表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/43

第二話 ちょっと、これ、マジかよ。

「ふぁ〜…おはようございまーす。」

いつもの登校。


「ねぇ知ってる?あの子、あの、雲雀先輩と昨日二人で歩いてたんだって!」

しかし聞こえる、普段ではありえない噂。


「つきあってるとか?」

「いや、あんな鬼とつき合うか?普通。」


そうよね。普通の人は、あれを鬼と呼ぶわよね。それ、間違ってないと思う!

 でもね、わたしはそう簡単に鬼と呼べないの。

だって、だって……

わたしの後ろに、ファミリーの方々がいらっしゃるんですものー!!


―危険地帯を脱出しろ―

「あ、あの…ボスも骸六さんも、別についてこなくても…」

「いやいや、ディアモ初の女マフィアだなんて、俺としては興味津々なんですよね!」


嬉しくない。周りの人のこの避難の視線。感じとってくださいよ。

わたし、ただでさえも友達少ないのに、このままじゃわたしの学園生活メチャクチャになっちゃいます!


「雲雀先輩…あの、無理して一緒に来なくとも…」

「なに?文句あるの?」

「なっ、なんでもないです!」


デンジャラスだ…これは毎日戦いの日々だ…わたしに青春なんて無いんだぁ…。

誰か立場交換してくれー。


「それより、ボスは違う学校だろ?なについてきてるの…?」

「お前が新入りを虐めるからだろ!?」

「虐めてるわけじゃない。」


自覚ねぇーのかよぉぉお!

あーもー最悪ー!この馬鹿野郎!

なぁんて本人に言えるわけもなく、わたしは隣でじっと堪えていた。


「でも俺、春ちゃんに興味あるしね。」

骸六さん、なぁに恐ろしいこと言ってんの。あんたが一番怪しいよこの中で!

「じぁあ、もうここでいいんで!ボスたちは行ってください!」

「はいはい。照れ屋さん。」

いや照れてないから、呆れてるから!


ディアモの方々が去っていった後、わたしと雲雀先輩はある意味ふたりきり。

気まずい空気が流れた。

「せっ、先輩は友達とかいないんですか?」

「……群れる奴は嫌い。」

いや、あんたさっきまで群れてたでしょ。

まぁそんなことも言えるはずはなく、わたしはうつむいた。

『群れる奴は嫌い。』

そう言うなら、わたしなんか放っておけばいいのに。なんでわざわざ近寄ってくるんだろう?

あの人に恋愛感情なんかあるわけないし、普段あのトンファーとかいう鉄の棒ブンブン振り回してるし、何より目線がおっかないし…。

って、わたしはなんで先輩のことばっかり考えてるんだ!頭大丈夫かわたし!


「あ、来たわね〜噂の少女が!」

教室に入った瞬間、わたしに視線が集まる。

なんだなんだ、なんの集団だ!

「あたし達、実は雲雀先輩のファンクラブでして。」

「はい…」

「この手紙、渡してもらえないかしら。」

乙女、乙女だっ…!!

「あの、いいかな?」

「えっと…」(わたしこれ渡したら殺されるかも…)

「お願い!あたし達が行ってもどうせいらないって言われるだけだから!」

必死な顔の女の子。わたしは、段々自分が追い込まれていることに気づいた。

「…引き千切られても、わたしのせいじゃないからね。」

それだけ警告しておいて、わたしは手紙の束を預かった。

「お願いね!春ちゃん!」

そう言ってぞろぞろと教室を出ていく集団。


そして放課後、わたしはびくびくしながら雲雀先輩のもとへ手紙を届けに行った。

「雲雀先輩、あの、これ…先輩のファンクラブの子たちから…です!」

ドスン!と音がしそうなくらいの手紙の束を、机に置く。

「いらない。」

やっぱりね。

「一応、読むくらいしてあげてくださいよ。これ、一つ一つ気持ちこもってんですから。」

「僕がいらないって言ってるんだ。返してきて。」

手紙を見もしないで言う先輩に、わたしは少しだけ怒っていた。

どうせ、トンファーで脅されるんだと思うけど…。

「もしかして、照れてるんですか?」

「君、殺されたいの?俺はいつでも準備万端だけど。」

スッと腰の方からトンファーを取り出す先輩。やばいやばい、本気だ。

「冗談ですよもう、すぐに殺気放たないでくださいよ。」

笑って先輩を見ると、とんでもないことを言いやがった。


「君、最近頭にのってるようだけど、僕は君を汚い人形程度としか思ってない。」


……は?



あんたのためにわざわざ手紙を運んでやったわたしに対して?

あんたの我侭に、あんたの自由人ぶりにさんざんつき合ってやったわたしに?

よくこんな言葉っ…!!


「あー!そうですか!じゃぁ結構です!この……馬鹿鬼!!!」


たまっていた怒りが、爆発した。

でもわたしったら、忘れてた。彼はマフィア。しかも相当腕のある。

それでもって自前のトンファーを装備。で?わたしは?

一般市民のわたしは!?


「へぇ…君、いい度胸してるね。」


ひぃい!

今更だけど後悔した。

後ろでは、ニヤリと笑っている先輩。

やばい。殺気が、殺気が黒いオーラとなってわたしを刺している!

殺される!!


「君、斬り殺す…」

キャァー!!!!!!!!


本気で叫びそうになって、涙もちょっと出てきそうだったけど、わたしは自分の命を守ることを最優先にした。

躊躇無く振り下ろされるトンファー。わたしは、側に置いてあったファイルでそれを受け止めた。

「くっ……!」

「そんなので僕とやるの?」

「じゃぁ止めてくださいよー!!」

ミシミシと音を立てるファイル。やばい、壊れるっ!

本能的にそう思ったわたしは、何かの拍子にスイッチがオンになってしまった。


「とぁっ!」

トンファーを蹴り上げ、ファイルを投げ捨てて長机の後ろに避難。

やばいやばい!ちょっと先生お願いだから来てー!!

「ふっ…君みたいな奴、初めてだな。」

目が、目がマジだ…!!

「あのっ、わたし謝りますから!もうそのトンファー下ろしてください!」

「…」

無視!?


これは、わたし本気でヤバいかもしれない!

こんなところでわたし死にたくないからっ!!

「斬り殺す…」

長机にじわりじわりと近づいてくる雲雀先輩。

やばいやばいやばい!逃げ道ないよこれ!もう武器ないよこれ!

わたしはとりあえず、机を蹴りとばし、ドアを開こうとしたが。

「開かない!」

ドアには鍵もかかってないのに、何で開かない!

「どうでもいいけど、動くなよ。」

ヤバい!



トンファーが、宇都宮 春に向かって、振り下ろされた!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ