第三十話 暗殺部隊、再び 〜未来編〜
ここは、ソノオファミリー基地。
ディアモの基地とは地下通路で繋がっている。
そのソノオファミリーのボス雲雀恭平は、森の中を走っていた。
その殺気のこもる目線の先には、ダートファミリーの暗殺部隊。
「ボスー、これ以上近づいたら…」
「うるさいよ。」
人の意見は聞きやしない。聞く気が無い。
「ジル、僕に意見していいなんて言った覚えは無いよ。」
トンファーの先をジルと呼ばれる部下の腹に直撃させる。
「そんなこと言ったってー、5年後のあなたは常に俺を側に置いといたんすよー」
「それ以上しゃべったら、斬り殺す…」
暗殺部隊に動きがあったと連絡がきたのは、ほんの10分前。
基地の外で、何やら仕掛けていた。
その場でしとめるのも悪くはなかったが、ここは跡をつけようとジルが言ったのだ。
「大体、君の判断は甘すぎるんだよ。」
文句を言いつつ、隣で炎ミンクがふわふわのしっぽを揺らしている。
「ボスー、なんでそんな不機嫌なんですかー?」
「……」
「あー、わっかりましたーこのまま真っすぐ行ったらディアモの基地だからっすよねー。ボス、ディアモのボスのこと好きですもんねー」
―ボキッ!!!!
「うぅ…ひどい…本当のことなのに…」
「黙ってなよ、君。」
ミンクの頭突きがジルの頭にヒットし、一瞬のびそうになるジル。
しかし、この扱いに慣れているのか平然とした顔で前を見る。
「はぁー…ほんっとに歪んでんすねー。5年後も5年前も。」
懲りない様子のジルを放置する雲雀は、前にいる暗殺部隊をただ睨みつけていた。
――――……
「基地の修復工事もほとんど終わったようです。少し休みますか?」
「うん。ごくろうさん、桔梗。」
ここは、ディアモ基地。
ダートファミリーの爆撃により、基地の半分が破壊されてしまい、システムやら何やらの復旧もやっと一段落した。
しかし、メインシステムは復活したが、その他のデータは未だに復旧のメドはたっていない。
「っはー…疲れたー…」
「ボスのフロッターレコルポが、まさかこんな所で役にたつとは思いませんでしたよ。」
「嫌味?桔梗ちゃん。」
「まさか。」
桔梗は時々、悪戯っぽい笑顔をする。
その顔を見る度に、わたしは心が温かくなるのを感じていた。
なんか、家族みたいで。
「ボス?」
「あ、なんでもない。それよりもさ、京子たちは?」
「メインコンピューター室です。住み込みで働いてもらってますからね、あの二人には。」
「……お茶、持って行こうか。」
うわぁ、なんか文句言いそう。
あの二人のことだから、報酬つけるわよ。とか言いそう。
「そうですね。」
桔梗が扉に手をかけた時だった。
【春……】
「―!?」
声が、した。
また、頭の中に直接響くような声。
「骸六さん?」
「はい?」
桔梗が振り返る。
【ディアモの基地に、ダートの暗殺部隊が向かっています。その近くに、雲雀もいるはずです。】
5年後の骸六さんは、なぜか5年前の自分と入れ替わらなかったらしく、自分の中に5年前の骸六さんがいると言っていた。
「ここに、ダートの暗殺部隊が向かって来てるらしいです。」
【すでに3キロ圏内にはいます。早く応戦したほうがいい。】
「わかりました。…桔梗、もう近くにいるから行くわよ。」
この判断が正しかったのかは、わからない。
でも、今は行くしか無い。
「その情報は確かなのですか?」
「ええ。骸六さんは、嘘をつかない。」
「なら、いいですけど。」
―――――……
「とばすぜぇええ!!!」
謎の男の罵声が響く。
「っししし…久しぶりの登場〜♪」
怪しげな笑い声と。
「ここまで来るの、苦労したんだぞ。」
腰に差すダイナマイトを取り出して、ニヤニヤと笑う。
「骸六……借り、返しに来たよ…」
片目に炎を灯す、巻き毛の男。
「ダートファミリー暗殺部隊、フォルテのご登場だぁ。」
下品に笑う、中華服を着た男。
味方であったはずの彼は、いつしか遠くへ行ってしまった。
もう二度と戻れないように、入墨を施して。