稀代の英雄となった夫 現地妻とイケメン騎士たちをたくさん引き連れて来たと思ったらなぜか様子がおかしい
こんな英雄談あったら読みたいなと思って書いてみました。
世界の破滅を企む破壊神との史上最大の世界大戦を制したのは人類側だった。
エルフ、ドワーフ、龍人。世界3大帝国から集められた世紀の英雄たちは圧倒的な戦力を誇り、その連携した戦い方は神をも凌ぐに至った。
その圧倒的な魔力と卓越した魔導技術で戦場を駆け抜けた、ファンタジアクリエッツァリーナ帝国エルフ族の英雄…アテナ。
堅固たる土魔法による防御と味方支援による狡猾な戦いぶりで戦局を支配した、ラグナロックカザリア連邦国家ドワーフ族の英雄、ふたごのマロンとザック。
天空を支配し、対戦したものを消し炭にし続けてきた常勝無敗の最も神に近しいとされる龍。フレイオーシャン独裁国家筆頭、ライトニングテュポン。
彼女たち(一人は男(弟?))は世界3代美女とも言われるほどの美貌を誇り、その3代美女と私の夫は恋仲を噂されていた。
まあ、ついでに何ですけども。人類代表アルクレイオス…。全軍指揮官というか、突撃隊長を先の大戦でつとめたのが私の夫である。
彼の駆け抜けた戦場は味方の死傷者が少なかった。誰よりも先に先陣を切り部隊の指揮を高め、死力を尽くして戦う姿勢は戦争が始まる当時懐疑的だったあらゆる種族の権力者までもが彼を認めていた。
戦争が長引くことが予想されていた故に第2、第3の全軍指揮官が控えていたが、人類の英雄アルクレイオスは倒れることを知らず、敵を打ち負かした。
そして今夜はそんな英雄たちの帰還であり、街には溢れんばかりの歓声と感謝、そしてなによりこれからも歴史に語り継がれるであろう英雄たちの姿をひと目でもというやじ馬たちのが門に集まっていた。
英雄たちがご帰還なされた!!! お集まりの皆さま道をお譲り下さい!!!
門番が声を張り上げ角笛が天高くその音を響かせる。
わああああああああああああああああ!!!!!
大歓声とともに憎き我が夫が戻ってきた。おのれ。現地では大変お楽しみだったようで。。。
私は貼り付けた笑顔のまま眉間に青筋を浮かべそっと手を振った。
まあ見つけられるはずもない。これだけの群衆だ。
あんのじょう彼は私の姿をとらえることができずにキョロキョロしながら通り過ぎていった。浮気ものにかけてやる慈悲など私はない。
家で待ちぶせするとこにし、私は拳を握りしめ帰路についた。
「なあ、もう5年になるだろ?おれたちが国をあけてから…。」
行進を続けながらザックがおれに話かけてくる。
「もうそんなになるのか…。」
「新婚だったのに、大変だなお前も。ただでさえ人族は寿命が短いというのに。」
「お前たちにとってはたったの5年なんだろうな。長寿なのが羨ましいよ。」
「まあな。それも良いことばかりじゃないけどな…。ところで、人類側にはもちろん俺たちの戦況報告というかいわゆるニュースが流されていたわけだが、そのそこはだいじょぶなのか? たくさんのフェイクというかゴシップニュースが流されていたのだが…。」
「ああ…。」
「まあ、男女2人だけでいたところをたまたま見られただけで恋仲とされるこの世の悪しき習慣だ。まあ、お前たちほどの夫婦仲なら。」
「ぐはっ。」
「どうした!?」
「まあ良いか。特にアルクレイオスお前はあることなきこと書かれていたからな。まああんなの信じる方がお前を知ってる俺たちからしたらどうかしてると思っているが。」
「げほっ。」
「やっぱ体調崩したのか? お前顔色悪いぞ!?」
「な、なんでもない。先を急ごう。」
疲労につぐ疲労を労うためか、各国の首脳陣は人族のアルクレイオスの故郷ヒューマンパラダイス王国に集まり破壊神を討伐した報告会を開いた。
ごく短時間で終わり、祝賀会は日程をずらし各地で開催されるらしい。
さて解散した連合軍だったが、裏幕からソロリソロリとにげ帰るように移動している男がいた。
アルクレイオスである。
その男、我が家まで風のような速さで帰宅したものの、ドアをあけて家にはいるのに大変時間がかかっていた。
そんな下手すると不審者の彼が突然肩を叩かれ振り向いた。
背後にはなぜか世界3大美女とザック、そして彼直近の部下たち(イケメン騎士)がいた。
「いや…。お前たちなんでいるの? さっき解散したろう? ほら帰れ。」
「いや〜。アルクレイオスさんご自慢の奥さんひと目みたいというか…。お礼しなくては。」
とニヤニヤしながらこっちを見てくるアテナ。
「そんなのいいから。な!? ほら夫婦水入らずというか…」
アルクレイオスは必死にみんなを追い返そうとしていたが、突然バーーーン開かれた扉は彼の後頭部に直撃し、この浮気者〜〜〜〜〜〜!!! という叫び声とともに樽の水がぶっかけられた。
たまらず彼は地へ倒れこんだ。
「安心しろ…。水かかったのお前だけだからな。安らかに眠れ。」とザック。
「どうして、どうして私がいるのに!!! こんな美女といちゃいちゃしてたのよ〜〜〜〜〜!」
顔を真っ赤にし彼女は泣き続けていた。
「お嬢さんあのね!? 私たちの誰とも彼はそんな関係ではないの。彼をそういう目で見たことがなかったから‥」
「ほんとですか? だってみんなが噂するから…。5年もたって私自分に自信がなくなってしまっていて。」
「こんなことになってしまったが…。もう一度やり直させてくれないか。」
「え、ええ…。ごめんなさいあなた。」
扉はしめられ男はそっとドアをノックした。
「そーとそっと。」
なぜか口で擬音がつけられながら開かれる扉。
「お帰りなさい、あなた…。」
みんなに見られているせいもあるかもしれない。真っ赤な顔に涙を浮かべ彼女は5年振りの夫を出迎えた。
「会いたかったよ、アリス。」
「もう、バカァーーーーーー!!!」
彼のひと際たくましくなった胸に飛び込み、彼は優しく愛しい人を抱きしめた。
「寂しかったよ。」
「ごめん」
「ほんと、だよ。でも私たちみんなを守ってくれてありがとう。」
「ああ。君に合うために生きて戻ってこれて良かった。」
「うん…。」
「…。」
ところで、後ろの人たちはと顔を上げておれの仲間たちを彼女は見渡した。
「団長直属の部下です! 彼は命の恩人なんです! ぜひあなた様にもお礼させて下さい! ありがとうございました!」
騎士団の最敬礼がアリスに捧げられた。
「アリスちゃんというのね。あなたの夫とあなたの貴重な夫婦生活を5年と奪ってしまい大変申し訳ございませんでした。」
世界3大美女はどうやらアリスのことを気に入ったらしい。
「あ、いや私はその、、、」
あたふたしだしたアリスをもふもふし始めた3人。髪が大変サラサラなのですぐに夢中になってしまったようだ。
「ちょっと触りすぎだ。アリスも困ってるだろう!?」
そっと彼女を抱き寄せた。
「ヘヘッ。アルクレイオスも嫉妬するだな」とマロン。
「当たり前だ。私の世界1愛しい人だぞ? おれがなんのために戦っていたと思っているんだ。」
「い、いとしいひと!!!」
ぼしゅっと頭から湯気があがり、アリスはふらふらし始め倒れた。
アリスーーーーー!!!アルクレイオスが焦った声は街中に響き渡った。
「うっるさいわ! いちゃいちゃするんなら他所でやんな!!!」
野菜カゴをぶん投げて来た近所のおばあちゃんは、ちょっとみんなアル坊が帰って来たよ!!
その掛け声でこの街はもっとうるさく賑やかになってしまったのだった。
読んでくれてありがとうございます!