもないと何パターンも考えては却下しを繰り返していた。


「なつきがうちの最大戦力だ、色々と頼むぞ」

「……任せて。絶対にゴブリン達を退治してやるんだから」


なつきはぎゅっと拳を強く握りしめた。


「よーし、じゃあ3人で村のみんなを助けるよ」


手のひらを地図の上に出して、重なるように目で合図をするフィー。なつきはすぐに手のひらを重ねたが、カズは照れているのか重ねない。


「ほら、輪を乱さない」

「わかったよ……」


フィーに促され、仕方なく手を重ねるカズ。微笑ましい兄妹のやり取りに、なつきに笑みが浮かぶ。


「よーし、絶対勝つよー」

「おー!」


3人は、重ねた手のひらを上へと掲げてゴブリン退治への決意を固めるのだった。


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