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光の勇者と闇の魔王②

遡ること数日前。



『ルマン王国自慢の勇者様ご一行が、ティアの国に攻めてくるらしいぞ。』



『うぅん?勇者様って、あの、光の加護の?不敵なアレクサンダー様?』



念声獣と呼ばれる魔獣が、チェスター姉様の声で話し出す。


丸々した毛玉のようにしか見えない獣から、低くて艶やかな姉様の声がするのは、いつ見ても変な光景だ。


『不敵なアレクサンダーじゃなくて、無敵のアレクサンダー、な。間違えてやるなよ。こんなダサい二つ名が付いてるだけで赤面ものなのに、不敵なアレクサンダーだと用も無く自信満々に笑っている、ヤバい奴みたいになるぞ。恥の上塗りだ。』



『え!?そうなの?!・・ごめんなさい、私知らなかったから・・・。』


他国の英雄を、危うく不審人物にしてしまうところだった。


申し訳なく思っていると、チェスター姉様は豪快に笑い出した。


『まあ、良いんじゃないのか。実際、始終不敵な笑みを浮かべた、随分傲慢な男だと聞いているぞ。あくまでも噂だけどな!』


『そうなんだ。確か、勇者の中でも凄く強いんだよね?アレクサンダー様って。』


そうだなあ、と姉様が呟く。


『私は戦ったことはないが、大陸の勇者の中ではまあ強いんじゃないのか。魔神カルケルの迷宮の踏破を成し遂げたり、大魔獣を討ち取ったり、前人未到の偉業を幾つも成し遂げた奇跡の男らしいぞ?』


チェスター姉様はふっと笑った。


『どうだ?私の可愛い天使のティアの、婿にしてやろうか?』


『えぇえ!絶っっっっ対に嫌!!だって、ごめんけど、勇者様って、ちょっと・・陽キャばっかりなんだもん!私、陽キャの人は・・・・!』



人となりも知らないのにこんなことを言うのは良くないって解ってる。


だけど、今まで私が見てきた光属性の勇者様達は、大体みんなが同じ感じなのだ。




『キラキラーってしてて、明るすぎて、元気すぎて、・・うるさすぎて、ちょっと・・・。』


地味で暗くて、静かな場所と一人が好きな私には、ちょーっと、合わないと思う。


というか、合わない。



私の婿を見つけるのを趣味としているチェスター姉様は、世界中を遠征する中で見つけた素敵な男性(姉様調べ)に、


「妹の旦那にならないか?」


と声をかけては城に連れ帰ってくるのが日常だ。


皆さん、いい人だったり素敵な人なのは解っているんだけど、私は他人といると緊張して喋れなくなってしまう。


なので、いつも丁重にお断りして、姉様の国で働いて貰うことにしているのだ。



ましてや勇者様なんて、絶対に喋れない。

絶対に気疲れしちゃう。



それに、そもそも、勇者様みたいなキラキラした人が、こんな地味な私を好きになることなんてあるわけが無いし。


何かを考えている私を見透かしたように、チェスター姉様は力を籠めて断言した。


『ティアの可愛さは無限大だ!世界で一番可愛い!私の天使!』


『・・・・はいはいはい。』


そんなこと思ってるのはチェスター姉様くらいだと思う・・・。




しっとりとした中に派手な美しさを持つ、薔薇の花のようなテネブライ=ノクティス一族は、みんなそれぞれに整った外見をしている。


チェスター姉様だってそうだ。


成熟した赤ワインのようなバーガンディの髪色に、透明なスカイグレイの瞳が印象的な、いかにも魔王といった美しい人だ。



けど私は、お世辞にも綺麗とは言い難い。



一族で一番幼い見た目は背が低いから。


その上、畑の土のような焦げ茶色の髪色と、同じく焦げ茶色の瞳。


目も鼻も口も小さくて、派手な美人とは正反対なのだ。


『そもそも私、結婚したいとも思ってないの!本当に、出会いとかいらないからね!?』


『はいはい、つまらん。まあでも解ったよ。ティアにしつこくすると、ティオがうるさいんだ。あいつは本当に、ティアの事となると年々喧しくなるな。』


ティオというのは、三つ年上の私の兄だ。


勿論魔王で、お嫁さんである義姉と一緒にデリシア魔国を治めている。



『お前が勇者ごときにやられるとは思ってないが、まあともかく、漸くは身辺が煩くなるだろう。今回も適当に遊んでやれ。』


『・・・うぅん、そんな、チェスター姉様みたいにはいかないと思うけど・・。でも、私なりに頑張ってみる!』




と、念声獣に決意を送ったのが、三日前。



噂の勇者様は、私が思っていたよりもずっと早くテンペル魔国へと到着されたようだった。




タンクについての見識がほぼなく、色々調べるうちにタンクって大変な仕事だなあと思いました。


敵の目線の誘導とかもあるらしいよ。


味方の動線作りとか。


めっちゃマルチタスクやん。俺やったら盾構えて固まるわ。

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