入試当日⑤
「うおー!」
「すげー!!」
「うった!いけっ!そこだ!」
…どの世界も変わらないな。
スポーツ観戦とは盛り上がるものである。
私の隣でアルマとバルの対戦を見ているおっさんずたちは、自分じゃそんな動き出来ないだろうに、そこだ!とか、そこで行け!、とか言って盛り上がっている。
まぁ、盛り上がるのもわかる。
アルマは腕力で劣る分脅威的なジャンプ力を駆使して、上から位置エネルギーを利用して攻めている。それに対して、バルは持ち前の馬鹿力受け、弾く。
…確かに、思わず応援したくなるな。
「ルシアはどっちに勝って欲しいの?どっちが危なくなってもビクビクしてるけど。」
「…カリストさんはどうなんですか。」
「質問を質問で返したね。決勝戦のことを考えるとバルに勝って欲しいかな。アルマの攻撃はちょっと怖いな。ジャンプに風魔法乗せたり、結構頭使ってくるしね。」
「じゃあ私はアルマさんに勝って欲しいです。そして決勝戦で堂々と一位を飾って欲しいですね。」
「…なんで私に対して攻撃的なの。」
「あ、バルさん酷い!」
先程までアルマの上からの攻撃を正面から受けていたバルが少し横にそれ、後ろから攻撃する。アルマが体制を崩した好きに攻め、アルマの首の横で木刀を止める。
「勝者、バル!」
…バルが勝ってしまった。
「どうやらバルも頭を使うことを覚えたみたいだね?」
「…そうですね。」
◇◇◇◇◇
カリストvsバルト・ロセンシアの試合では、カリストの圧勝だった。
…いや本当に圧勝だった。
「…思ったより弱かったよ。」
さすが殿下と並ぶ乙女ゲームのメインヒーローというべきか。潜在能力たけぇ。
「くそっ!今年も1位じゃないのかよ!」
バルトは相当くやしそうだった。
去年、つまりバルトの入試の際の優勝者は殿下であり、去年の秋期の入試の優勝はルドルフであり、春期の入試では優勝はマリッサなのだそうだ。
そして、決勝戦が始まった…
「…先にどうぞ。」
「お前こそ、さっさとかかって来い!」
「いや、バルの方が先に攻撃するべきだと思う。」
「いや、俺はお前が先にやるべきだ!」
「いやいやいや、どうぞ。」
「俺はやらん!」
……こいつら何してんの?
「じゃんけんだ!じゃんけんで決めるぞ!」
「望むところだ。」
さっきまで盛り上がっていたおっさんずはきょとんとしている。
「「最初はぐー!じゃんけん、」
「平手打ち!」
「俺の拳を喰らえ!」
…じゃんけんかと思いきや、バルはグーでカリストを殴り、カリストはパーでバルを叩くという漫画みたいなじゃんけんをし、両者が吹っ飛んだ。
「…あいつら、ばかなの?」
隣に来ていたアルマも呆れている。
「お前、なかなかやるな…!って、隙あり!」
剣を手に持っている以上、勝敗は決まっていないようで、倒れていたバルが起き上がってカリストに襲いかかった。
「…そっちこそ!」
カリストは避けると後ろから斬りかかる。
その剣をバルが受ける。
…構図としてはカッコいい、カッコいいんだが…。
「あ、あそこに顔のついたバナナが!」
「え?どこだ!」
バルが空を見上げた隙にカリストが剣を弾く。
(う、うわー。)
「あっ!お前、騙したな!?」
「騙される方が悪いんだよ。」
騙される方も騙される方だけどさぁ。
「…勝者、カリスト。…おめで、とう、ございます?」
最後にやけに爽やかな笑顔を浮かべたカリストをアルマと私は渋い顔で見ていた。




