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第二十六話 再会 〜未来編〜

「……つまり、俺たちはお前が変なスイッチを押したせいでここに来た?」

「ここは5年後の世界で…自分の持ってる武器をバージョンアップさせて戦う?」


「うん…そうみたい。」


わたし、宇都宮春は基地の個室で二人に今の状況を告げた。

デストラクシャンファミリーのことも、ダートファミリーの生い立ちについても。

「…信じられない。」

「あぁ…」

それもそうよね。

「ごめん、二人とも。」

「…ったくもう、この問題児がっ!」

春日に頭を軽く叩かれる。

「この借りは3倍で返せよ。」

居町も容赦ない一言。

うぅ…わたしだって好きでこの時代に来たわけじゃないのに。

「でも、いくら宇都宮を責めたって、帰れるわけじゃないのよね…。」

痛い、一言が痛い!


「すみません、そろそれボスを返してもらえませんか?」

タイミングよく部屋に入ってきた桔梗。

助かった……

「えぇ。かまわないです。」

春日はそう言って司の足へ目線を移した。

「さっき…傷治してくれてありがとうございました。」

「おい、なんでお前が礼言ってんだ?」

居町がニカッと笑いながら言った。

「仲がよろしいのですね。」

悪気などは無かったつもりだろう。

でも二人は顔を見合わせて、気まずそうに下を向いた。

「じゃ、春日と居町はここにいてね。」

それだけ言い残して、わたしは桔梗と一緒に部屋を出た。


「何かあったの?」

「いえ、そろそろ集会があると思うので、一応場所を案内しておきます。」

「―!はい!」

わたしは意気揚々と基地を出て、桔梗の後に続いた。

「集会場所は地下にあるので、この建物のエレベーターを使ってください。」

目の前にあるのは、二階建ての建物。

中に入ると、エレベーターが一つ。

「指紋で扉を開けて中に、自分はこれより先には行けないので。」

「じゃ、後で。」

エレベーターのドアに触れると、スッと開いた。

中には行き先ボタンなどなく、入ったと同時にドアが閉まった。

そしてそのまま降下していくエレベーター。


わたしは、自分の心臓がいやにドキドキしているのに気づいた。


地下についたのか、ドアが開いた。

「…。誰もいない、よね。」

エレベーターから出て、通路を歩く。

薄暗い通路は、足下を気にしないとつまずきそうだ。

「……。」

黙って歩いている、その時だった。


シャー!

と、動物の威嚇するような鳴き声が聞こえた。

「…?」

辺りを見ると、そこには一匹の、イタチ?

「おいで、怖くないよ。」

手を伸ばす。

でも、全然警戒を止めないイタチ。

「……怖くないよ。」

もう一度言って、わたしはイタチの頭に触れた。

その瞬間。

「キィ………」

安心したように鳴くイタチ。

そのまま抱き上げた。すると、イタチはわたしの肩の上に器用に座った。

「飼い主、いるのかな。」

また歩き始めた時だった。


「―誰、そこにいるの。」

近くから、そんな声が聞こえた。

その声に聞き覚えがあったから、わたしはすぐに声の主を捜した。

「雲雀先輩?」

「………なんだ、春か。」

返事が来た。

うそ、やっと会えた!

「久しぶりだね、ちゃんと生きてたんだ。」

「当たり前です!」

影に隠れていた先輩の顔が、見えた。

「春、ディアモのボスなんだって?」

「い…一応。」

「へぇ…」

な、なんか急に態度冷たい?

「先輩、ソノオのボスになったんですよね。」

「勝手にさせられてる…」

あぁ、それで怒ってるわけ。

「で、君の持ってるそれ、あげるよ。」

先輩がイタチを見下しながら言った。

「え、先輩のなんですか?」

「君になついてるみたいだし、いらない。」

イタチはいらないという言葉に反応して、ピクッと体を震わせた。

「いらないって…イタチが可哀想じゃ…」

「それ、イタチじゃなくてミンクだから。」

マジかよ!

「どっちでもいいですけど、このミンクは返します。」

肩の上でビクビクしているミンクを抱き上げて、雲雀先輩の肩にのせる。

「……。」

「……。」



な、なんで黙っちゃったの…!?

「そ、それよりどうして先輩こんなところに……ってぅわぁ!」

いきなり、ミンクの耳としっぽに炎がまとわりついた。

「ミンクが、火傷しちゃう!」

「別に。そういう体質だからね。」

―!?

「炎ミンク。」

「炎ミンク!?」

マジかよ。

そんな動物ありか?

「相変わらずうるさいね、春は。」

「相変わらず無愛想ですね、先輩は。」

ちょっと睨み合った。

でも、先輩の顔を見ているうちにこっちが照れてきたので目をそらした。


「む、骸六さんはどうしてるんでしょうね。」

「群れてるらしいね。」

「怒ってるんですか?」

「さぁ。どうだろうね。」

性格ひねくれてやがる。

むかつくー!

「で、どうして君はここにいるの。」

「案内してもらったんです。集会の場所。」

「集会?」

集会のことを知らなかったようだ。

「ディアモとソノオ、それからメノオは月一回に集会をするんです。」

「興味ないね…」

ミンクがキィ…と鳴いた。

しっぽと耳に灯る炎の勢いが増している。


「だから、骸六さんにも久しぶりに会えますね。」

「…………。」

黙る先輩。ん?なんで?

すると、いきなり先輩の手がわたしの頬に触れた。

「僕の前で他の男の話したら、斬り殺すよ…。」


ひぇー!

久しぶりに聞いたよその脅し文句ー!

こえー!

「わ、わかりましたから、手ぇ離してください!」

うわ最悪!今のわたし絶対顔赤い!

「わかれば、いいよ。」

離れる手のひら。わたしの顔はきっと耳まで真っ赤なのだろう。

「じゃあ僕はそろそろ戻るから。」

「は、はい。じゃあまた今度。」

つかつかと歩いていく雲雀先輩。その後ろ姿を目で追いながら、わたしはため息をついた。




「ボス、場所はわかりましたか?」

エレベーターで地上に上がると、桔梗が待っていた。

「うん。中で雲偶然雀先輩に会えたし!」

「果たしてそれは偶然でしょうかね。」


え。


「なんでもないですよ。ほら、基地に戻りましょう。」

桔梗がさっさと歩いてしまうので、わたしも後を追った。

「何企んでるの!?」

「何も?」

嘘だな。絶対何か企んでる。

「アルマーノの二人といい、あなたたちといい、反応がおもしろいですよ。」

「………性格悪いね。」

「何を言っているやら。これは仕返しですよ。」

桔梗はニヤーと笑いながらわたしを見ていた。

「何に対する仕返しよ。」

「5年後のあなたに。」

「………。」

5年後のわたしは一体なにをやってんだ…。

「さ、行きましょう。」

「へいへい……」

わたしがこの返事をすると、桔梗が驚いたような顔をした。

「5年後のあなたも、同じようなことを言っていました。」

懐かしそうにわたしを見る桔梗。

「……。」

「…なんで黙るのよ。ほら、行こう!」

そう言って無意識のうちに桔梗の腕を掴んだ瞬間だった。



「熱い……?」

チェックメイトガンがある場所が、異常に熱いことに気づいた。

「え?」

手にとってみる。

すると、弾が装填されている。

なぜ?わたしは今なにもしてないのに。

「……この光は、絆弾!?」

「絆弾?」

「強い絆が結ばれるとき、その力は弾となり世に現れる…三代目ディアモファミリーボスが生み出した弾丸。始めて見ました…。」

そんなにレアなのか…?

「人は、表面で人と触れあうことは得意ですが、本当に互いが信じ合うことは苦手なものです。」

「……。」

表面の絆では生まれない、本当の絆…。

「きっと雲雀との絆じゃないですか?」

「……ちょっと、違うかも。」

「?」

「雲雀先輩は確かに信頼してるけど、この感情はちょっと違う。」


「…やれやれ…最近あなたの考えていることがよくわかりません。」

「簡単よ!これは、桔梗との絆!桔梗がいたから生まれた絆弾!」

わたしがそう言うと、桔梗は不思議そうな顔をした。

「まったく…人の気持ちを考えなさい…」

「?」



「そんなことを言われたら、雲雀に嫉妬してしまうでしょう。」


―??

嫉妬?

「なんで?」


「………。」

黙る桔梗。


「あなたは、自分たちにとって大切な人なのですから。取られたくないだけですよ。」



「―………?」


その時だった!


―バァァァン!

「逃げろぉ!!デストラクシャンファミリーだ!!」


叫び声と、爆発音。

なに。デストラクシャン!?

「桔梗、行って。」

「ボスを守るのが自分の仕事です。」

「……バカね。」

わたしはそれだけ言って、爆発が起きた方向へ全力疾走した。

「バージョン1,0 神風弾!」

銃に、弾が装填された感触が指を通して体に伝わる。

「―!」

走った後に、目に入ってきた景色。

それは、

まるで―



「地獄………?」

わたしがつぶやいた矢先に、熱風が顔をかすめる。

「貴様、宇都宮春か……」

瓦礫の影から、低い声が聞こえた。

その渋い声には聞き覚えがあって、そのせいかわたしは震えていた。

「あなたは、まさかっ…」


「デストラクシャンファミリー十代目ボス、ザック。」

桔梗が言った。

「首洗って待ってたか?外道が。」

く、口悪!

「チェックメイトガン、渡してもらおうか。」

「嫌よ。」

勇気を振り絞って言ってみたけど、やっぱり怖い。

あの目、無理!

「デストラクシャン、この場所を焼け野原にして何を考えているのです!」

「この場所がどうなろうと俺は知ったこっちゃねぇ。ただ、俺たちの目的は宇都宮春を討つこと。」


―!?


「お前がここに来た時点で、すべて終わりだ。」


―バンバン!!


弾は間違いなくわたしに向かって放たれた、死ぬ!

そう思い、強く目を閉じた。


しかし、痛みはなにも伝わってこない。

「……?」

そっと、目を開けてみた。


「……―!」


そこにいたのは、しっぽと耳に炎を灯す、ミンク。


と、いうことは。

「先輩!」

当たりだ。


「なに僕以外の奴と群れてるんだい、春―」

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