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第四話 先輩の大切な人?

「おいおい俺様の邪魔するなよ。」

「黙れ…僕は、僕より弱い奴の命令は聞かない。」


これ、夢?


「俺様に殺されたいのか?」

「ふん…いきがってられるのも、今のうちだよ…次は斬り殺す。」


それとも、リアル?


「っはははは!俺様を殺す?なぁにバッカなこと言ってんの?」

「…。」


あれ?これ闘ってるの先輩じゃないですか?なんで、先輩がわたしの夢にまで出てくるんですか。


「まぁ、君のせいで…は死んだんだけどね!!」

「…準備は、いいかい?」


トンファーが舞う。

それは、血しぶきをあげながら。

敵はもう倒したのに、なんでそんなに苦しそうなの?


「お前はけっきょく、自分しか護れないんだ。」

「ふぅん。じゃぁ、君に僕のなにがわかるのか、教えてもらえるかな…。」


雲雀先輩、だよね。

なんで、こんなに苦しそうなの?いつもの勢いはどこ行ったの?


『先輩!』

思いっきり叫んだつもりだった。でも、声が出ない。

そうだよね、夢ってだいたいそうだよね。


「僕は、永遠に一人で生きていく。誰とも群れない。群れる奴に、用は無い。」


『違うっ…先輩!こっち見て!!』

気づかない。

黒い夜叉が、血色に染まっていく。

だめ、これ以上そっちに行ったら、先輩が壊れるっ…!!


「こっち見ろってんだぁ!!」

手の近くにあった教科書を振り上げながら、目を覚ました。

え、ちょっと待て。わたしはなぜ教科書を持っている。

「宇都宮、授業中の居眠りにしては態度が荒いな…。」

目の前には、先生。なんてベタな展開なんでしょう。

「えっと、すみません!」

「廊下!」

「はいぃ!」

わたしは机の中から携帯をそっと取り出してポケットに忍ばせた。

そのまま廊下へGO!


「はぁ〜…さっきの夢、なんだったのよ。」

髪を掻きながらわたしは窓の外を見た。

「なんか、変なの…」

携帯を取り出して、時刻を確認する。

やばい。もう充電切れそうだ。

「没収。」

「へ!?あっ?」

目の前にいたのは、なんと雲雀先輩。

「か、返してください。」

「なに言ってるの。」

ぅあ…。

そうだ、忘れてた。

この人、仮にも生徒会長だった…!!

この学校のトップなんだ!


「あっはーなんでもないでーす。」

「なめてんの?」

「…いえ……すみませんでした。」


ここは素直に頭下げておこう。

じゃないと、また先輩がキレちゃう。


「反省文放課後までに100枚。」

「ひゃっ…!?なんでそんなに多いんですか!?」

「どっちが悪いのか、わかってる?」

あぁ、やっぱ勝ち目ねぇー!

「間に合わなかったら、斬り殺す。」

そしておっかねぇ!


 ここでわたしはちょっとだけ夢のことを思い出した。

もし先輩があんな感じで人を簡単に殺せるような人なら、わたしは先輩を命懸けで止めよう。

彼が後悔しないように。彼が壊れる前に。


「…でもさ、やっぱ100枚とか無理…。」

授業が終わり、教室に戻ってから一時間。未だに反省文は13枚。

ていうか、頭爆発寸前?わたしを殺す気?

「宇都宮さん。」

うなだれていると、真上から男の人の声が聞こえた。

「ん?なに?」

見上げると、そこにいたのは、見たこともない人。

目の色は、カラコンでも使っているのか、緑色だ。

「生徒会長は、今どこにいる?」

「え…?」

びっくりした。

いきなり、その男の人はわたしの腕を強く掴んだんだ。


「なに、あなた。」

「雲雀恭平はどこにいる。」

緑の目が、わたしを睨みつける。

緑色の目…?まさかこいつ、ディアナか!?

「彼に何の用…?」

「ちょっとね。それに君、今から雲雀恭平に会いに行くところだろ?」

ギュッと、わたしの腕を掴んでいる手に、力が入った。

そうね、でもわたしそこまで馬鹿じゃないからわかった。

あなた、ディアナ(敵)よね。確実に。

「あなたを、先輩のところへ連れていくわけにはいきません。」

わたしは、逆にその人の腕を掴む。あぁ、なんでこんなことしちゃったんだろう。

「へぇ、俺様に喧嘩売ってんだな?」

「違います。引き止めてるだけです。」

わたし、どうしてこんなに先輩のことばっかり考えてる。


「俺様が誰だか知ってんのか?小娘。」


へ。


「俺様こそ、マフィア最強の男、『キラ』だ。」


―グイッ


え?


「残念だが、俺様会ったことが、お前の死因だ。」

「なっ…」

わたしが目を大きくしていると、キラは腰から一丁の銃を取り出した。

ご丁寧に、サイレンサー付きときた。

もしかして、わたしかなりピンチ!?


「サヨナラ。」


「―…!!」

本気でヤバい。そう思って目を瞑ったときだった。


「ねぇ、そこで何やってるの。」


涙が溢れかけていた。なのに、どんだけタイミングいいの?

ねぇ、先輩……!

「ふぅん。この子は雲雀のお気に入りなのか。」

「何を言ってるかわからないけど、君は僕に用があるんじゃないの。」

先輩はトンファーを取り出して、姿勢を低くしている。

目が、本気で殺ろうとしていることを感じさせる。その目が怖くて、わたしは思わず震えた。

「あぁ…そうだ。お前が俺様に傷をつけてから、俺は復讐のことしか考えてなかった。」

「へぇ…」

先輩が笑ってる。

不気味だ…。こんなに笑顔が似合わない人っていたんだ。


「俺様の願いが、やっと叶うぜ…」

近くで見るキラは、狂っていた。

勝つことだけに執着し、おぞましい憎悪に包まれている。

「は、放してっ…!」

キラから腕を振り払って、距離をとる。

銃なんか向けられたら、安心して背中を見せることもできない。

「春、邪魔だよ…」

「す、すみません!」

雲雀先輩がわたしを見ている。その目には、光がやどってる。

前、わたしに襲いかかってきた時みたいな、殺気のこもった瞳。


先輩のあの目…。

もしかして、あの『キラ』は先輩の大切な人を殺した人…?


「君には、色々と借りがあるからね…。借りは返すよ。」

「何回やっても、結果は変わらないけどな。」

銃とトンファー。圧倒的にキラのほうが有利…。

先輩、一体どうする気よ。

「春、そこで何やってんの。もう用事はないよ。」

「へっ?」

「小娘はさっさと行ったほうが身のためだぜ。」

二人の視線がわたしに向けられる。

「え、あ?わたしお邪魔ですか?そうっすよね。」

えへへと笑いながら教室を出る。

って、ちょっと待ってよ。

よく考えて、宇都宮春!もしここで二人の戦闘が始まったらどうなる?

 …こ、この校舎、破壊されるんじゃない?

サーっと血の気が引いていくのがわかった。

これ冗談じゃない。本気でやばいって。誰か、誰か呼んでこなくちゃ…。


廊下を走った。

しばらくして、足を止めた。


間に合わなかったら?


あのマフィア最強の男とか自称してる奴が、雲雀先輩を、倒しちゃったら?

でも、まさか。

雲雀先輩だよ?あれだけ余裕面してたじゃん。心配ないよね。

ねぇ、誰かそうだって言ってよ…。


涙がこぼれてきた。

やばい。

止まらない。

誰か助けてほしい。

そう思って、前を見た。

だけど見えたのは

醜い現実だった。



「お前はここで死ぬんだぜ。雲雀。」



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