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王太子の策士



「ツェル様!貴方からも、フランツに何か言って差し上げて!貴方の言うことなら聞くかも知れないわよ!」


(殿下の交友関係は、…なんというか、独特だな…。)


 王太子の奇行…つまりあの演説を考えたのはツェルシアだ。王太子とて、帝国に勝利するのは不可能だと思っていたし、徴兵も、敗戦しても怒りの矛先を王族に向けず帝国に向けるためのものだと考えていたくらいだ。徴兵せずに、騎士団だけで帝国に勝利を挑むなど、無謀だ。


「…私は、殿下を信じていますので。」


 王太子は、ツァルシアの策を信じてはいたものの、本心で平然としているのは、ツェルシアくらいだ。


「あなたね!戦争では、人が死ぬのよ!フランツだって、戦死するか、捕らえられて捕虜にされるかもしれない!戦争について行くあなたもよ!世間知らずもほどほどにして頂戴!」


 ツェルシアは社交への参加が少なく、外での交流も極端に少ない。

 父親が溺愛している、というのは表の話で、要は死んだ妻の代わりにするつもりで育てていて、外に出さず、四六時中、自分の接待をさせているのだ。

 苦痛を与える魔法陣で拷問され、父親に従順になるように育てられできたのだ。

 小さい頃から人との接触を断っていたにも関わらず、昔、王太子がツァルシアにプロポーズし、ツァルシアが王太子の婚約者となってからは、王妃教育などで外に多少は出させられてしまうこと、将来自分の元に置いておかないことが、父親、バヌス・ノーランド公爵にとって想定外のことであった。


 そして、戦争準備や戦争の間は、ツェルシアは常に王太子に拘束されることも。


 今回の戦争は王太子と娘の婚約を破棄させるために、公爵が王国を裏切り、王国の財産を奪えば良いと、帝国と通じたことがことの発端と言えなくもない。


 もとより、帝国はどこかの国から財を奪う予定であったのだろうが。


 マリッサは、このような事情も、家で隠されているツェルシアの頭の良さも知らない。

 そもそも、これは王太子とツェルシアしか知らない事情だ。

 

 しかし、王太子もツェルシアもある程度の責任を感じていた。


「貴族達の事情に国民を巻き込むわけにはいきません。徴兵をするにしろ、税収を増加するにしろ、負担を負うのは国民です。国民に責任を負わせるならば、やっていることは皇帝と同じではありませんか。」


 本来の意味までは、マリッサには理解できないだろう。


「貴族には、平民を守る義務がある。大丈夫だ、ツェルさえいてくれれば、俺は必ず勝てる。」




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