巷で流行っている小説
「ちょっと、待ってくれないかな。それはわざわざ聞く必要があるの?」
カリストが慌て始める。
カリストは人を爆笑させるような会話を進んでするとは思えないから、何か笑ってしまうようなことがあったのだと思う。カリストが笑っていたような形跡はないし、他にクルドが笑いそうな要因はないから、きっとカリスト関連のことを笑っていたのではないだろうか。
それに…
「止まる必要はねぇだろ?」
クルドがニヤニヤする。
そして、手に持っていた本を肩のあたりでパタパタさせる。
「クルド、下品だ。だいたい、令嬢の前でそう言う話をするのは…!」
「これを渡してくれたのは、高貴な令嬢だ。」
…カリストの武勇伝とかだろう。
ウケる。
「そ、それ…!まさか、クルド!裏切ったの!?男同士の恋愛なんて見れたものじゃないよ!!!」
…まさかBL本!?
「クーデターの時に、あの噂のマリッサ嬢に会ってな。地下街に広めてくれとこれを渡されたんだが…クックッ。」
マリッサは腐女子だったのか。
「もしかして、カリストさんがモデルのキャラでも?」
「そうなんだよ!!いや、マジでウケる。アルマの書いた話とは違ってマリッサの書く話は純愛が多いんだが、およそあいつらの言いそうにないセリフが…クッフッハハハ!!」
「…え、それマリッサさんが書いてるんですか。ふむ、見せて下さい。」
そういうと、クルドは爆笑しながら本を渡して来た。
「なになに、『あなたが剣を振る姿があまりにも美しくて、閉じ込めて誰もみられないように監禁してしまいたくなる』…なったんですか?」
「…おいおい、『黒い軍服によく映える赤い髪が見えた時、生きようと思えたよ。君だけが私の光だ。』だろ?」
物語としては美しいんだろうけど、やっぱり本人を前にするとちょっと面白い。
「この本、発売するんですか?」
「ああ。男恋本は王妃様すらも読まれているから、発売は間違いない。」
「結構人気なんですね。…人気といえば、ここの『この場にいるすべての男どもが…」
「ねぇ。」
調子に乗って色々話していたら、近くに魔王がいたことに気が付かなかった。
「…もうそろそろ」
「『君の声を聞くだけで、私のここが痛くなるんだ。』」
魔王の声に被せて、クルドがいかにもそれらしく被せた。
限界だった。
「ふっあっあははは!あははは!うっふぃー!」
今世紀最大の大爆笑をした。




