突然の逃亡!?
家に帰ると、父親が私の部屋の中で待っていた。
(最悪だ…。きもっ。)
前世でも、今世でも、私は虐待を受けている。
前世では、母親がこれを学校に話したことがある。家から抜け出せば良い、と第三者は簡単に言う。
そんな単純じゃない。
親に対して、根拠のない恐怖があった。だから、逃げられる気がしなかった。だから、前世では、死ぬしかなかった。
死んだら、何もなくなると思っていた。
だから、怖くないと。
そしたら、また別の人生でも虐待をされることになった。
しかも、今世では、虐待されている子供が逃げる場所もなく、逃げても確実に連れ戻される程親の権力が強い。
前の人生で逃げれば良かった。
仕方がないから、上手く毒を盛って、今世では父親を殺してしまおうと思っていた。
死んでしまえば、流石に怖くない。
この世界では、検死の技術が進んでいない。毒で殺せれば、完全犯罪となる。
ただ、聖属性魔法がある以上、毒で殺せる可能性は低い。聖魔法師がたどり着く頃にはすでに死亡させていなければならない。
だから、幼少期、父親を殺す毒を調達するために行った山で殿下に出会えたことは奇跡みたいなことだった。
将来に希望が出来た。確実に助けて貰えるという訳ではないとは知っていたが、凄く安心感を貰えたし、はじめて人から助けて貰えたことが嬉しかった。
だから…
バシッ!
「外出とは!ふしだらな!お前の母親もそうだった!ふしだらなやつだった!気持ち悪いな、母娘揃って!汚れた奴め!」
乗馬用の鞭で叩かれたり、暴力、暴言は日常茶飯事だったが、我慢できると思っていた。
「…申し訳ありません、お父様!!」
いかにも、反省していると言った声で謝罪をするのには慣れていた。
だから、私は大丈夫だと、このまま穏便に済ませ、将来的に王太子妃になるまで、我慢できると、思っていた。
「そうか。お前はそろそろ16なんだったな。」
ピシッと鞭の音がなると、そのまま止まった。
「…よし、これからは身体で教育してやろう。」
「…は?」
ぞわっ。
全身に鳥肌が立つ。
(なんだこの男、気持ち悪い!)
あまりの衝撃、気持ち悪さに、私は理性を失った。
はじめて、恐怖に逃げ出したい願望が勝った。
執務室の扉をこじ開け、無言で、そのまま、部屋まで走る。
(気持ち悪い!気持ち悪い!)
念のため部屋に置いておいた家出用のリュックを背負うと、急いで窓から出る。
そう、本当に、こうしてしまうくらい、女性にとっては、こういうことって耐えがたいだと、前世を合わせてもはじめて感じた。
◇◇◇◇◇
(やってしまった…。)
火事場の馬鹿力というか、前世合わせてもないくらいに長距離を全力で走った。
こんな走れるんだったら、マラソン大会とかもう少し頑張っておけば良かった。
(…どうしようかな。)
とりあえず、これからの見通しを立てなければ。




