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クラゲと猫の探偵事務所

作者: 昼月キオリ
掲載日:2025/10/22



〜紹介〜


<探偵事務所・サイレント>

新宿のバーの地下にある事務所。


<ミシェル>

普段はカフェ。

新月の日だけバーに変わる。

ホームズ君達のカモフラージュの為でもある。


(あずさ)(25)

新月の日だけミシェルでバーを経営している。

猫やクラゲ達のお世話係。


盃蕪(さかづきかぶ)(42)

依頼主。

誘拐された(なつ)の父親。


盃夏(さかづきなつ)(8)

誘拐された女の子。


<ホームズ君>

自称野良猫のアメリカンショートヘア。

オス。

本名はアッシュ。

自由きままな野良猫だと思っているが梓がいないと生きていけないことに自覚がない。

探偵事務所のリーダーだと思っている。

探偵事務所の中で一番体が大きい。


<ワトソン君>

バーの地下室でのんびり暮らすクラゲ。

元々海にいたが梓に頼んで水槽で飼われることになった。

本名はブルームーン。

水槽の中で一番大きい。


<ちび猫仲間>

ダイヤ。メス。茶トラ猫。

ハート。メス。白猫。

スペード。オス。ハチワレ猫。

クローバー。オス。ボンベイ猫。


<ちびクラゲ仲間>

マリー。赤色のクラゲ。

サン。オレンジ色のクラゲ。

ギムレット。透明のクラゲ。

バイオレット。紫色のクラゲ。








一話 真夜中2時の新宿。


俺の名前はアッシュ。

皆んなからはホームズ君って呼ばれているぜ。

見ての通りただのアメリカンショートヘアの猫だ。


他の猫と違うのは探偵事務所を持っている、ということくらいだろう。

ホームズと言えばイケてるメンズに茶色のキャスケットにタバコだろって?野暮なこと言いなさんな。


この街でホームズと言えば猫。

頭にクラゲが乗り、小枝を咥えた姿こそ探偵に相応しい姿なのさ。

新月だけできる特別な魔法なんだ。凄いだろう?


俺より体の小さなちび猫4匹と水槽で飼われているクラゲ5匹も同じ探偵事務所の仲間だ。

そのうちの1匹は俺の相棒、ブルームーン。

ここではワトソン君って呼ばれてるぜ。


ちび猫達は俺よりも一回り体が小さい。

しかも、体の硬い俺と違って皆んなは体が柔らかいからほんの僅かな隙間でもすすいのすいよ。


だが、ちび猫達は調査はできるが俺と違って非力で戦えないからな。

いざとなったら俺が守ってやらなきゃいけないんだ。

それがリーダーの勤めってもんよ。





新月の夜。新宿。

そんな俺達の元に依頼主が現れた。


盃「大変です!娘が、娘が誘拐されてしまいました!!」

梓「警察には?」


梓は極めて冷静に対応する。

こういう場合、こちらも動揺してしまうと相手はもっと不安になってしまうからだ。


盃「もちろん言いました!」


梓は男性が嘘を言っていないか目を見て確認すると声を掛けた。


梓「お名前は?」

盃「盃蕪と言います」

梓「私は梓です、盃さん、地下室に案内します」

盃「は、はい」



バーの奥にある本棚をズラすと入り口がポッカリと顔を出した。

薄暗い空間の先には階段があり、降りていくと突き当たりに扉が見える。

扉の横にスタンド式の照明が置いてある為、足元は明るい。

扉には英語でサイレントと書かれている。


梓が茶色とベージュの中間のような色をした木製の扉をギイィッと開ける。

すると、部屋の右側には大きな水槽があり、左側にはソファもある。

片方のソファの上では猫達がくつろいでいた。

ダークブラウンの二人掛けのソファが対面して二つと

ソファと同じ色のローテーブルが置いてある。

シンプルな作りをしている。


壁にはレトロな時計が掛かっている。

音は無音のようだ。


少し離れた場所で北欧系の赤い絨毯の上に、ツンツン尖った目をしたアメリカンショートヘアが座っていた。


盃「ね、猫・・・?」

梓「どうぞ、猫達が座っているソファと反対のソファに座って下さい」

盃「は、はい、失礼します・・・」


盃がソファに座る。

目の前には子猫が4匹座ってこちらをじっと見ている。

 

梓「この子達が事件を解決してくれますから」


梓は立ったまま盃に話しかける。


盃「え?いや、あの、あなたが探偵じゃないんですか?・・・凄腕の探偵がいるって話を聞いてここに来たんですけど」

梓「私はこの子達のお世話係です、

それ以外はこの子達のサポートを"私が"させてもらってます」


梓がニコッと笑う。


盃は思った。

終わった。やはり警察に任せるしかない、と。






二話 新月の魔法


梓「では後は猫達の指示に従って下さい、

何かあったらバーまで来て下さいね」


盃「そ、そんな・・・」


何という丸投げ感。


梓が部屋から出て行った後、

あからさまに項垂れている盃に先程まであくびをしながら伸びをしていたホームズが話しかける。


ホームズ「そんな辛気臭い顔をするな、俺達がいれば必ず事件は解決する」

盃「え、猫が今喋った!?」

ホームズ「そんなことより、娘が誘拐されたんだろ?」

盃「何でそれを知ってるんですか?」

ホームズ「バーから声が聞こえてたからな」

盃「す、凄い・・・」


さすが猫だ。耳が良い。


ホームズ「そんなことより、娘を助けたいのか、助けたくないのか、どっちなんだ?」

盃「もちろん助けたいです!警察には話しましたが居ても立っても居られなくて」

ホームズ「それでここに来たと、良い判断だ」

盃「は、はぁ・・・」

ホームズ「盃と言ったな、俺の名前はアッシュ、ここではホームズって呼ばれている」


えっへんと踏ん反り返る猫に盃は更に腰が低くなる。

 

盃「ホームズさん・・・」

ホームズ「ところで、娘の写真はないのか?顔が分からんと助けようがない」

盃「これが娘の写真です」


盃がバッグから写真を一枚取り出し、ホームズに見せた。


ホームズ「ふむ、名前は?」

盃「夏って言います」

ホームズ「なつだな」

盃「それで、どうやって娘を助けに?」

ホームズ「まぁ、少し待て」


ホームズが写真を持ったまま水槽の近くまで歩いていく。

器用だな。

盃はホームズの行動を座って見ていた。


盃「あ、あのー、ホームズさん?」


ホームズが写真を水槽に向かって見せながら話しかける。


ホームズ「ワトソン君、どうかな?」

ワトソン「ビビッときたよ!なつちゃん、浅草のビルにいるよ」


盃「え?え?クラゲまで喋るんですか!?」

ホームズ「ああ、こいつは俺の相棒のブルームーンって言うんだ、ここではワトソン君って呼ばれてる」

盃「へ、へぇ・・・他にも違う色のクラゲが4匹いますね」

ホームズ「ああ」


その時、ホームズが水槽の蓋をずらした。

すると水槽の中のクラゲがぴょんっとホームズの頭の上に乗った。

他のクラゲ達もちび猫達の頭の上に次々に乗っていく。

ちび猫達の頭の上に乗ったクラゲはブルームーンよりも二回りほど小さい。


ダイヤの頭の上にサン、

ハートの頭の上にマリー、

スペードの頭の上にギムレット、

クローバーの頭の上にバイオレットが乗った。


盃「!?」


え、何これどういう状態!?


ホームズ「じゃあ、行って来る」


盃「俺は!?」


ホームズ「あんたはここで待機だ、安心しろ、俺達がいれば必ず事件は解決する」


そう言ってホームズはちび猫達を連れてバーの外へ出た。

梓と盃はホームズ達を見送る係だ。


盃「ところで、何で移動を・・・まさか歩いていくんですか?」

ホームズ「そんな七面倒くさいことするわけないだろう」


少しして梓が何やらガチャガチャと音がする袋を持って来た。

梓「はい、ホームズ君達」

ホームズ「おっ、さんきゅー梓!」


中身は車のおもちゃだ。

梓がバーに飾ってあった車のおもちゃを持って来たのだ。

それぞれがそのおもちゃの車に乗り込む。

猫達の頭の上には依然としてクラゲが乗っかっている。

何とも形容し難い光景だ。


盃「ちょ、えぇ!?」


梓「行ってらっしゃい」


ホームズが枝を口に咥えると音をブオォンと立ててあっという間に走って行ってしまった。

混雑している真夜中の新宿の道路も小さな車のおもちゃならすすいのすいっと移動可能だ。


梓「ふふ、あれ、私の彼が改造したんですよ、凄いでしょう?」


盃「は、ははは・・・」


夢だ。これはきっと夢なんだ・・・。

盃はそう言い聞かせるのだった。






三話 事件解決


盃「う、ん・・・夢だ、これはきっと夢なんだ・・・」


ホームズ「夢じゃない」


ずいっ。


盃「うわぁ!!出たぁ!!」


ソファで横になって眠ってしまっていた盃が大声で飛び起きた。

目を開けた瞬間、猫の目に睨まれたら当然だ。

盃は飛び起きた衝撃で床に転げ落ちて頭を抱えている。


盃「いたた・・・」

ホームズ「全く、失礼な奴だな」


夏「パパ、大丈夫?」


と、その瞬間可愛いらしい女の子の声が聞こえた。


盃「夏?夏なのか?怪我はないか?何かされてないか?」


盃が夏を抱き締める。


夏「うん、大丈夫だよ、ホームズ君達が助けに来てくれたから」


盃「ありがとうございます、本当にありがとうございます」


ホームズ「警察より先にあんたに会わせなきゃと思ってな、警察にもちゃんと言いに行けよ」


盃「は、はい、あの、でも一体どうやって娘を見つけ出せたんですか?」


ホームズ「簡単なことさ、ワトソン君達がテレパシーでなつの居場所を特定する、

後は俺とちび猫達の出番だ、

ちび猫達に犯人の数、居場所を調査して来てもらう。


俺が葉っぱを吹く。ピイィ‼︎と高い音が響くと召集の合図だ。


そして一人一人捕まえて一緒に紐で縛る。

当然、倒すのは俺の役目だ。

後はなつの居場所まで行って残ってる犯人を捕まえる。」


盃「娘はどうやってここへ?」

ホームズ「タクシーで一緒に帰って来た」

盃「な、なんと・・・」


真夜中のタクシーに小さな女の子と頭の上にクラゲが乗った猫が5匹。更におもちゃの車5台。

何というファンタジックな空間・・・。

タクシーの運転手は一体どんな気持ちで乗せたんだろう。


梓「ね!凄いでしょう?」

盃「は、はい、まさか本当に猫とクラゲが解決してしまうなんて・・・」


夏「パパ、帰ろう」

盃「ああ」


夏が盃の手を取る。その手を握り返し、微笑んだ。


盃「まぁ、そうだな、細かいことはいいか、

なつが無事に戻って来たんだからな」


ホームズ「じゃあな、なつ」


夏「うん!ホームズ君も皆んなもありがとう!」


夏が元気に手を振るとちび猫達がにゃあと鳴き、

水槽の中のクラゲ達が手足をゆらゆらと動かした。


盃は会釈をすると夏と一緒に帰って行った。




バーの片付けが終わり、梓がん〜っと伸びをする。

新宿は夜が明けようとしていた。

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