プロローグ
「君、そんなに僕に殺されたいの?」
綺麗な顔して、とんでもないことを言う、生徒会長。
わたしは知ってる。彼が、実はとんでもないことに首を突っ込んでいること。
それを知ったのは、今から10日後。
「僕の邪魔をするなら、誰であろうと、許さないよ。」
許さない、ね。
でもわたしはね、肝の据わってる女なの。
だからね、今まで黙ってきたけど、そこらへんの女と一緒にされたくないのよ。
解る?この気持ち。あんたはきっと解ってないと思うけど。
「わたしは、他の女みたいに、あんたにぺこぺこする気は無いの。」
「へぇ、君…おもしろいことを言うね…。」
「脅してるつもり?」
「……あまりやりすぎるのは、命に関わるよ。」
「ふぅん。」
生徒会室で、いつものように無愛想な生徒会長。
その隣、机に肘をついて生徒会長を見るわたし。学校中で、唯一彼に話しかけることのできる人。
彼はいつだって武器を持ってる。それが何かはわからないけど、鉄の棒。
パイプなんかよりもずっと丈夫だと思うけど。
その鉄の棒でわたしの顎をくっと持ち上げる。
おいおい。わたしは人形じゃないのよ?
「あのね、人を人形とでも思ってるの?」
「思ってるよ。僕の邪魔をする…汚らわしい人形…。」
け、汚らわしいだと…?
このわたしに向かって、汚らわしい?
何様、何様なのこいつ!?
ちょっと、わたしの地雷ワード見事に踏み当ててくれたわね。
「ふっざけんじゃないわよ。」
「誰に向かって口利いてるのかわかってる?」
無視してやった。そうしたら、彼ね、こう言ったの。
「そんなに自信があるんなら、僕と勝負する?」
「はぁ?」
顎から鉄の棒を離して、肩にポンと置く。
これは、喧嘩を売ってるの?
「あの、わたし一般市民Bみたいなもんよ?」
「君は一般市民でも、少しはマシな一般市民かもしれない。」
「わたし女よ!?」
「男だろうが女だろうが関係無いよ。僕は、僕に反する奴が大っ嫌いなだけだよ。」
その日、わたしはまだ知らなかった。
彼が、本当の本当に
ヤバい奴等とつるんでいたなんて。