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過去編1



 殿下が私に寄りかかって寝ているので、ブランケットを取ってくることもできずにぼーっとしていた。


「あれからもう5年ですか…。」



 はじめて殿下にあったのは、私がまだ10歳の頃だ。


 その日は、私は離れの屋敷に泊まることになっていて、いつもより周りの使用人の数も少なかった。


 だから、はじめて無断で外に出た日だった。


         ◇◇◇◇◇



(…枝や葉の感じからこれはキョウチクトウ…。これが手に入るとは運がいいな。)


 具合が悪いと行って部屋に籠ったふりをし、屋敷の監視の目をくぐり抜けて窓の外から見えていた山に来ていた。


 この世界には魔法という便利なものがあり、書斎で勝手に読んだ本に書いてあった簡単な魔法を使ってを音を出しながら気をつけて歩く。


 山は危険だ。しかし、この世界の治安がどこまで悪いか分からないので、動物に気をつけていれば良い山のほうが安全だから、まずは山に行ってみようと思った。動物なら、こちらが存在を示していれば、無闇に襲ってこない。


 ヤマザクラやキョウチクトウの木の皮などを採取していく。毒や薬になる植物たちだ。もし、屋敷から完全に逃げ出そうとするならば役に立つかもしれない。


 最悪、キョウチクトウやトリカブトで父親を殺すこともできる。


 殺すならトリカブトがいいか。早く死なないと聖属性魔法とやらで治されてしまうらしいからな。


 聖属性魔法は状態異常を解除したり、状態を向上させる魔法だ。魔法陣の構築に時間がかかるのと、魔法陣に流し込む魔力の量がかなり必要なので、使い手の中でも実力差が大きい。

 

「おい、こっちだ!」

「待て!無闇に近づくな!」


(…!人か!?)


 木に隠れながら声の方を見る。

 

 私と同じくらいの年に見える、寝巻きを着た少年と、それを取り囲む黒い服を着た人達。


(…下手に手を出せば、私は死ぬかも知れないな。)


「もう魔法陣は使えないだろう。殺せ。」

「…っ!」


 魔法陣は消耗するらしい。きっと暗殺だろうから、たまたま持っていたか、用心して持っていたかは知らないが、構築された魔法陣を使い切るまで自分を守り、きっとたくさん殺し、必死で逃げてきたのだろう。…私と同じくらいの子供がだ。


 凄いことだ。

 同時に、悲しいことだ。


「…全ての子供は等しく、幸せを享受するべきだ…。」


 私とて身体は子供。

 生きたいという思いを抱えて走ってきた子供を見て、見捨てるほど合理的に動ける年ではなかった。


「クマっ。クマーっ。」


「…!!!」




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