光の勇者と闇の魔王①
「お前がいると心が安らぐ。体が軽くなって、辛いことも嫌なことも全部感じなくなるんだ。一目惚れだ。だから、魔王テンペランティア。どうか、俺と結婚してくれ。」
目の前には、赤銅色のサラサラストレートに、見上げる程の長身の男性。
程よく引き締まった体は、良く鍛えていると一目で解る。
甘い言葉を囁いた薄い唇と、すっと通った鼻筋に、意思の強そうなブルーグリーンの瞳が宝石のように煌めいている。
端正な顔立ちの美青年が、熱っぽい瞳で私を見つめてくる。
一方の私と言えば、掘り返した畑の土のような焦げ茶色の髪に焦げ茶色の瞳。
お世辞にも綺麗とは言い難い、魔王と呼ばれるには余りにも地味な容姿。
こんなイケメンに求愛されるなんて、それだけでも信じられないのに・・・・。
でも、何より・・何よりも・・・・・!
「・・・・・貴方っ、貴方って、勇者ですよねぇ!?」
「え?うん。ルマン王国の勇者、アレクサンダー・ウェントスだけど。何か問題あるか?」
だけど、じゃないよぉ!
魔王と勇者とか!!!!
問題しか無いに!決まってるでしょうー!?
私、テンペランティア・テネブライ=ノクティスは、魔王一族であるテネブライ=ノクティス一族の、14番目の魔王として生まれました。
祖父も祖母も、叔父も伯母も、父親も母親も姉も兄達も姉達も妹も従兄弟も姪っ子も甥っ子も、みーんな魔王。
テネブライ=ノクティス一族に生まれた者には、生まれつき、それぞれ特殊な能力が備わっています。
人間の領分を大きく外れた桁違いの能力は、ときの権力者達にとっての唯一の脅威でした。
と、言うわけで、基本的に争いを好まないテネブライ=ノクティス一族は、全員揃って人類の未踏の地や荒廃した地、瘴気に溢れた土地で、自分達だけの国を作って平和に暮らしているのです。
が。
それを良く思わない権力者は沢山いるみたいで・・・。
我が魔国テンペルも、度々、隣国のルマン王国に侵略されているのです。
勿論、若輩ながらも国王を務めている身の上として、その都度、責任もって私が対応しています。
これまでも、ルマンの軍団には何度も国へお帰りして貰っていたのですが。
焦れたルマン国王は、遂に、最後の切り札を使うことにしたようです。
それが、目の前のこの方。
ルマン王国最大の英雄にして、人類の希望。勇者、アレクサンダー・ウィントス様率いる勇者ご一行を、遂に我がテンペル魔国へと差し向けたのでした。
転生占いをしたら、家族全員魔王でした。
親兄弟みんな魔王で笑いました。
陽キャに良く構われる魔王属性の妹をモデルに書きました。妹は天使です。