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悪役と恋のキューピッド


 

「詳しい話は、書いておいたことを読んで欲しいんだけど、とにかく、私は本当は悪役令嬢で、つまり、ヒロインと攻略対象の恋愛を邪魔する役なの!」

「そうですか。」

「でも、悪役令嬢は本来フランツの婚約者だから、もしかしたら、ツェル様が悪役令嬢になるのかもしれない。」

「…私は学園には通っていませんが?」

「そう。だから、物語補正がかかって学園に通うことになったり、あるいは婚約者が変わったりするかもしれない。」

「だから私にその話を。」

「うん。実際、ありそうかしら?そういうことって。」


 …なきにしもあらず、かもしれない。


「世論では、殿下と私の婚約に関しては好印象が多いですが、私は国王陛下や王妃殿下にはあまり好かれていませんからね。上からの指示でしたら、やむを得ないかもしれません。特に王妃殿下は、マズルカさんと婚約して欲しかったみたいです。」

「やっぱり…。詳しいストーリーは手紙に書いておいたんだけど、あ、これよ。」


 大きい封筒に分厚い紙が入っている。


「お受け取りします。」

「ありがとう。それで、私は、このストーリーみたいに、断罪されて、場合によっては死刑になんてなりたくないし、…ルドルフを取られたくない。」

「マリッサ…。」


(あ、なんかはじまった。やめて、目の前でやらないで。恥ずかしいから!)


「こほん。」

「あ、ごめん。だから、協力して欲しいの!」

「協力ですか。」

「うん。ヒロインがまだ恋人のいない人とくっついてくれるように!」

「…わたしは、ヒロインさんや男性の気持ちを操れる能力は持っていませんよ?」

「そうじゃなくて!こう、ヒロインと攻略対象が一緒にいる時に煽ったり。」

「…煽る…。」


 それは…


  『ねぇ、ダーリン。今日は良い天気ね。』

  『そうだね。お弁当がおいしいよ。』

   春とピンクの風が流れる。

  私:『お2人さん暑いよ、ひゅーひゅー!』

  マリッサ:『あら!お邪魔しちゃったかしら!』

  ルドルフ:『ここに教会を建てよう。…ちょっと

       殿下に相談してくる。』


 こういうことか?


「そう。煽って意識させるの。」


 そういうことだった。


「それから、偶然の出会いを作り出したり…。」


 偶然の出会い…

 

  マリッサ:『兄さん、ここに立ってなさい。

        お友達と待ち合わせしているの。

        来ないか、ここで見てて。』

   もちろん、待ち合わせと称してヒロイン呼び出

  し済み。

     兄:『?』

   そして、ヒロインがやってくる。

  『いっけなーい!遅刻遅刻ー!』

    ドンッ!

  『きゃっ!』

  『おやおや、廊下を走ってはいけないよ。』

    見つめ合う2人。

  私:『おやおやおやおや。先生、ダメじゃないで

    かぁ〜。ヒロインさんを保健室に連れて行っ

    てあげるべきですよ、ひゅ〜!!』

  ルドルフ:『保健室に教会を建てよう。』


 こういうことか?


「な、なるほど。それを、私がやるんですね。」

「うん。お願いしたい。」

「都合の悪くない限りでは協力しましょう。とりあえず、資料は読ませていただきます。今日は、これで失礼しますね。」




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