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ホリン ~怪物の暴動~  作者: 土屋俊太
5/6

第5話 暴動

ホリンは巨大な怪物に姿を変えていた。

髪は逆立ち、口は大きく裂け、筋肉は瘤のように膨れ上がっていた。

ホリンは雄叫びを上げながら都市に建ち並んだ高層ビルをなぎ倒していった。人々は悲鳴を上げて逃げ惑っていた。

赤枝騎士団の戦車隊が押し寄せホリンに砲口を向け砲弾を浴びせかけた。

ホリンはそれに全く動じずに戦車隊をにらみつけた。

彼が口を大きく開いて火炎を吐き出すとそれは人々と都市を瞬く間に燃やし尽くした。

戦闘機の編隊が上空に現れホリンの頭上に爆弾を落としていった。


モリガンは神殿の地下牢の檻の中に横たわっていた。

看守がモリガンを見張っていた。

ディアンがそこに小走りでやってきてモリガンが捕われている檻の鉄格子をつかんだ。

「おい、ホリンがやってくるぞ! かなり派手に暴れてるようだぜ!」

モリガンがディアンを見上げると大きな地響きが起きた。

ディアンはにやつきながら指につまんだ鍵をモリガンに見せつけた。

「ここから出してやってもいいぜ。俺の女になるんだったらな」

モリガンは虚ろな目でディアンをただ見つめていた。

ディアンは目を見開き舌をなめずった。

「俺を愛してると言え! さあ、早く…!」

ディアンの背後に立っていた看守が彼の首をナイフでかき切った。

ディアンは血が噴き出る喉を押さえて倒れ込んだ。

看守に変装していたバウヴはディアンが落とした鍵を拾い上げ檻の扉を開けると涙をこぼしてモリガンを抱きしめた。

モリガンはバウヴの頬をやせ細った手で触れた。

バウヴは涙を拭ってモリガンの肩を担いだ。

「さあ、ここから出ましょう」

「ルーグはどこにいる?」

「仕事を終えてから迎えに来られるそうです」

モリガンは笑みを浮かべて立ち上がった。

「相変わらずの男だな。きっとディアドラも寂しがっているだろう」


ダーナの親族は祭場のモニターに映し出されたホリンの姿に驚がくしていた。

「何という事だ! 奴には兵器が通じないのか!?」

「ヌアザよ、一体どうやってあの怪物を倒すのかね!?」

ヌアザは戦況を静かに見守っていた。

彼は赤枝騎士団の紋章が描かれた箱を持っていた。

「安心しろ。すでに手は打ってある」

ダグザは祭場を見回した。

「おい、ディアンはどこに行ったんだ!? これからが良い所だってのによ!」

ホリンを爆撃していた戦闘機の編隊が撤退を始めた。

ヌアザは箱を開いた。

彼は箱に隠されていたスイッチに手を置き目を大きく見開いた。

「さあ、ゲイボルグよ。神の意志を示せ…!」

ゲイボルグと呼ばれる魔槍が宇宙の発射装置から射出され凄まじい速度で地上に落ちていった。

ゲイボルグは天空を切り裂いて火炎がくすぶる廃墟に立っていたホリンに突き刺さった。

それは衝撃波を引き起こし周囲のあらゆる物を巻き込んでいった。

衝撃波がダーナの神殿に達するとそれを激しく揺さぶった。


ダーナの親族は祭場の床に倒れていた。

ダグザは腰を押さえて起き上がった。

「痛え…こんなことになるとは聞いてなかったぜ」

ヌアザは赤枝騎士団の団員に支えられて起き上がるとモニターを食い入るように見つめた。

「諸君…見たまえ!」

ホリンはゲイボルグに貫かれ血しぶきを上げていた。

ダーナの親族は次々と立ち上がりホリンの痛ましい姿を見て歓声を上げた。

「おお…やったか!」

「化け物め、身動きも取れんようだぞ!」

ダグザはほくそ笑んでヌアザに言った。

「親父、あれ一匹のために街が潰れちまったな」

「構わん。街などいつでも建て直せる」

ダーナの親族が勝利に酔いしれて抱き合っていると津波が静かに押し寄せホリンを包み込むように飲み込んでいった。

ダグザはそれをにらんで呟いた。

「邪魔が入ったか」


ホリンは人間の姿に戻りながら海の底へと誘われるように落ちていった。

彼は光を見つめていた。

光はエウェルに姿を変えホリンを優しく抱いた。

ホリンはエウェルを抱きしめ目を閉じた。

「エウェル…こんな所にいたのか」

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