表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/43

第十二話 変わりだした敵 〜アルマーノ編〜

「ディアモ、成立したのは今からおよそ100年前。初代ボスの名前は未だ不明。しかし、ディストラクシャンと抗争した後、死亡が発覚。しかし、当時チェックメイトガンの行方は不明。ですがここ数日、宇都宮春という娘が持ち歩いているところが目撃されています。」


『はっ…ついに現れたのか、選ばれた娘が…』


「この娘には、未発覚な過去が数多くあります。まず、今の両親は義理であるということ。本当の親の行方はわかっておりません。しかし、ディアモと深く関係していることには間違いありません。」


『ふっ、準のやつ…必死に逃げ回っても無駄だということを教えてやる…おい、アルマーノ、宇都宮春とその両親についてもっと情報をもってこい。』


「はっ。」


俺たちアルマーノのボスが、報告部屋からでてきた。

俺、居町司はその時を待っていた。

 この前は、俺あんなに壊れかけてたからな…せめてでも、恩返ししないと。

あの作戦は、やっぱり酷すぎる。

「ボス」

「ん…どうした、司。」

疲れた表情のボス。

俺は、そっと近づいた。

「あの、宇都宮春についての情報ですが…」

「あぁ。わかってる。」

なにを、わかっているんだろう。

「彼女は、初代に選ばれたんだろ…?さっき、主がつぶやいてたからな。」

「はい…」

俺は、拳を強く握った。

どうして宇都宮は、初代に選ばれたんだろう。もし選ばれなければ、普通の女として普通の生活を過ごせたのに。

「なんだお前…宇都宮春に惚れたか?」

「ちっ、違います!!」

「はっは…青春だなぁ。」

そう言いながらボスは去っていく。その後ろ姿を目で老追いながら、俺は下唇を咬んだ。


「どうしたのよ、司。」


「…!!春日か、驚かせんなよ。」

「別に驚かせたわけじゃないわ。ただ、あんたの行動が気になってね。」

そうか、春日は気づいてたか。

「俺さ…主について、ちょっと調べたんだ…」

「あんたも…か。あたしもだよ。今回の依頼は、少し変なところがあるからね。」

俺たちは、互いに目を合わせた。

「…数日前までは、作戦には賛成だったんだけど…もう、賛成できないね。」

俺は、少し嬉しかった。春日が俺の意見に賛成してくれたのは、ちょっと嬉しい。

「さすがっ、俺の親友!」

春日の肩に俺の腕を乗せてみた。すると、春日はボッと音が出るくらいの勢いで顔を真っ赤にした。

えっ…?

「なぁに赤くなってんだよ!」

「べっ、別になんでもないわよ!」

そう言って、深呼吸する春日。変な奴…


「なぁ、で、その作戦って今どこまで進んでんだ?」

「知らない…さすが幹部が管理してるだけあって、中々情報が漏れない…」

「そうか…」

俺は片方の空いてる手で髪の毛をわしゃわしゃと掻き分けた。

「ハッキング…してみるか?」

「やめてときな。もしバレたら、あんたも狙われるよ。」

それもそうか。

俺は春日の肩から腕を下ろして、深くため息をついた。

「マフィアの情報を集めるのは…何かと覚悟がいるわね…」

「あぁ。でも、もし、アルマーノ戦闘部隊がディアモを襲ったりしたら…」

「作戦ではそうだけど…」

「あいつら、暗殺部隊からも何人か人を集めてるらしい。」

しばらく、気まずい沈黙が流れた。

「なんとかするしかないわね…アルマーノを裏切ってでも…」

「あぁ。」

俺たちは、見事に足並みを揃えてその場を歩きはじめた。



―バン!バンバン!

「―…っち」

飛び交う銃弾。しかしそれは、人を傷つけることは無い。

「―…っふ」

闘っているのは、雲雀先輩とわたし。

これは、ボスがわたしに言った訓練だそうだ。

「僕を相手に…ここまでやるなんてね…」

「ナメないで…ください!」

もうこの闘いは、30分以上前からやっているが、双方とも無傷だ。

「春、もしかしたらただの女じゃないって思ってたけど、まさかここまでやるとは思っていませんでしたね。」

骸六さんとボスが見守る中、わたしたちの戦闘はいっこうに終わりの気配を漂わせない。


「―ぅあ!」

だが、わたしは着地の際に、バランスを崩してその場にしりもちをつく。

「しまっ…―」

立ち上がろうとしたが、雲雀先輩がわたしの顔の目の前にトンファーを突き出した。

「はぁ…こっちの負けです…」

諦めたように両手を上げる。

すると、先輩はトンファーを退けてくれた。

「まさか雲雀相手にここまでやるなんて、春はすごいですね。」

「でも、負けました。」

「いや、勝ってたら雲雀がもっとキレてますから。」

それもそうだ。

ちらりと先輩を見ると、呑気にあくびをしている。

こっ、この人はっ…!


「でも、相当力はついていますよ。これなら、戦闘部隊が来ても大丈夫そうです。」


耳を疑った。

「せ、戦闘部隊!?」

「はい。アルマーノは情報屋だけではなく、暗殺部隊や戦闘部隊が数多くありますからね。」

聞いてねぇよ。おい!

「なんかわたし…段々私生活がデンジャラスになってきましたね…」

ため息。

「それは仕方ないことです。」

骸六さんが一歩こちらに近づく。

「わたしたちには、敵が多いのですね。」

思わずつぶやいた。

だって、そうでしょう?わたしたち、何も悪いことしていないのに、どうしてこんな…

「違うよ、春ちゃん。」

ボスが言った。

「これは、100年前から続いてるディストラクシャンとディアモの闘い…その終幕にするための闘いだよ。」


終わらせるための、闘い?

「そんなのっ、必要ないと思います!」

「必要なんです。春。」

骸六さんの冷たい声。わたしは、思わず彼を凝視した。

「そんなのわかりません!!」

「彼らの目的はチェックメイトガンです!」

珍しく彼が大声を出した。

「彼らは何としてもチェックメイトガンを手にいれようとしてる。それが、何故かはわかっていませんけど。」

「でも…」

「アルマーノはそのために利用されているだけです。」


利用…―?


「そんなっ…」

「はい。それは彼等も気づいています。でも、雇い主の言うことは絶対…ですから、彼等はいつ武装化してもおかしくない。」

知るかぁああ!と、叫んでやりたかった。

っていうか、いますぐ春日と居町に会いたいと思った。

あいつらもアルマーノなら…情報くれるとは思わないけど…

「それは、アルマーノの意志じゃないんですね。」

「はい。ですが…」

「なら、絶対にそれに反対する人もいるはずです!」

「…無駄だよ」

雲雀先輩がつぶやいた。


「なんで無駄なんですか!?」

「あいつら…常に雇い主に脅されてるから…」

脅し!?ひっきょうなやつら!

わたしそういう人一番嫌い!!

「なら、尚更助けないと!!」

「それは無理だ。アルマーノのアジトはわかってない。」

ボスが残念そうに俯いた。

だがわたしは、何かを企んでいるかのように、ニヤァと笑った。



「かーずが!」

学校で、わたしは今までに無いくらいの愛想で春日のところに行った。

「な、ななによ。」

それに驚いているのか、春日の声がうわずる。

「あのね、ちょっと話があるのー。」

ニッコリと笑って、春日を見る。

春日はわたしを睨んでいた。でも、それを無視してわたしは春日の腕を掴んだ。

「行くよ。」

「!?」

がっしりと掴んだ腕は、絶対に放すつもりは無かった。


そして。裏庭。

「さぁて…あらいざらい吐いてもらおうか…」

わたしはブレザーの内ポケットに手を突っ込んだ。

「ちょっと、ここで使わないでよ。」

「わかってるわよ。それよりも、わたしあんたに聞きたいことがたくさんあるの!」

何よ…と、ため息まじりでわたしを見る。

「アルマーノは、雇い主に脅されてるって、本当?」

「えぇ。」

あっさりだった。

え?って思うくらいあっさりだった。

「脅されてるわよ。毎日、幹部の部屋に呼び出されては…」

「本当?」

「えぇ。」

わたしを真剣に見る春日。何かを、決意したような目。

わたしは笑っていた。


「頼みがあるの、宇都宮。」


春日の刺さるような視線が、敵意ではなくなっている。

「あたしたちを、助けて。」

―ザァ…

風が強く吹く。春日の綺麗な黒髪が舞う。


「あたしたちの組織を、壊滅させて。」


何を言っているのだろう、この人は。


「幹部の男を、殺して。」


わたしは大きく目を見開いた。

春日は、自分で何を言っているのかわかっているのだろうか。

自分の所属している組織の幹部を、殺してくれと。

そう言ったの?

「なに言ってるか…わかってるの?」

「うん。」

強い決意。わたしは、それを理解してしまった。


「戦闘部隊と暗殺部隊が動き出す前に、早く。」


風が吹く。わたしたちの間をすり抜けるように、さわやかに。


でもわたしは、そこから一歩も動くことができなかったのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ