第1話 離別
ホリンは田舎町の古い民家にいた。
彼は寝室のベッドで寝ているフィンの側に立ち彼の安らかな寝顔を見守っていた。
雨音が静かに鳴り響き、月明かりがカーテンの隙間からわずかに差し込んでいた。
ホリンとエウェルが映った写真が棚の上に置かれていた。
エウェルは赤ん坊のフィンを抱えてほほえみを浮かべていた。
ホリンはアイオナと呼ばれるケルト十字のネックレスをはずして写真立ての前に置いた。
マナナーンは居間でビールを飲んでいた。
ホリンが家から立ち去ろうとするとマナナーンは彼を呼び止めた。
「ホリン…考え直す気はないのか」
ホリンはマナナーンの方を少し振り返りドアを開けた。
「じゃあな」
ホリンが家から出るとマッハが飛び上がって彼に吠えた。
ホリンはマッハに歩み寄り彼の頭をなでた。
「お前も元気でな」
マナナーンとマッハは車に乗り込み走り去っていくホリンを見送っていた。
マナナーンは家のドアを閉めるとテーブルに再び着きビールを注ぎ足した。
サヴァが飛んで来てマナナーンの肩に舞い降りた。
「飲みすぎなんじゃない?」
「私のせいだ」
マナナーンは頭を抱えた。
「私がホリンを変えてしまった」
「もう…またそれ?」
「私がエウェルと引き合わせなければこんな事にはならなかった」
「だから、それは違うっていっつも言ってんでしょ!」
「いや…」
「いやもへったくれもないのよ。エウェルが死んじゃったんだから仕方ないじゃない」
「エウェル…!」
マナナーンは声を上げて泣き出した。
サヴァは顔をしかめてマナナーンの泣き顔を見ていた。
「もう…いい歳して情けないわね」