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王都の地下街



「あてがない訳ではないんです。一晩だけ、ここに置いてもらえませんか?」



 不用心な人だと思う。


 名前と顔しか知らない人間を、一晩自分の部屋で、しかも同じベットで寝かせてくれるなんて。


「…よく眠れますね。」


 朝方、日の登る頃。


 リュックの中からボロボロで、いかにも貧困していると言った見た目、匂いの服を取り出して着る。


 髪を黒く染める。

 

 護身用のナイフを懐に忍ばせる。

 このナイフには、少し仕掛けがある。

 柄に付いている紐を引くと、摩擦が起きて火がつき、中に入っている夾竹桃が燃える。風上に移動すれば、かなり強い。


 殿下に私が無事でいると言っておいて下さいと書き置きを残して、屋敷を出る。


 この屋敷は強い結界が組んであるので、入るのは大変だが、逆に出るのは楽だ。




          ◇◇◇◇◇



 地下街。

 

 王都の下にあり、上の王都とは違って治安の悪い区域だ。


 しかし、娼館などが多く、貴族の遊び場でもある。

中には違法な賭け事なども行われている。

 現地で護衛を雇っていれば、ある程度は安全だ。

酔って一人になったところを襲われたり、と言った貴族は多いが。


 とにかく、貧乏な人間に興味はない。フードで顔を隠し、背中を丸めて歩けば問題ない。


「…ここか。」


 殿下とは、よく情報共有をしていた。

 その中でも聞いたことのある、バーの身なりをした情報屋。

 

 情報屋と言っても情報の信憑性や取り入れられる情報のレベルは大きく違うが、ここはかなりのやり手で、レベルの高い情報を多く得ている。

 調査させても、レベルが高いらしい。


「おー、嬢ちゃんじゃねぇか。」


「あん?本当だ。良いとこの嬢ちゃんだな。」


 …店に入る前に変なのに絡まれてしまった…。


 結構気合い入れて変装したのに、もうバレたのか。


 多少護身術は勉強したが、この場所で生き抜いてきた人達には敵わないだろう。


(…油断させてナイフで…。)


「ちょっと、あんた達何してんの!?」


 …?


「なぁーに、可愛い子いじめてんのよ!」


 赤い髪を短く切った私と同じくらいの背丈の女の子が隣の建物の上から見下ろしている。


「お、お嬢!」

「お、俺たちはただこの子が困っているかもと思って…手を出すつもりはありません!」


 え、何凄い人なの?


 呆然としていると、お嬢と呼ばれていた人が建物からしゅたっと飛び降りた。


(アニメみたいだ…私がやったら間違えなく骨折するな。)


「君、貴族でしょ?女の子が一人でこんなとこ来るのは頂けないな。」


 は、話しかけてきた。


「…なんで、わかるんですか。」

「うーん、何というか、隠せない品の良さ?」

「は、はぁ…?」

「とりあえず、中入んなよ?うちに用があるんでしょ?」




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