マリッサの部屋で
ここら辺に長時間いるのは流石にな…。
殿下のお陰で王都の治安はかなり改善されてはいるが、とはいえ前世の日本ほど治安は良くない。
むしろ、公爵領だったら、山があるからそこで1日くらいは野営が出来たのに。
というか、明日8時に殿下に会わなくてはいけない。
明日行けないということをどうにかして伝えなくては、業務に支障が出るな。
誰かに伝えてもらうか…。
未婚の女性が、男性の家に泊まるというのは、あまり良いことではない。社交界では、どちらもかなり叩かれることだ。婚約者同士だったとしても。
そもそも、私が野営について行ったこと自体あまり評判は良くない。
平民受けは凄く良いが。
「あら!ツェル様!?」
…へ?
「ま、マリッサさん!?なんでこんな時間に!?」
そうか、この近辺にマリベル公爵の邸宅があったか…。
「あー、見られちゃったわね。夜に抜け出して魔物狩りをするのを日課にしてて。」
「……。」
御令嬢とは思えない行動力だな。
幼い頃からこの調子なら、魔力が非常に高いのも、戦闘能力が何故か凄いのも頷ける。
マリッサさんは学園の魔力部門で満点を取った天才だ。
「ツェル様は、なんで?」
丁度いい、マリッサさんに伝えて貰おう。
「実は今日、家出をしまして。」
「え!?家出!?」
「…はい。」
「ツェル様が、家出…なんで?」
もしかして、この人私のことお淑やかなお嬢様とでも思っているのか…!?
「まさか、ゲーム補正!?」
「…いえ、あくまで自分の意思だと思っているのですが。」
「とりあえず、うちに来ないかしら?夜に令嬢が一人で出歩くなんて、危ないわ。」
「…ありがたいです。」
◇◇◇◇◇
(…マリッサさんって、顔に似合わず騙されやすいタイプだな…。)
マリッサさんのお家にご家族に内緒で上がらせていただき、部屋のお風呂と寝間着まで貸して貰った。
そのあとは、ベットに座らせられ、髪の毛を魔法陣を用いて作られたドライヤーで乾かして貰っているし、なんか凄い面倒見が良い。
「…こんな感じかしらね。にしても、凄く触り心地が良い髪ね。羨ましい。」
「…ありがとう、ございます。」
ケアが終わると、真横に座ってくる。
(パ、パーソナルスペースが狭い…。)
「白い寝間着を着ていると、天使みたいね。」
「…。」
こういう時は、どう答えるのが正解なんだ?
「どうして、家出なんかしたの?」
聞かれるよな、そりゃ。
私は、虐待を受けていたことや、殿下との契約婚約のことなど、今までのことを全部話した。
「…そういう訳で、今に至ります…。でも、意外でした。マリッサさんには、この甘ちゃんが、はよ家帰れ、とか言われると思ってました。」
「…前の私ならね。でも、人には人なりの事情があるって、知って。でも、ツェル様はこれからどうするの?」




