魔物討伐イベント③
「それにしても、おかしくないですか?」
もう何度目か。さっきから、強い魔物が現れては戦いの繰り返しである。
経験値はバカみたい上がってはいるが、疲れても来ている。
「近年、魔物の増加が進んでいるとはいえ流石に多いよね、これは。」
戦闘後、割と余裕そうだったモランもかなりイライラしているというか、余裕がない。
「行事とはいえ国の圧力もあるので必ず完了しないといけないとは思いますが、正直なところ撤退したいです。」
「…無理だろうね。魔物がこれだけいるなら、放置しておけば街のほうまで被害が出る。」
「とりあえず、この先どうなるかわかりませんね。魔法陣の準備をしておきます。」
「陣を立てておくだけなら魔力が少なくても出来るからね。良いかもしれない。」
ここで、魔法についておさらいしておきたい。
破魔陣の効果の中でなければ、魔法はあらかじめ立てられた魔法陣に魔力を流し込むことで発現する。戦闘時は、脳内で浮かべた魔法陣をそのまま魔力で描いて使用することも出来るが、それは一部の天才であり、基本的にあらかじめ魔力を使って立てられた魔法陣を持参し、自分の魔力を流し込んで使う。
それに、人に依頼して複雑な魔法陣を立ててもらい、膨大な魔力量の人間が魔法を使用することがある。
例えば、私は風と水魔法のみを使え、その魔法陣も描ける。それに対して、モランは風と聖属性魔法のみを使えるわけだが、私の作成した魔法陣にモランが魔力を流し込むと本来モランが使えない水魔法を発動させることが出来る。
(…痛い。)
魔力はインクなどで描かれた魔法陣に流し込むわけだが、それだと魔力が分散して仕事率的なものが100%にならず、効率が悪い。
故に、魔力の含まれる血を魔法陣に使うことがある。
魔力の無駄がないからである。
私は、持っていたナイフで自分の指の血を切り、念のため持っていた魔法陣用の布に陣を描き始めた。
「ちょ…、何してんの?」
「…。」
サクサクと描いてしまうと、魔力要因となる魔力量の多いメンバーに配る。
「人間の身体…というか、血液にも魔力があるんです。最近の研究によると、血液を用いて魔法陣を立てるのは効率がよいのだと。」
「貴族なら、確実にやらないだろうね。」
「…差別する方でした?これでも私は貴族位を頂いてるんですがね。」
「そういうわけじゃないけどさぁ…。まぁ、これで風魔法使えるし、ありがとね。」
これは積極的ポジティブ自傷であって、そんな問題なことではないと思うんだがな…。
「ちょっ!ルシアの白い肌に!傷が!」
アルマも騒いでいるが、それはバルに任せておこう。
「マルザスさん。」
「俺にも?俺は必要ないと思うけど。」
「魔法陣は消耗しますし、水魔法は使えると便利なので、持っておいて下さい。生徒会としては、念には念を置いて…!」
ミクラスに魔法陣を手渡していると、突如、大きな影が現れ、強い風が吹く。
グァーという音と共に、火が周りを覆う。
「は…?」
モランが唖然とした顔で上を見上げた。
「火龍…!?」
頭上には、空飛ぶ大きな生き物がいた。




