第三十一話 黒い歴史 〜未来編〜
「暗殺部隊が動き出したぁ!?」
「マジかよ!!」
京子も居町も、驚いた顔をしていた。
「あの人たちは、九代目に従ってたはずよ…」
「九代目?」
京子は、教えてくれた。
どす黒い、アルマーノの歴史を。
「あたしたちがいた時代、つまり5年前はグランベリーという男があたしたちのボスだったの。そしてグランベリーは、アルマーノのボスにしては珍しくまともな人だった。」
「でも彼は、暗殺された。」
――!
「暗殺したのは、ダートファミリーを作り上げたジューダが主格らしい。」
「ジューダはあの時から無駄にボスの座に執着してたから、怪しいとは思ってたけど…まさか暗殺を考えてたのは予想外。」
「だから、九代目一派は今の十代目を良く思ってない。いつ暴走するかわからない状況よ。」
「まぁ、あのフォン・ザクロって奴は相当十代目を嫌ってるみたいだけどな。」
「…グランベリーさんは、本当に暗殺されたの?」
「まだ不明。死体は見つかってないらしいわ。」
さらりとすごいこと言うな…。
「でももしかしたら、死んだことにしてまだ生きてるかもしれないよ。」
わたしの意見に、皆が目を丸くした。
「…でも、生きてるとは思えない。」
京子は悲しそうに言った。
だからわたしも、少し黙った。
もしグランベリーさんが生きていたら、このくだらない争いを終わらせてくれるかもしれない。
「グランベリーは、アルマーノの歴史の中では一番の天才と言われていたの。そう簡単に死ぬなんて、あたし信じたくない。」
「その気持ちはわかる。でもジューダは手段も選ばない馬鹿だ。本当にやられてるかもしれない。」
いつの間にか、京子と居町の意見が分かれていた。
珍しい。
「まぁとにかく、とりあえず当たってみる価値はあるわね。」
そう言って、わたしは椅子から立ち上がった。
「桔梗、こっちも行くわよ。敵さん待ってくれないわ。」
チェックメイトガンをガンホルダーに入れて、ジャケットを羽織る。
制服は、さすがに着替えた。
「今のわたしは、虫の居所が悪いわよー……」
アルマーノのくっだらない歴史を聞かされて、ジューダってやつの性悪さも知った。
闘志ってのが、燃えたぎってくんじゃない。
――……
「バージョン0,0 聖火弾!」
―パンパン!と、銃声が基地から数百メートル離れた場所で響く。
そこには、炎ミンクを肩に乗せた雲雀と、5年後の骸六の姿も見られた。
桔梗は、ザクロと一騎打ちをしている。
「先輩、このメンバー…見覚えありませんか?」
「さぁ、どうだろうね。」
そう言いつつも、先輩は相手を睨みつけている。
「おやおや、スパナ…お前は輪廻の果てに堕としてやったはずですが。」
「復活した。借り、返しに…」
はたまたここは、また懐かしい旧友(?)との出会いで嬉しいのか。
「しししっ…あん時は不意打ちでぶっ倒れたけど、今度はどうかな…」
やっぱり、アルマーノの暗殺部隊か…
京子が言ってたこと、間違いじゃなかった。
「あなたたちは九代目についてたんじゃないの!?」
「はぁー?俺たちは別に、殺せれば誰がボスだってかたまねーし。」
まぁ、こいつは論外として。
ザクロがどう思っているかよ。
「ザクロ、これでいいの…?」
「うっせぇな…」
「俺たちの敵は、お前等なんだよ。」
これで決まった。
彼はもう、戻って来ない。