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第三十五話 本心を信じろ 〜未来編〜

「バージョン4,0 チェックメイトアロー!」


「餓鬼小僧!」


「バージョン2,0 炎ミンク」


「バージョン6,0 毒花の盃」


作戦は、見事成功。

雲の森に誘き出された輩を、わたしたちは片っ端から片づけていた。


「まさかっ…罠だと言うのか!?」


「トゥレアロー」


光る矢が、体の一部を少しでもかすったなら、その矢の力つまりチェックメイトガンの弾にあたる部分の力が体を巡り、負の感情を鎮める。


「これで、暗殺部隊も相当痛手をくらったわね。あとは三日後、ザクロたちをどう叩くかよ。」



わたしは気絶しているダートファミリー暗殺部隊を見ながら、そう静かに呟いた。



「春の作戦は意外に成功するんですよね。本当に意外に。」

「骸六さん、嫌味ですよねその言い方。絶対嫌味ですよね!」

しかし骸六さんはにっこりと笑ってごまかす。

こんな時の骸六さんの笑顔は一段と輝いている。

「ボス、いったん基地に帰りますか?」

桔梗は相変わらずマイペースだしぃ。

「そうだね、基地で作戦会議しようか。」

わたしはチェクメイトアローをガンの状態に戻し、ホルダーに突っ込んだ。

「僕は好きにさせてもらうよ。」

後ろから雲雀先輩の声が聞こえて振り返る。

すると、先輩は返事も聞かずにソノオの基地の方へ行ってしまった。

「自由人ですね、相変わらず。」

「いや、骸六さんが言えることじゃないですよ。」

「俺はこう見えても、ちゃんとディアモのことも考えていますよ。」

「あ、ありがとうございますねー」

だよなー、5年後の骸六さんは、確かに成長してる。

身長とかじゃなくて、心とかが。


わたしも、この作戦が終わったら

少しは成長してるといいなぁ……



―ディアモ基地

「で、三日後の配置はどうするんですか?」

「東をソノオ、西をメノオ。そして、北と南はディアモ。ザクロたちの部隊は早々には出てこないから、しばらくこっちも控える。」

地図を広げて、指をさしながら配置の確認をしていた。

「ソノオには、誰が伝えてくれるの?」

「自分が伝えましょう。」

そう言ったのは桔梗。

「じゃ、任せたわ。で、この東の森だけど…」

「メノオは今、スパイ活動を重視に行っています。なのであまり戦力は持っていませんよ。」

「かまいません。それでもメノオの力は必要です。」

「くふふ…嬉しいことを言ってくれますね。」

5年後の骸六さんは、なんだか別人みたいだ。

大人っぽいし、理解してくれるし、リネさんとラブラブだし。

あれから、5年も経ったんだもんな…


「どうしました?」

「いえ。なんだか、5年前が懐かしくて…」

思い出せば、笑える話ばかり。

京子と居町は敵だし、暗殺部隊の奴らには酷いめにあったし、ボスとリネさんの問題もあったし。

あの頃は、本当に忙しい毎日だったなぁ……

親にも、心配かけたし。


あ、そういや今わたしの親共はわたしを探してるんだろうか。

でも、5年後のわたしがいるんだから、心配する事も無いか。


「懐かしい、ですか。俺はあまり、過去に興味無いです。」


「今の状況に満足しているんでしょ?わたしは、色々ありすぎて頭が混乱してます。」


ふー

と、ため息をつきながらソファーに腰を下ろした。

「やれやれ、やはりまだ17歳の子供ですね。」

「子供で結構でーす。」


今だけは、深い眠りにつかせてほしい。

ダートのことも、ディアモのことも、過去も未来も、全て忘れて。

ただ、大切な人のことだけを考えて。



「ボス?」


部屋に、誰かが入ってきたみたいだ。

「眠らせてあげましょう。少し、現実から遠ざけてあげるほうが、彼女のためです。」


その日わたしは、久しぶりに夢を見た。



「春。」

誰かがわたしを呼ぶ。

とても、心地良い声で。

「春。」

わたしを呼び続ける声の主は、一体誰なのだろう。

「10代目。」

だれ。

その呼び名で、わたしを呼ぶ人は…限られてる…

「10代目、きっとうまくいく。でも、忘れちゃいけない…チェックメイトガンは一体何のためにあるのか。」



「初代……?」



「あぁ。」

答えた。

そう思った瞬間、わたしは目が覚めそうになった。

でも、この夢は覚めてほしくなくて、堅く目を閉じた。

「俺の名前は、くう。」

「空?」

「あぁ。今、俺は君に力を貸すことはできない。でも、君には仲間がいる。ソノオとメノオの他にも、仲間だった人たちがたくさんいるだろう。その人たちを信じるんだ。疑っては、チェックメイトガンの威力は半減してしまうからね。」

声が、遠ざかっていく。

待って、いかないでっ!聞きたいことはもっといっぱいある!

「待って!初代!」

「信じなさい。そこから、新しい未来は開く。」

その言葉が消えると同時に、わたしの夢も覚めてしまった。


「……っ…夢、だよね…」

現実だったらと、強く願った。

初代は、わたしの知ってるボスととてもよく似ていた。

そう、あの人。

リネさんの弟の、楓に。


「新しい未来って…なによ。」


もしこの世界でわたしが何かをすれば、未来は変わってしまうのかな。

もしわたしが、この世界で失敗すれば、過去は変わってしまうのかな。


期待と恐怖が渦巻く。

もしわたしが、失敗してしまったら。

先輩にも骸六さんにも、京子にも居町にも、桔梗にも、ザクロにも。

会わせる顔が無い。


「……桔梗!」


わたしはソファーから立ち上がって、桔梗を捜すことにした。

見つけなきゃ、そして言わなきゃ。


「仲間を」


早く、行かなきゃ。

彼の気持ちが変わる前に。


「ザクロを、取り返しに行くわよ!」


決めた。


ザクロ、今すぐ行くから


あんたは本心を確認して、待ってなさい。


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