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第三十二話 傷つけ合い 〜未来編〜

「やっぱり、ザクロはそうなんだね。」


「あぁ…」


わたしは、ホルダーからチェックメイトガンを抜いた。

なら戦うよ。わたしは。


チェックメイトガンを握りしめながら、わたしは冷や汗を隠しきれなかった。


ザクロは、5年前に一度戦ったときに、聖火弾が効かなかった。

そんな弾じゃ俺は倒れない。

そう言っていた。


じゃあ何をすればいい。



―ドクン


心臓が大きく脈を打つ。


―力が、欲しい。


キィィィン

という耳をつんざく音が響く。


―彼に、戻ってきてほしい。



「……バージョン4,0 チェックメイトアロー」



なぜか、そうつぶやいていた。


その瞬間。



「なっ…変形した!?」

「行くよ…ザクロ。」


わたしはその変形したチェックメイトガンを握り、ザクロに向かって突進する。


「ふっ…んなことぐらいでビビるかよ。たかが銃が変形しただけだろうが。」


ザクロはわたしを小馬鹿にしている。

でも、それを無視してわたしはチェックメイトアローの弦を引いた。

するとそこには、光る矢が現れた。

きっと矢は弾が変形した物なんだろう。


「こんな物で…俺を殺せるのか?」


「これは殺す道具じゃない。生きるために、光を取り戻すための手段。」

なぜ自分でもこんなことを語っているのかはわからない。

でも、口が勝手に動いたんだ。


「おもしれぇ…」


くすくすと笑うザクロを睨みつけ、矢を強く引く。

集中しろ。相手の体の中心に標準を合わせて、高さを合わせる。

体が勝手に動く。

まるで、この動きに慣れているように。





「…ボス…」

桔梗がつぶやいた。

まるで懐かしいものを見るかのような目で。

あなたは、本当に似ている。

その眼差し、仕草、そして戦闘スタイル。


ディアモファミリー初代ボス、『空』に。



「春…」

わたしが気づけば、京子や居町。それに先輩たちもみんなわたしを見てる。

あぁ。わたしのファミリー。

わたしの仲間。見ていて、わたしやってみせるから。


「ぅぉおぉ!」

ザクロは雄叫びを上げながらわたしに突進してくる。

それをふわりと浮かび避けて、下を向いた瞬間。


――ドスッ

横っ腹に異常な痛みを感じた。

「くっ…」

地面に叩きつけられ、転がるわたし。

「飛んだ小鳥ははたき落とせってな…」


ムカ


「ふざけんな!」

わたしは、フロッターレコルポの力をフルに使って空中に浮かんだ。

「なめんな。バージョン5,0 空ムカデ」

―!

その瞬間、ザクロの持っていた小箱からデカいムカデが出てきた。

「―!」

わたしは、矢を放った。

その瞬間、ムカデは散り散りになり、無惨にも地面にボトボトと肉塊が落ちる。

「これが、バージョン4,0 チェックメイトアローの力…」

ハンパない。

「くっ…やってくれるじゃねーか!」

ザクロの顔には、焦りなんて表情は無かった。

なぜだ。

「死ねぇえ!」

―!?

飛んできた拳を受け流し、もう一度弓を握る。

「トゥレアロー」

矢が三本になり、それを握る。

「……ザクロ、もう一度だけ聞く。わたしたちのところに帰ってくる気はない?」

「……ねぇよ。」


そうか。

なら、仕方ない。


「つーかよぉ…さっきから何なんだよその目は。」

「…?」

「なんでお前がっ、あいつと同じ目をしてんだよ!」

あいつ?

「何を言って……」

まさかの行動に不意をつかれた。

「京子!」

逃げろとは言えなかった。

「はっははは!」

ザクロの品のない笑い声が響く。

その腕の中には青ざめた京子が。

もう片方の手にはナイフが。

まずいぞ!

「卑怯だぞ!京子を放せ!!」

「はぁ?こいつ死んでもいいのか?」

思うように動けない。

ちくしょう!馬鹿かわたしは!二人を放っておくなんて!


「何が目的よ!」

ザクロに向かって言う。

「ディアモファミリーは、ダートファミリーに降伏しろ。こいつのためになっ!」

ナイフが京子の長い髪を切った。

「―……ゃ!」

京子の小さい反抗が、ザクロの耳にもしっかりと届いていたのか、ザクロは不気味に笑う。

「いいのかボス?次は耳だぜ。」

「やめろぉお!」

狂ったような声と共に、何かがザクロの腕にしがみついた。

「…―居町!?」



「はっ。黙って見てれば助かったのによぉ!」



居町を簡単に振り払い、地面に叩きつけるザクロ。

そして

「バージョン2,0 死神銃」

―バン!

一発の弾が、ザクロの持つ銃から発射された。

「―………!」

しかし、いつまで経っても居町には痛みが伝わらない。

当たり前だ。



居町に向かって放たれた弾を、わたしが受け止めていたのだから。


「――っ………!」

周りにいる人全員が息をのんだ。

そして、不意に誰かが叫んだのだ。


「宇都宮!!!!!」


「っつ……!」

肩に激痛が走っている。

立っているのも、必死だ。


意識を失う直前に、ザクロが笑っていたのを見た。


それが、とても悲しかった。





――――……

「…ス、ボス!」


「ん……へ、え?」

目が覚めたら、そこはもうディアモの基地だった。

桔梗がわたしを見下ろしている。その隣には、骸六さんと雲雀先輩の姿もあった。

「わたし、どーなったの?」

「撃たれたんです。肩に、傷跡が残ってます。」

「かかか、貫通?」

「いえ。なにか、堅いものがあったみたいで、直接体に怪我はないです。」

「うん。ありがとう。」


っていうか、知っているということは桔梗が治療してくれたんだ。

「京子はっ!?」

「大丈夫です。」

桔梗が、骸六さんの方を見た。

「彼が、助けてくれました。」

「そっか…よかった…」

なんかもう。それだけで涙出てきそう!

「それにしても、あなたって人はっ…」

―!?

ぷるぷると桔梗の拳が震えている。

「どうしてあんな無茶をするんです!もし弾が心臓に当たっていたらっ、このファミリーもあなたもっ…」

「それは本当にごめんなさいぃぃい!!!」

ベッドから起き上がって謝ろうとしたら、肩にまた激痛が走った。

「っつつ……」

「…もういいですから、しっかり休んでください。ザクロたちはいったんダートの基地に帰りましたが、いつ来るかわかりません。」

不機嫌そうな顔をしながら部屋を出ていこうとする桔梗。

「ごめんね、心配させて。」

それを、わたしは満面の笑みで見送った。


「まったく…あなたという人は、変わっていないですね。5年経とうが、何年経とうが。」

「ふん…本当に変な奴だね。」


うう…二人、冷たい。

「で、でもかばわなかったら居町が…」

その時だ。

雲雀先輩が動き出した。

「じゃぁ、お邪魔そうですから退散しますね。」

タイミングよく、骸六さんが出ていく。

おいおい、ちょ、待ってくれ!


「ねぇ…」


ギシリと、先輩の体重でベッドが軋む。


え。


「いつの間に、他の奴になんかに興味を持つようになったの?」



――!!


この状況は、説明しがたい。

先輩が、なぜかわたしの真上にいらっしゃるのです。

これは、世に言う。

『押し倒された』という状況ですか!?

これ、わたしの心臓壊れませんか!?


「ねぇ、君は僕の獲物でしょ?」


わ、わたしに聞くなー!!!!!!

「気にくわないよ、その目。」

「え…」

先輩の無駄にでかい手が、わたしの両目を塞ぐ。

―ドクン…

ときめくな心臓!この状況にときめくな!

「せんぱ……」

「口答え、するんだ。」


ちゅ


という、小さい音が聞こえた後は、もう口で呼吸する事ができなくて。

「んっ……ふ…」

自分の声とは思えない声が漏れてしまいまして。

もう、恥ずかしくて。



―ドン!


先輩を突き放して、真っ赤になった顔やらを必死で腕で隠す。

「せん…ぱい……?」

真横に移動した先輩は、じっとこっちを見ている。

「あの男、そんなに大事なんだ。」

「そ、そういうわけじゃないです!」

「へぇ…」

「せ、先輩こそっ、どうしたんですか!?普段人とは群れないとか言っておきながら…」


ぐっと、腕を掴まれて、先輩の腕の中へダイブ。

「わかんない?」


その一言で、わたしの心臓は悲鳴をあげた。

もう無理。ぶっ倒れるぞわたし!!


「じゃぁわたし、そろそろ…き、桔梗たちのところ行きますっ」

逃げるように先輩を突き放して、部屋から脱出しようとするが、簡単に先輩に捕まる。

「あ、の。本当に、わたしの心臓壊れちゃうんで!」

意味の分からない理由を残して、わたしは全速力でそこから逃げた。




「……。」

キス、しちまったよ。

口と口で。始めてのチュウ?

うっひゃぁああああ!!!!!!


なぜかわたしは、誰も来ないであろう物置に座り込んでいた。

体育座りで、顔を真っ赤にさせながら。


もしかして、わたしと雲雀先輩って相思相愛?これ、カレカノ関係?


そういうことに関しては、今まで全く無関心だったわたしにとって、今日の出来事全てが謎。

ていうか、先輩はわたしが好きなのでしょうか?

それとも、これは勘違いなのでしょうか。


あんたって人は、どうしてわたしを混乱させる天才なんだ…



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